自院の経営状態に不安がある方必見!動物病院業界の財務指標(前編)

前回は第15次業種別審査事典から、動物病院業界の貸借対照表、損益計算書そして経営分析指標について平均値を確認しました。貸借対照表や損益計算書は動物病院の規模によって値は変わってきます。そこで、今回は経営分析指標の意味を解説させて頂こうと思います。自分の病院の経営状態を推し量るうえで一つの指標になると考えますので、是非ご参考になさってみてください。
総資本営業利益率
動物病院全体:5.9%
動物病院(黒字病院):8.0%
総資本営業利益率は、企業が調達した総資本(自己資本と他人資本)をどれだけ効率的に活用して営業利益を生み出しているかを示す指標です。計算式は「営業利益 ÷ 総資本」で、この率が高いほど、本業における資本の効率的な運用がなされていると判断できます。
企業の業種により数値は大きく変わりますが、財務省「年次別法人企業統計調査」(令和5年度)によると全産業の平均値は3.5%となっていますので、動物病院業界は利益を生み出しやすい業界であると考えられます。
売上高営業利益率
動物病院全体:5.3%
動物病院(黒字病院):7.5%
売上高営業利益率は、企業の「本業」での収益力を示す指標で、営業利益が売上高の何パーセントにあたるかを示します。計算式は「営業利益 ÷ 売上高 × 100」で、この比率が高いほど、本業が効率的に利益を生み出していることを意味します。
2022年度(2023年経済産業省企業活動基本調査速報)のデータでは、製造業は4.9%、卸売業・小売業は2.8%、情報通信業は8.6%となっています。動物病院業界は収益力が高い業界といえると思います。
自己資本比率
動物病院全体:44.8%
動物病院(黒字病院):50.0%
自己資本比率は、企業の総資産に占める、返済義務のない自己資本(純資産)が占める割合を示す指標です。この比率が高いほど、財務体質が健全で安全性が高いと判断されます。計算式は「自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資本(負債 + 純資産)× 100」で求められます。一般的に50%以上あれば良好で、少なくても30%程度あると安心できるとされています。
財務省「年次別法人企業統計調査」(2023年度実績)や経済産業省「企業活動基本調査」(2023年度実績)によると、全産業の平均値は41.8%となっており、製造業(50.8%)や情報通信業(51.5%)は比較的高い傾向があります。一方で、卸売業(42.1%)、小売業(45.9%)、宿泊業、飲食サービス業(42.9%)は比較的低い値になっています。
損益分岐点売上高
動物病院全体:93,259千円
動物病院(黒字病院):105,828千円
最後は損益分岐点売上高についてです。損益分岐点売上高は、売上高と費用がちょうど等しくなり、利益がゼロになる売上高のことです。この売上高を基準に、これを超えれば黒字、下回れば赤字となるため、事業継続に最低限必要な売上高を把握するのに役立ちます。
理解が難しい数字ですので簡単に説明します。まず動物病院が存在するだけでかかる費用があります。地代家賃や人件費などです。これを固定費と言います。この固定費を回収しなくてはいけませんので、そのために営業活動を行います。しかし、営業活動をする以上は薬や資材を仕入れなくてはいけません。これを変動費と言い、営業活動の量が増えれば増えるほど変動費は増加します。この固定費と変動費を合わせたものが総費用になるわけですが、この総費用を上回る売上高を確保できなくては動物病院は赤字になってしまいます。この総費用を上回る売上高のことを損益分岐点売上高といいます。動物病院に限りませんが、全ての業界でこの損益分岐点売上高を上回る売り上げを目指して営業活動を行うことが、黒字経営の目標になります。
その他にもチェックするとよい経営指標は沢山ありますので、自院の経営状態を確認する際に一つの参考にして頂けるとよいと思います。一方で日々の忙しい診療の中でこれら数値を整理し、解釈することは大変なことだと思います。そういった場合は、私たちのような専門家を活用して頂けるとよいと思います。もしご相談があれば、いつでもお問い合わせください。



