専門家を発掘、企業が求める人材をコンサルティングするプロ財田和典

専門家を発掘、企業が求める人材をコンサルティングするプロ

財田和典

ものづくり企業が抱える課題解決を目指すべく、技術者やコンサルタントとの出会いをサポート

　技術革新が進み、企業が抱える問題は多様化しています。特にものづくりを行う事業者では、自社が抱える課題の解決策を見いだすために、その領域の専門知識と技術を併せ持つ人材を求めています。
　人材紹介会社「リンクウィル」の財田和典さんは、シニア技術者や経営の経験者といった専門家と企業を結び付ける事業を、大阪市東淀川区で立ち上げました。

　「専門家と言っても技術者だけに限りません。特定の分野や業務に精通している人のことで、経営コンサルタント、技術コンサルタント、企業OB・OGなどさまざまです。中には明文化されにくい実務や実績もあり、職務経歴書のみではその人本来の能力や個性を測れないことがあります」

　財田さんは、500以上もの人材マッチングプロジェクトを運営。企業課題の背景を丹念に調べ、優れた人材との間で多くの関係性を作り上げてきました。「企業が求めるレベルの高い要望に対して期待通りのパフォーマンスが可能か、といったことは、AI（人工知能）で容易に判断できるものではありません。企業と専門家が対等な立場で、それぞれの思いを理解し、共に練り上げるような舞台設定が必要です」と話します。

　また国の調査にも「『企業の主な経営課題は人材育成や能力開発』というデータがある」と財田さん。「先進技術の導入が進んでも社内の適材不足は変わらず、外部人材の活用がさらに増すはず。これからは働く側も企業や組織に依存するだけでは危険です。自分の強みを明確にして専門性を磨き、その能力が必要とされる場所で活躍する時代がすでに始まっています」と提言します。

企業への人材投入には、ウイスキーの価値を決める〝マスターブレンダー″のような繊細な感性が必要

　経営コンサルティング業界に30年以上身を置く財田さんが、縁をもった経営者は300人以上。「これらエグゼクティブ（上級管理者）との人脈が私の最大の財産」と言います。

　当初は上場企業、オーナー企業に対して、企業課題(ニーズ)とコンサルタントの得意分野(シーズ)をマッチングさせ、施策の立案・提案などを行うコンサル業務に携わりました。

　仕事を通じて数多くのベテラン技術者と関わる中で、その衰えぬ技と情熱を生かせるような働き方を模索するようになった財田さん。「専門性の高いスキルを持つシニアが再び活躍できるステージは、刻々と変化し、技術的な課題が発生する現場にこそある」と確信します。技術者と企業の相性などを考慮して、登録技術者の中からピンポイントで投入するシステムを構築。適任者を現場に配置することによって問題解決を目指す「ベテラン技術者による業務支援事業」を立ち上げました。

　企業と専門家とのベストマッチングを手助けする自らの仕事を、財田さんは「ウイスキーのブレンダーのようなもの」と称します。
　「原酒は上質なものほど個性が強く、やみくもにブレンドしてもおいしいウイスキーはできません。熟練のマスターブレンダーは、テイスティングを重ねて原酒の特徴を見極め、最適なタイミングでブレンドします。私たちも、専門家の強い個性を把握するとともに、企業の状況をつぶさに調査して調整するタイミングを探る。ブレンダーのように研ぎ澄まされた感性が求められると思っています」

日本のものづくりを支えてきた優れた技を、再び輝かせるステージへとつなげるために

　財田さんがこれまでに出会った専門家は、生産・製造業だけでなく、メンテナンスや営業、知財戦略と多岐にわたります。優れた実績を持ちながら正しく評価されていない実態を数多く見てきました。

　「技術者には『かたくなで融通がききにくい』というイメージがあるかもしれません。中には伝えることが必ずしも得意ではないという人もいます。しかし、経験値を資料で残すことができず、体得した技術が埋もれてしまうのは、その専門性を必要とする企業にとっても、後続の若い世代にとっても大きな損失」と憂慮します。

　「双方の特性やこだわりを深く知る私たちコンサルタントが調整役を務め、橋渡しすることで、ものづくりの現場が円滑に機能することを願っています」

　事業のスローガンとして「時空を超えて技（WAZA）を伝え、絶え間ない日本のものづくりを支えていきたい」の言葉を掲げている財田さん。「手ずから技を伝える」という意味で「Hand down the skills 」と英訳しています。テクノロジーと並ぶ「人の手技」の価値を、大切に次世代へ受け継いでいく思いが込められているそうです。

　「シニアの人材情報のハブ（中核）的存在として人と企業を結びたい。熟練技術者がいきいきと活躍できるステージが広がれば、若い世代が日本のものづくりに対して、誇りと可能性を感じてくれるはず」と財田さん。
「若者が希望を膨らませ、挑戦し続けられるような未来につなげるために」というメッセージにも力が入ります。

（取材年月：2021年6月）

企業の経営や技術などの課題に熟練の技をブレンド、新しい価値を創造する

ものづくり企業が抱える課題解決を目指すべく、技術者やコンサルタントとの出会いをサポート

企業への人材投入には、ウイスキーの価値を決める〝マスターブレンダー″のような繊細な感性が必要

日本のものづくりを支えてきた優れた技を、再び輝かせるステージへとつなげるために

専門家プロフィール

Other Interview