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建物の健全管理を担う「建築ドクター」として情報を正しく伝える通訳者に

「建築ドクター」として建物の健全管理を診断する一級建築士

井上英勝

井上さま正面
井上さま白シャツ

#chapter1

難解な建築用語を解説、コミュニケーション不足を解消して仕事の完成度と満足度を高める

 新築や建て替え、建物の改修、維持管理には、専門的な知識が必要。いざ依頼をしようとしても、「誰に頼めば良いのか」「見積金額の差はどこにあるのか」「一式とはどこからどこまでのこと?」といった疑問がわいてきます。
 そんなとき頼りになるのが、自分たちの問いに的確に答えてくれる「建築ドクター」のような存在ではないでしょうか。

 横浜市神奈川区にある一級建築士事務所 「クレアール」代表の井上英勝さんは、建築に関する広い知見と、感度の高い顧客視点を持ち合わせ、施主が抱える問題に丁寧に対応しています
 
 「当方では、打ち合わせから設計、施工監理までを一貫してサポートしています。その中で、耳慣れない業界用語や難解な工法、資材の情報、複雑な手続きについて、わかりやすく説明しています。加えて各工程に適した手法などもアドバイスしています」と井上さん。
 既存建物の維持管理においては、将来にわたり健全な状態を保てるよう、構造や設備などをつぶさに調べた上で「建物の診断カルテ」を作成。補修箇所を見極め、計画を立てています。

 一方、工事を担当する業者からは「省略できない工程や資材について、施主から十分な理解が得られているんだろうか」「価格や機能のうち何を優先したいのか、施主の本音がわからない」といった悩みが寄せられることも少なくありません。

 「情報共有の停滞や意思疎通の不足は、仕事の完成度や施主の満足度に大きく影響します。誤解や不満を取り除くためにも『通訳者』が必要で、私がその役割を担います。業者と施主が『セカンドオピニオン(第二の意見)』を求める際は、助言役もいたします」

#chapter2

弱きを助ける正義の味方への憧れが、仕事の停滞や紛争を未然に防ぐことへのこだわりに

 小学生の頃、人気ドラマに登場する弁護士が、弱者を助けるために奮闘する姿に心を揺さぶられた井上さん。同級生をかばって、いじめっ子に対抗するような正義感の強い少年でした。家業の工務店を継ぐため建築業界に身を投じてからも、仕事上弱い立場の人や困っている人たちのことばかり気にしていたそうです。

 2代目としての修業時代には「会社の利益を追求するばかりではなく、業界の困りごとを解消することに力を注ごう」と決心。
 同じころ「人生の師匠」と仰ぐ人物から刺激を受け、落語や歌舞伎など日本ならではの文化・芸能や、歴史を刻む神社仏閣に目を向けるように。長く支持されてきた伝統技術の奥深さに触れると同時に、現代社会のさまざまな分野で一目置かれる存在の人たちとも接点を持ち、人間心理の深い洞察力を磨きました。

 「おかげで事務所を立ち上げた30代の頃には、依頼者の目線になって仕事をするという、覚悟のようなものが備わりました」

 また、かつて憧れの職業だった弁護士の一人からは、「紛争が起きたとき法廷で闘うのが弁護士とするなら、建築業界には、紛争を未然に防ぎ円滑に進める役回りがあるはず」との言葉をかけられ、少年の頃の正義感が再燃します。

 「私が事務所を設立するにあたって、一緒に働き肌で感じた、父親のまっすぐな職人気質は見習うところが多く、とても参考になりました。人生の先輩や第一線で活躍する人たちとの出会いが、人として進む方向を示してくれたように思います」

井上さま対応中

#chapter3

建築に関わる誰にとっても公平な「通訳者」であることを誇りに、信頼される存在を目指して

 井上さんは、建設関係の専門学校で講師を務め、若い世代の指導も行っています。「世の中全体の価値観が変わるなか、仕事や生活に対する考え方や優先順位がこれまでと大きく変化しているのは明らか。20年30年と、同じ状況に甘んじることを望む若者は少ない」と実感。
 「企業もただ経済を回すだけではなく、そこに属することで自己成長ができたり、充足感が得られたりしなければ、淘汰されてしまう」と危機感を口にします。
 
 「グローバル化の波は、どの業界にも押し寄せています。建築業界も例外ではなく、何事も世界を視野に入れて論じなければなりません。とはいえ、伝統や理念といった付加価値もこれまで以上に重要視されるでしょう。それが企業のアイデンティティーにつながるからです。今後は、信条に基づいた社会への貢献度が再評価される時代になるはずです」
 
 こう熱弁する井上さんが目指すのは、「この人に相談したい」「あなただからこそ、仕事をお願いしたい」と信頼される存在。「建築の現場では、コミュニケーションが原因でトラブルが発生することが多いんです。例えば、専門用語は相手に意味が伝わっていない可能性があります。言葉などには十分に配慮し、トラブルを減らしていきたいですね」と話します。

 常に誠実でありたいと願い、正義の味方に憧れた井上さん。誰にとっても公平な「通訳者」であることが、自身を突き動かす原動力となっているのかもしれません。

(取材年月:2021年8月)

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井上英勝

「建築ドクター」として建物の健全管理を診断する一級建築士

井上英勝プロ

一級建築士

一級建築士事務所 株式会社クレアール

新築・改修・維持監理の全体を知る一級建築士が、難解な専門用語や施主の本音を公平に解説し、情報不足による不安を解消。建物の健全な維持管理を総合的に診断する「建築ドクター」としてアドバイスします。

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