「授業に来ない・寝る」を防ぐ!専門学校で実践したスマホ活用授業のリアル

木戸伸英

木戸伸英



私は現在、東京の動物専門学校で2校、非常勤講師をしています。実務に近い授業を通して気づいたことがいくつかあるので、今日はその中から特に重要だと感じた「出席」と「授業中のスマホ活用」について整理してお伝えします。

出席しないことは大きな損失になる
専門学校は単に知識を得る場ではなく、「職場に出るための練習場」でもあります。授業で得る情報、実技の訓練、人間関係の形成――これらは社会で働くうえで不可欠な要素です。しかし、学校に来ないということは、これらすべての機会を失うことを意味します。欠席が続く学生は、単に授業を逃すだけでなく、将来の選択肢を狭めてしまう恐れがあります。

居眠りは「インプットがゼロ」になる
授業に来ていても居眠りをしていれば、学びはほぼゼロです。教える側は魅力的な授業を心がけるべきですが、それだけでは解決しないケースも多く、学生側のモチベーションや生活リズムの問題が背景にあることもあります。したがって「出席させる」「授業中に起きてもらう」ことが、授業を行う側が意識する大切な第一歩になります。

なぜ「スマホを許可する」ことにしたのか
そこで私が試しているのが、授業中のスマホ利用を前提にした運用です。理由はシンプルです。
•スマホは情報検索やコミュニケーションの即時ツールであり、今や人間にとって外付けの記憶装置や作業ツールの役割を果たしています。
•今の学生は自然にマルチタスクを行っています。スマホを片手に調べ物をしながら友人と会話したりすることを自然に行っています。
•授業中にスマホを使うことで、少なくとも居眠りは減り、授業の一部が耳に入る可能性が高まります。インプットが「ゼロ」ではなく「0.1」でも積み重なれば学びになります。
•また、課題提出や情報収集は検索やAIの助けで効率化できるため、暗記偏重ではない学習スタイルが実現可能です。

スマホ活用の利点(実感している点)
•わからないことをその場で検索できる(理解の即時補完)。
•AIを活用して分かりやすい文章を生成したうえで、内容を自分で検討・編集する練習ができる。
•分からないことがあってもスマホで直ぐに調べられるので、授業中に指名されても答えに窮することが減る。結果として、生徒の安心感が高まり、授業参加への心理的ハードルが低下する。
•最終的には欠席・居眠りが減り、授業への最低限の接続が保たれる。

実践例(私が導入している運用案)
スマホを活用した授業の例としては:
•スマホを使ったミニ課題(検索で条件を満たす根拠を見つける、クイックレポート作成など)を定期的に入れる。
•グループワークでの情報収集や記録はスマホを前提に進める。
こうしたルールにより、「スマホ=邪魔」ではなく「学びを補完するツール」として扱えるようにしています。

注意点:教師の役割は依然として重要
スマホやAIに依存させてしまうと、批判的思考や情報の取捨選択能力が育ちにくくなります。したがって教師は次の点に責任を持つ必要があります。
•情報の評価方法(信頼性の見極め方)を教える。
•AIや検索結果の活用ルールと倫理(盗用・剽窃への対処)を明確に伝える。
•授業の質(学習目標の明確化、フィードバックの提供)は保ち続ける。

おわりに
結論として、「出席させること」と「授業中に完全にスマホを排除しないこと」は相互に補完し合う現実的な方策だと考えています。若い世代の習慣や強みを否定するのではなく、それを学びに取り込むことで、欠席や居眠りという表面的な問題を減らし、将来に必要な情報収集力・コミュニケーション力を育てることができる──私はそう実感しています。

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木戸伸英
専門家

木戸伸英(獣医師・中小企業診断士)

獣医師と中小企業診断士の専門知識を生かし、動物関連事業者の経営課題に応じたコンサルティングを提供します。動物園での約17年の現場経験から、ヒューマンエラー対策研修や事業者向けの往診サービスにも対応。

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