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見直される畳の快適さ。畳職人としての技と伝統を守りながら、畳の魅力を広く発信中

畳制作技能士1級の国家資格を持つ畳のプロ

平真也

平真也さん
作業風景。畳のプロがていねいに仕事をします

#chapter1

逆風の中で挑んだ畳職人。日本文化として畳の良さを伝えたい

 住宅の洋風化が進むと共に床材も主流は畳からフローリングになりました。でも、「畳をみると思わず寝転びたくなる」という人は少なくないはず。1300年以上の歴史をもつ畳の伝統と誇りを守り続ける若き畳職人が、「平畳店」の平真也さんです。

 「畳はわらなどで造る畳床(芯材)を、畳表といわれるイ草で包んだものです。天然素材のイ草は梅雨時や夏は不快な湿気を吸い、乾燥する冬には水分を放出し部屋を快適に保ってくれます。また消臭機能もあります。高温多湿の日本の気候にぴったりで、気密性の高いマンションにこそ使ってほしい床材です」と畳の魅力を熱く語る平さん。

 まるで除湿・加湿機のような働きをする畳ですが、残念ながら市場は縮小する一方。家業の畳屋を子どもに継がせない人も多いといいます。畳業界で若い世代が珍しい存在となっている今、平さんにこの道を志した理由を聞くと「畳職人の父親の背中を見て育ったし、何よりも畳が好きだから」と笑顔で答えます。息子とはいえ上下関係に厳しい職人の世界。寡黙な師匠だったという父の下で修業し、国家資格である畳制作技能士1級も取得しました。

 「よくお客さまに『畳屋さんは寝床まで入る特別な商売だから信頼が大事』と言われるのですが、私どもにお任せいただいたということは信用された証。表替えなどの作業が終わり、『畳がきれいになって部屋が明るくなった』『イ草の香りが心地よい』とお客さまに喜んでもらえた時は本当にうれしいですね」と話します。

#chapter2

調湿性、クッション性、防音性と三拍子そろう優れた床材

 平さんは職人として腕を磨くかたわら、販路開拓にも奮闘。ホームページを立ち上げ自社の紹介をするほか、SNSやチラシを活用した集客にも取り組んでいます。しかし、和室から洋室へのリフォームにより、工務店から畳の処分を依頼されることもしばしば。畳の良さを伝えきれていないことにもどかしさを感じるそうです。

 「『畳とフローリング、どちらがいいんだろう?』と迷っているなら、ぜひ、考え直していただきたいですね。畳は調湿性だけでなく断熱性も高く、夏はひんやりとした肌触り、冬はぬくもりを感じます。またクッション性を備えているので、畳の上でごろ寝する気持ち良さは格別です!音や衝撃を吸収する役割も持っているため、小さなお子さんが少々走り回っても大丈夫。子ども部屋にもおすすめです」

 ただし畳にはデメリットもあります。「ダニの問題とカビの問題です。手入れ次第でダニは抑えられるのですが、どうも世間では悪いイメージがついているようで…。ただ、イ草織りの細かい目がゴミやホコリがとらえ、空気中に舞い上がるのを防いでくれるんですよ」と平さん。

 さらに「われわれは黄金色と呼びますが、5年もたつと黄色っぽく変色するし、イ草のささくれが衣服につくのを嫌う方もいます。これは畳替えのサインですが、面倒に思う方もいるでしょう」

 近年では、畳の欠点を補う新しい畳表も登場しているそうです。耐久性に優れた素材をベースに作られた商品で、色や柄も豊富にそろっているのが特徴です。

最近は、洋室にも似合う「へりなし畳」も人気です

#chapter3

畳床も自社で製造するため、顧客のニーズに柔軟&迅速に対応

 平さんには「国産イ草にこだわる」というモットーがあります。「昭和30~40年代の住宅ブームでは畳が飛ぶように売れ、畳表の原料・イ草は農業生産物の上位を占めていました。しかし、イ草不足から安価の中国産が輸入されたことでイ草農家は激減。現在、国産イ草の割合は2割程です」。日本文化である畳と、国産イ草の価値を発信していきたいと意欲を見せます。

 畳の素材にも配慮する平さん。4人体制で、畳床から自分たちで作っていることも強みです。「畳床は、問屋さんから購入すると2~3日かかることがある上、規格も決まっています。自社で手掛けることでお客さまの要望に迅速に対応できますし、私がいいと思ったものを組み合わせてオリジナル畳も創作することができます」

 畳職人として日々精進する平さんにとって、忘れられない出来事もありました。「お寺の畳替えで父の職人技を目の当たりにしたことです。寺院の畳の多くは、お寺の紋が入った畳縁を使用します。紋がきれいに並ぶように仕上げる必要があり、高い技術が求められます。敷き方も同様です。畳縁の模様を合わせる、畳の向きをそろえるなど、住宅では見られない細かい決まり事があります。お寺の大広間に新品の畳が整然と並んだ様は見事でした」。将来は店を継ぎ、4代目として畳業界を盛り上げていきたいと父への尊敬を込めて語ります。

 ライフスタイルの変化とともに住宅様式も変わりつつありますが、畳の良さを知り、畳のある暮らしを楽しんでほしい。それが平さんの願いです。

(取材年月:2021年7月)

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専門家プロフィール

平真也

畳制作技能士1級の国家資格を持つ畳のプロ

平真也プロ

畳職人

有限会社平畳店

日本文化の畳に魅力を感じ畳職人の道へ。国家資格である畳制作技能士1級を持ち、ていねいな仕事で工務店や個人のお客様からの信頼も厚い。平畳店は自社工場で床打ちを行っているため迅速で柔軟な対応が強み。

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