変動金利型住宅ローン、金利上昇への対策として最初に行うべきこととは
1.フラット50が“トレンドイン”!?
「東の横綱が『米フレーション』で西が『大阪・関西万博』」でスタートする「2025年上期日経MJヒット商品番付」。その時々のビッグイベントや、はやりのゲーム、飲食品などが番付順にランクインしていくのが常ですが、今回はなぜか、「フラット50」という住宅ローン商品が「前頭」にランクインしました。
そもそもフラット50とは、住宅金融支援機構(「機構」)が取り扱う全期間固定金利住宅ローン【フラット35】の一種です。フラット35は、借入期間に応じて、
・フラット20:借入期間20年以下
・フラット35:同21年以上35年以下
・フラット50:同36年以上50年以下
の3種類に区分されますが、フラット50は最も期間が長く、長期優良住宅を取得する場合に利用できるのが特長です。機構によれば、2024年のフラット50の利用は、前年の3倍まで急増したのですが、なぜここまで利用が大きく伸びたのでしょうか。
【フラット50申込件数の推移】(住宅金融支援機構発表)
| 2022年 | 2023年 | 2024年 | (前年比) | |
|---|---|---|---|---|
| 申込件数 | 888 | 662 | 1,985 | 300% |
2.フラット50の活用メリットとは
次の表は、5000万円を、フラット20、フラット35、フラット50それぞれの最長期間で借り入れた場合の毎月返済額と総返済額の比較です。フラット35の毎月返済額は16.3万円ですが、借入期間の長いフラット50を利用すると、毎月返済額をフラット35より3.1万円抑えることができます。
フラット50の取扱いが始まった2009年頃は、フラット35との金利差が0.5%程度あったため、毎月返済額の軽減メリットは今ほど生じていませんでした。しかし、昨年来、機構が政策的にフラット50の金利を引き下げていることもあり、ローン返済額を抑えて趣味などのプライベートを充実させたい30~40代の方を中心に、利用が増えた模様です。
【借入金額5000万円での毎月返済額、総返済額の比較】
(住宅金融支援機構ローンシミュレーションによる試算、以下同じ)
| 6月融資金利* | 毎月返済額 | 総返済額 | |
|---|---|---|---|
| フラット20 | 1.50% | 24.2万円 | 5,791万円 |
| フラット35 | 1.89% | 16.3万円 | 6,839万円 |
| フラット50 | 1.99% | 13.2万円 | 7,898万円 |
*:取扱金融機関が最も多く適用している最頻金利、融資率9割以下、団信付き、ボーナス返済なし
フラット50の利用が伸びている背景としてもうひとつ考えられるのは、住宅価格の高騰です。
あくまでも試算の域ではありますが、「フラット35の毎月返済額は16.3万円。では、フラット50を毎月返済額16.3万円の条件で50年借り入れる場合、いくら借入可能でしょう」という逆算をしてみると、フラット50での借入可能額は6,192万円となり、フラット35の1.24倍まで借入額を増やすことができます。
住宅価格の高騰、さらには今後の金利上昇の可能性を踏まえ、固定金利のフラット50で借入可能額を増やす、という視点で利用されている方もおられるのではないでしょうか。
3.「使い方次第」の50年ローン
「最長50年の住宅ローン」というものが出現したときには、個人的にとても驚くと同時に、抵抗感のようなものも感じた記憶がありますが、フラット50がスタートした頃には、既に一部の地銀でも取扱いがありましたし、現在では、ネット銀行なども固定金利、変動金利双方での提供を行うなど、最長50年の住宅ローンの認知度は、20代~30代を中心に、着実に高まっています。
また、期間35年の住宅ローンを利用しつつも、繰り上げ返済で返済期限を前倒しする方が多いという事実を踏まえると、最長50年の住宅ローンにおいても同様のケースが想定され、「50年」を過度に意識する必要はないのかもしれません。
今回紹介したフラット50には、返済額の軽減や借入可能額を増やせるというメリットがある一方で、上表のとおり総返済額が大きいというデメリットもありますので、これについてもあわせて考慮すべきです。
対策として繰り上げ返済をするのか、その原資はどうするのか、あるいは全額フラット50での借入とせずに、フラット20やフラット35との「併せ借り」をするかなど、今後のライフプランをイメージしつつ、さまざまな方法を検討してみましょう。
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