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Mybestpro Interview

本当に必要なコトを提供できる、介護の橋渡しを

介護サービスのプロ

坂部智子

坂部智子 さかべともこ
坂部智子 さかべともこ

#chapter1

福祉業界の現状は…

 介護用品の宅配ショップ ともべぇは、福祉業界でキャリアを積んだ坂部智子さんが代表を務め、長田、須磨を中心に神戸エリアを自ら配達員として出向きます。
「宅配するのは紙おむつや杖、シルバーカーなど。特に紙おむつなどの消耗品は欲しい種類、量をパッケージ単位で組み合わせての購入も可能です」
 そして、実際にお客さんと出会い、本当にその人にあった福祉用具をきちんと選定したい。体に合わない杖を使っているため余計に歩行の状態が良くないことや、不便があっても「年だから…」と済ませていることなどは、少しの工夫で改善することができるかもしれない。
 坂部さんが自ら配達員となるのは、実際のお客さんの「声」を聞き、「改善点」を見つけるためでもあるのです。

 坂部さんは大手医薬品卸入社後、在宅介護部門の仕事に就き、介護用品を扱う店舗スタッフに。
「食べ物をこぼしてしまうからと用具を買うにしても、『こぼす』のは食べるときにこぼすのか、口に入れてからこぼしてしまうのか、手がふるえるからこぼすのか…。しっかり観察すると、ちょっとした専門員のアドバイスで楽にできることがあるんです」。
 やがて5年後、部門の閉鎖が決定。そこで坂部さんは別の介護ショップに就職、介護用品のレンタル・販売管理者を担当。
「ただ社員が少なく、1人で何役も仕事をこなさないといけなくて、ますますお客さんの声から遠のいていたんです」
 そんなとき、坂部さんの家族の加齢に伴う不調が進行。
 それをきっかけに、坂部さんは開業することを決意します。

#chapter2

自らの闘病生活を経て得たもの

 坂部さんは「福祉住環境コーディネーター2級」、「福祉用具専門相談員」、「介護支援専門員」の資格を取得しています。ただ問題は、介護保険で購入できる商品を扱えないこと。そのためには店舗を構え、2人以上の福祉用具専門相談員が必要となるからです。
「個人の営業力では限界がありますが、同業者も多い。ならば、お客様が必要としている情報などを提供する仲介役として仕事ができるんじゃないかと考えたんです」
 介護保険での福祉用具販売業者やケアマネージャー紹介、手すり取り付けなどの住宅改修アドバイス、地域の老人会などでの福祉用具の勉強会、デモ体験会などのイベントの考案など…。
「競争することなく、業者さんと力を合わせて取り組んでいける。お客様と業界をつなぐ、橋渡しのような仕事をしたいですね」

 お手製の宅配用帽子も作って準備万端の坂部さん。
 実は、20代の頃に風邪が発端の急性脊髄炎から約7年、寝たきりの闘病生活を過ごしています。
「下半身が動かない時期は病院内を車椅子で疾走したり、手が使えなくなったときは足や口を使ったり。たえず何かできることを探してやっていました」。
 ほがらかに笑いながら話す坂部さん。「少しの工夫」で生活を豊かにできる。
 それは坂部さん自身で体験してわかったことでもあるのです。

坂部智子 さかべともこ

#chapter3

介護をする立場に必要なものは

 坂部さんにとって、家族に介護が必要になったことはやはりショックで、最初はとまどいの連続でした。
「仕事では専門家として関われるのに、なぜ家族に対しては葛藤やとまどいが起こるんだろう。
 本当に何度も何度も自問自答を繰り返しました」。
 今では、ようやくその状況を受け入れることができるようになったと話します。
「少しづつ、緩やかに悪化しているものもあります。
 けれども、ようやくそれをちゃんと受け入れることができるようになりました。一緒に笑える時間を、今は何よりも大切にしています」
  長い闘病生活を経て、そして現在を生きる坂部さんだからこそ説得力のある言葉です。

 入院しているときに聴いた話ですが、と前置きをした坂部さん。
「『病』ってやまいだれの中に『丙(へい)』と書きますよね。『病』自体、誰とも比べられない患った本人だけのもので、甲乙つけられないから『丙』が入っているそうです。
 傍からはたいしたことがないように見えても、本人にとっては苦しいことがある。他人の抱えている悩みの大きさはわからない。だからちゃんと向き合っていきたいんです」
 街で帽子をかぶって配達している坂部さんを見かけたら、ぜひ声をかけて話してみてください。悩みの糸口は、必ず探せるはずです。

(2009年4月 現在)

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