特許出願の発明人は人でなければならない。法人は権利の譲渡を受ける
特許侵害を受けた場合の具体的対応
前回のコラム欄で、自社特許の侵害が疑われる際の初動対応について紹介しました。拙速な対応を避け、まずは自社特許の確認、そして対象の物品等の入手と権利侵害の有無の確認を慎重に行う必要がありました。今回は、その事前調査の結果、実際に権利侵害が認められた場合の対応方法について解説します。
まず、権利侵害をしている相手に対して、どのようなことを要求したいのかを検討します。まずは、対象物品の製造・販売の差し止めが考えられます。また、権利侵害による損害について損害賠償請求も行うケースもあります。あるいは、折衝次第では、ライセンス契約を結んで製造・販売を続けてもらうという判断が行われるケースも考えられます。
相手方へ警告・通知を送付する
こちらの要求事項が決まれば、相手方に対し書面で警告・通知を行うことが一般的です。形式は、一般的なビジネスレター形式か、あるいは内容証明郵便で送付します。
どちらを選ぶかは、相手方の権利侵害について「気づかずに権利侵害している可能性もある」のか、あるいは「悪質性の高いもの」なのか等から総合的に判断します。判断に迷う場合には、公的な証明力のある内容証明郵便で送るようにすればよいでしょう。
内容については、権利侵害の事実の証明とこちらの要求事項を中心に作成します。製造・販売の差止・損害賠償を求めるのであれば「製造・販売の中止、及び、損害賠償として◯◯◯円を請求します」と具体的な要求事項を含めて記載しておきます。
警告・通知後の対応について
上記のように警告・通知を行ったあとの対応としては大きく2つのパターンがあります。ひとつには、相手方が侵害を認めて話し合いによる解決を求めるケース。もうひとつは、侵害を認めずに要求に応じないケースです(通知がまったく無視されることもあります)。
前者の、話し合いに応じるケースであれば、そのまま穏便な対応がとられるか、具体的な要求等について代理人を通じての話し合いによって対処が決まることもあります。
一方で、後者のように侵害を認めないケースでは、更なる警告書類を送ったり電話等による話し合いの場を持つようにします。
こうした手続きをとっても、最終的に相手方が侵害を認めないケースには、法的手続を取ることが考えられます。法的手続とは、主に「特許権侵害訴訟」あるいは「侵害行為の差し止めを求める仮処分申立て」という方法になります。
ただし、これらの法的手続は非常に多くの時間と費用がかかるため、実行にあたっては費用対効果をよく検討する必要があります。
また他の方法として、日本知的財産仲裁センターによる紛争調停を依頼するケースもあります。