特許侵害された時の対応
媒体特許の概要と経緯
一般的に「媒体特許」と呼ばれるものは「ソフトウェア媒体特許」のことを指します。ソフトウェアとは、形がないプログラム又はデータが保存された記録媒体(CD-ROM等)のことを指します。
従来の特許法では、創作物そのものに実体のないソフトウェア媒体単体では特許が取得できず、ハードウェア(コンピューター)と一体的なものとして扱うことで特許取得ができる形になっていました。
ただし、この形だとCD-ROMなど記録媒体のみの形で当該特許技術が市場に流通した場合に、権利侵害で訴えられないという問題が表面化しました。そこで1997年にルールが改正され、プログラムやデータを記録したソフトウェア媒体のみにも特許が与えられるようになりました。
さらに、近年ではCD-ROMなどでのソフトウェアのやりとりのほか、ネットワークを通じたダウンロード販売なども主流になっています。そのため2002年には、ソフトウェア媒体を介さずに取引されるプログラムについても特許が与えられるようになっています。
ソフトウェア媒体特許の取得ポイント
ソフトウェア媒体特許は、プログラムのソースコードやネットワーク技術などを駆使するため、特許出願においても他の分野にはない独自のノウハウが必要となります。
例えば特許の出願には「図面」の提出が必要となりますが、ソフトウェア媒体特許にはハードウェアの「構成図」やシステム処理の流れを記述した「フローチャート」などが必要となります。
また、各種図面に示した技術のどの範囲を権利として申請するかを定める「特許請求の範囲」の書類作成にあたっても注意が必要です。
ソフトウェア媒体特許の場合には「プログラム」に加えて「サーバーコンピューター」「クライアントコンピューター」「ロジック(方法)」「記憶媒体」など複数の項目を適切に申請範囲に加えるようにしなければなりません。
ソフトウェア媒体特許の取得の難しさ
以前のコラム欄で、ビジネスモデル特許について紹介しました。ビジネスモデル特許は、「コンピューターシステム及びインターネットを使用して構築されたビジネス手法」であり、実はソフトウェア媒体特許のひとつと言えます。
こうしたIT技術をベースとするビジネスモデルの発明を含め、ソフトウェア媒体特許は急速な勢いで発展を続けるIT技術をベースとしています。スマートフォン、ウェアラブル端末など新しいハードウェアもどんどん出てきています。
そのため特許庁の審査においても、通常の審査ガイドラインではなくソフトウェア媒体特許の場合には特別な審査ガイドラインが適用されることになります。
このように専門性の高い知識・ノウハウが要求されるため、ソフトウェア媒体特許についての相談・依頼は、必ずIT技術に精通した特許事務所・弁理士に依頼するようにしてください。