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夫婦間の問題や心の不調に悩むクライアントを心から応援するサポーター

看護師経験を生かす心理カウンセラー

杉山裕子

看護師経験を生かす心理カウンセラー 杉山裕子さん
看護師経験を生かす心理カウンセラー 杉山裕子さん

#chapter1

看護師経験から導かれたグリーフケアの重要性

 ほがらかな笑顔でクライアントを温かく迎えてくれる杉山裕子さんは、代表の倉持良信さんとともにクラージュこころカウンセリングルームを運営する心理カウンセラーです。杉山さんが心理カウンセラーとして第二の人生を始めたのは、看護師として23年あまり病院や介護施設で勤めた後のこと。あるがん患者のターミナルケアに深く関わったことがきっかけでした。

 その患者は、余命3カ月と宣告されていました。とても魅力的な人で、杉山さんは介護保険の申請や外泊の付き添いなど、通常の看護師業務の範囲を超えて付き合いました。彼女との関わりの中で、「残された家族は彼女の死をどう思うのか」「彼女亡き後のこの余韻をどうしたらいいのかと杉山さん自身が突き詰めて考えるようになりました。それ以後、ターミナルケアや心理学について学ぶようになったのです。

 当時のことを思い出しただけで、今でも胸がしめつけられる気持ちになるという杉山さん。その悲しみをグリーフケアへの取り組みに転化しました。グリーフケアが必要なのは、大切な人を亡くした直後だけではありません。夫を亡くした妻が、直後は悲しむ暇もなく子育てのために無我夢中で過ごし、子どもが自立した後、空虚感に突如襲われることもあります。何年も経過しているため、本人がその不調の原因に気づかないことも多いのです。

 「存分に悲しんでいいのです。亡くなった人に対する思いを素直に表現することが、その後の人生を生きやすくするのです。カウンセリングルームで何でも話してください。亡くなった方の良いところだけでなく、嫌だったことも含めて話してもよいのです。」先に逝ってしまった人を思い出し、十分に悲しんで、自分の気持ちを整理すること。それが故人を悼むことでもあり、自身のグリーフケアにもなるのです。

#chapter2

男女二人のカウンセラーが同席する和やかなカウンセリングルーム

 クラージュでは、杉山さんと倉持代表が常に同席して和やかな雰囲気の中で話を聴いてくれます。「夫婦関係や離婚に関する悩みが多いですね。最近では、離婚を考えるほどではありませんが、夫婦間のコミュニケーションがうまくいかないといった方が多いです」

 こうした人には、アサーションの手法を使い、実際にコミュニケーションの練習をしてもらうそうです。クラージュでは夫婦同席のカウンセリングも人気があります。「クラージュとは、フランス語で勇気という意味です。勇気を出して私たちのカウンセリングを受けに来ていただいた方々を心から応援し、支えていくサポーターでいたいですね」

 二人体制にしているのは、常にクライアントを見守り、話しやすい環境を作るため。メモを取らざるを得ない時でも、一方のカウンセラーがクライアントから目を離すことはありません。また、カウンセラー同士が互いをチェックし合い、終了後には毎回、互いの発言や態度を振り返り、次回に役立てているそうです。二人の誠実な仕事ぶりが伺えます。

 緊張して悩みを話せないクライアントには、表現療法を勧めています。箱庭療法はもちろん、雑誌の切り抜きを自由に貼りつけていく「コラージュ療法」、カウンセラーとクライアントが一枚の紙に交互に絵を描いていく「MSSM法」など、本人の希望を聞きながらカウンセリングを進めていきます。これは、何らかの方法で自分を表現することによって、カウンセラーとの共感を得たり「コミュニケーションがとれた」という実感を抱いてもらうことを目的としています。作業を通して両者が打ち解けた関係になり、その後の会話がスムーズに進むことも。「すっきりした!」と言って帰路に着くクライアントも多くいます。

心理カウンセラー 杉山裕子さん相談風景

#chapter3

医療従事者にこそメンタルヘルスは必要

 杉山さんは、最近メンタルヘルス・マネジメントの資格も取得しました。これは働く人の心のケアを目的としたもの。自身の看護師時代には、対人関係でいろいろ悩むこともあったと言います。「看護師は、上司はもちろん、医師や患者、その家族、理学療法士、レントゲン技師、薬剤師、ソーシャルワーカーなど、さまざまな人との関わりがあるので、ストレスを抱えることが多い。だからこそ、看護師にはメンタルヘルス対策が必要です」。そして、このことはすべての医療従事者にとっても同じです。

 介護施設では、入居者の死を悲しむヘルパーの声を聞くこともありました。ヘルパーは入居者に深く関わるため、「やってあげたいことが山ほどあったのに、施設の決まりでできなかった」と、亡くなった後もずっと悔やんでいるのです。グリーフケアは介護の現場にも必要です。杉山さんは、今後は介護施設などでのグリーフケアのセミナーを、積極的に開いて行こうと考えています。「医療や介護の分野で働く人の心のケアができれば、現場はもっと働きやすくなる」。そう語る杉山さんから、カウンセラーの底力を感じました。

(取材年月:2013年4月)

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専門家プロフィール

杉山裕子

看護師経験を生かす心理カウンセラー

杉山裕子プロ

心理カウンセラー

クラージュこころカウンセリングルーム

看護職20年以上の経験と自身の離婚。この二つを経て深めた洞察に基づき、グリーフケア、男女間のコミュニケーション、離婚問題などを中心に親身なカウンセリングを実施。

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