ついに出た!!「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(第1版 令和6年2月)」について
株式会社トトロエコンサルティング代表です。
今回は自律的化学物質管理移行に伴う皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(暫定版)についてご紹介したいと思います。
はじめに
保護具には呼吸用保護具、保護手袋、保護メガネ、保護衣、保護長靴がありますが、中でも保護手袋の選定に難しさを感じている事業者が多いと思います。今回、その選定マニュアル(暫定版)を国が発出したので簡単にご説明したいと思います。
皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(暫定版)
その選定マニュアルとは、2023年12月上旬に厚労省HPに掲載された「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」です。このマニュアルは、化学物質の自律的管理移行に伴う一連の法改正に関係するものです。関連条文は、安衛則第594条の2および3の規定になります。
一連の自律的化学物質管理として皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止の観点が発出されたのですが、事業者からはどの化学物質が皮膚等障害化学物質等に該当するのか?そして、その接触防止のためにどの保護具を選定すれば良いのか?が示されていないという声がこれまで開催されたセミナー等で多く聞かれました。そのためなのかどうかは不明ですが、2023年12月になってひっそりと厚労省HPにマニュアルとして掲載されたのでした。
通常、このような文書が出る際には何等かの報道発表文と共に説明があるものですが、このマニュアルについては一切無かったと認識しています。一部の都道府県労働局のHPではその代わり?となるような簡易な発表文を掲載しているところもありました。
さて、肝心のマニュアルについて現時点で感じたことを2点述べたいと思います。
フローチャートで保護手袋の選定ができる!!
一点目は、このマニュアルに書かれている保護具選定の方法ですが、フローチャート(マニュアルP42)に準じて極めて単純化して選定できるようにしようとする意図は良いと思います。ただでさえ、あらゆる化学物質に万能な素材の保護手袋は無いのですから、当該法令が義務化される2024年4月に向けて事業者の皆様は相当不安だと思います。しかし、個人的には選定の中身がブラックボックス化していて本当にこの選定方法で大丈夫なのか?と心配になります。保護手袋の性能指標となる浸透、透過、劣化をどのように盛り込んでいるのが分からないからです。せめて、Create-simpleの設計基準のようなものを出してほしいなと思います。選定のフローチャートの最後には、必要に応じて保護具メーカーに聞くように書かれているので、保護具メーカーの方も大変だな(本心は嬉しいかもしれませんが)と率直に感じました。
「暫定版」という点
二点目は、このマニュアルが現時点で「暫定版」ということです。表紙の下に「暫定版」と書かれていますが、何で暫定版なのかの説明が書かれていません。何で暫定版なのか?あくまで推測になりますが、本文を読むと、「参考資料1」が欠落していることに気づきます。一方で「参考資料1と照合し・・・」などと本文に書かれていることから、少なくとも、参考資料1が欠落していることで暫定版になっていることが伺えます。「参考資料1がなかったら使えないやないか?(怒)」という声も聞こえてきそうですが、その通りですよね。ただ、専門家なら参考資料1が無くてもさほど問題なく、当該マニュアルに従って保護具を選定することができるはずです。
このマニュアルの使い方
このように、このマニュアルは現時点で暫定版のため不完全なところはありますが、保護手袋がそれなりに選定できるようになっています。現時点での使い方としては、2024年4月1日に保護具着用管理責任者に選任予定の方が、このマニュアルで選定の練習をしながら、正式版マニュアルの登場を待つ、という使い方が想定されます。
なお、2024年4月1日までの保護具着用管理責任者講習で当該マニュアルを取り扱うのか?取り扱わないのか?は講習機関や教育講師の見解に依るので分かりませんが、もし、今後講習会を受講予定の方が居られたら是非当該マニュアルについて質問してみて下さい。ちなみに、私は講習講師をしていますが、暫定版のこのマニュアルを取り上げています。
保護手袋の選定が難しいと感じる方は・・・
それでも保護手袋の選定が難しいなと思われる方は、お近くの専門家までご相談ください。なお、全国展開している当社にご相談いただくと以下のようなメリットがあります。
・当社代表は、保護具に精通しており、保護具を使う方の身になってご相談にお応えすることができます。
・当社代表は、元化学物質の有害性評価研究者のため、化学物質の皮膚障害や浸透・透過の専門家です。そのため、ご相談者様の事業場でお取扱いのある化学物質の有害性をベースに保護手袋選定のお手伝いができます。
今回は、皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(暫定版)をご紹介しました。
本内容は2023年12月29日時点の情報に基づいています。