スポンジなどのやわらかいものを加工して形にするプロ
中山恭一
Mybestpro Interview
スポンジなどのやわらかいものを加工して形にするプロ
中山恭一
#chapter1
石川県能美市にスポンジなどのやわらかい素材を加工して製品化する独自の技術を持った会社があります。それが、北陸カラーフォーム。代表の中山恭一さんは、「触ってやわらかいものを加工したいとお考えでしたら、ぜひ当社にお任せください」と呼びかけるモノづくりのプロです。
ゴムやプラスチックなどの材料を扱っている北陸カラーフォームですが、最も特徴的なのは、スポンジなどやわらかい素材の加工です。スポンジといえば台所用スポンジのイメージを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、同社が製造しているのは、私たちの生活に溶け込み、広範囲に使われているものでした。
例えば自動車や建設機械の部品はもちろん、航空宇宙産業のパーツも手がけているのだとか。用途はさまざまで、車体の内側に入っている吸音材や、水の侵入を防ぐ止水パッキンなど、見えない場所で活躍する部品に北陸カラーフォームの技術が使われています。
「金属の加工を行う会社はありますが、やわらかいものを加工する会社はそう多くはありません。やわらかい素材は金属を削るアプローチでは切れないのです。特殊な刃物を用いて切削しますが、素材の固定方法も重要。奥の深い世界です」
北陸カラーフォームでは型を使わずに加工しているのが強み。そのため小ロットでの製作が可能で、コストを抑え、工期も短縮。個人、企業を問わず「こんなものが作りたい」というイメージさえあれば、設計から完成までをトータルでサポートしています。
#chapter2
顧客が描いたイメージを具現化し、素材をカタチにしていくことは「ワクワクする夢のあること」だと笑顔で話す中山さん。どんな依頼であっても応じることが会社の糧になり、技術力を高めることにつながるのだと力説します。
「手間がかかりそうだと思ってもご相談ください。少量で一回きりの製作でも大丈夫。依頼をいただくだけで私たちは勉強になるのです。どんなふうに作ればよいのか試行錯誤しているとモチベーションが上がりますね」。そんな姿勢は、「TRY DESIGN(まずはできる方向で作って、形にしてみよう)」という経営方針にも表れていました。
これまでに、東京のインテリア・デザイナーから「やわらかいもので椅子を作りたい」というユニークな相談を受け、ゴムスポンジ100%で製作したこともありました。この時は耐荷重性や実用性、素材が破損しないような切断方法といった難題に取り組み、試作を重ねてようやく完成。作品はドイツの見本市にも出品されたそう。
メダルを収集する個人のコレクターから、「メダルを入れておくケースをつくりたい」という相談を受けたことも。メダルの大きさに合わせてぴったり収納できるケースを製作したところ、大いに喜ばれたのだとか。そんな多種多様なニーズに応えるうち、「あらゆるものができるようになった」というわけです。
#chapter3
北陸カラーフォームでは現在、CFRP(炭素繊維強化樹脂)の加工にも力を入れています。CFRPは従来のプラスチックに比べて軽量で強度があり、今後の活躍が期待されている素材。ですが、まだまだコストがかかり、十分に活用されていないのが現状です。
同社では研究を重ねるうち、他社とは違うCFRPの加工技術を編み出しました。そのため小ロットでも加工OK。CFRPを使った試作品の依頼など「気軽に問い合わせてほしい」とのこと。将来は会社の大きな柱の一つになると期待されています。工場見学した際には、職人であるスポンジの加工マスターが、一見しただけでは分からない形状の細かな調整をしているところでした。製作や加工が難しい形状、その用途や目的を満たすことが難しい案件であればあるほど職人魂が燃えるのです。
「私にとってスポンジは夢の種。手の加え方によってどんなカタチにでも変わります。その可能性は無限大。私たちの製作したものが世の中の人たちに役立って、喜んでもらえれば嬉しく思いますね」
製造業が国外へとシフトしている昨今、中山さんは「もともと日本の基幹産業だったモノづくりの力を、いまこそ大事にするべき」だと強調。他社ができないことや、尖った仕事をどれだけやっていけるかが生き残りのカギだと真剣に訴えます。
日本のモノづくり産業が今後どうあるべきか。北陸カラーフォームの姿には、その重要なヒントがありました。同社はこれからも、やわらかい素材をあらゆるカタチに変え、自分たちでしか作れない製品を世界に送り出しながら、日本のモノづくり企業として存在感を放っていくことでしょう。
(取材年月:2020年1月)
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Profile
スポンジなどのやわらかいものを加工して形にするプロ
中山恭一プロ
製造業
株式会社北陸カラーフォーム
「まずはできる方向で考え、形にしてみよう」という発想でモノづくりに取り組んでいる姿勢が強み。顧客からのどんな依頼であっても相談に乗りながら、それに挑戦することで新たな技術やスキルを日々磨いている。
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