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黒豆の栽培指導から販売、普及に140余年の歴史を誇る老舗

丹波黒豆のプロ

小田垣昇

小田垣商店の小田垣昇さん
丹波黒豆を丁寧に選別

#chapter1

丹波篠山の名産「丹波黒大豆」は大粒で豊かな食感が特徴

 お正月料理に欠かせない黒豆。この黒豆の煮ものは、黒い色が邪気を払う「厄除け」と、黒く日焼けするまでまめに働き、達者に暮らすといった「健康」「長寿」を願う意味があり、おせちの重箱のなかでも一番上の一の重に入っています。

 「おめでたい食材として親しまれてきた『黒豆』は、表皮が黒い大豆のことで正式には『黒大豆』と言います。黒大豆の品種は全国で30以上ありますが、ここ丹波篠山(兵庫県丹波篠山市)の名物『丹波黒』は丸々とした大粒で、煮ても形が崩れにくいのが特徴です。つややかで見た目にも美しく、もちもちとした食感で風味豊かです」
そう話すのは、黒豆の加工販売を行う「小田垣商店」の常務取締役・小田垣昇さん。

 同店の歴史は古く、徳川家康により築かれた篠山城のお膝元で1734年に鋳物商として創業。幕藩体制が終わりを迎える1868年(明治元年)に種苗店に転業し、黒豆の栽培や普及に尽力するようになりました。
 「当店が種苗業に転業後、『丹波黒豆の良さを多くの方に知っていただくこと』『特産品として生産量を上げ、地域の農業を盛り上げていくこと』を志としてやってきました。私どもは、明治の頃から生産者の方々と栽培環境の改善に努めてきました。おかげで徐々に耕作面積が増え、昭和の初めには全国に商品をお届けできるようになりました。当時はインターネットもない時代です。『知り合いから分けてもらい、たいへん気にいった』と口コミで評判が広がり、お手紙で注文をいただいことが記録に残っています」と小田垣さん。

 「近年は、黒豆に含まれているイソフラボンやアントシアニンといった栄養素にも注目が集まり、健康食材としてもニーズが高まっています。これまでも、そしてこれからも『丹波黒豆』のおいしさと魅力、伝統を伝えていくことが、私どもの使命だと考えています」

#chapter2

手作業で選別された選りすぐりの粒を使用

 同店ではより良い品を送り出すため、生産者から納められた黒豆を手作業で選り分けています。
 「目で見て指で触れて粒を選りすぐる『手選(てより)選別』は、当店の伝統です。この方法を守っているのは品質を維持するためというのもありますが、生産者の方への敬意もあります。篠山の在来種である『丹波黒』は、江戸時代から優良な黒豆を種子として使用する系統選抜を繰り返すことで現代へと受け継いできましたが、作付けや収穫、脱穀といった工程は、今でも機械化できない繊細な品種です。生産者の方が手塩にかけて育ててくださるのですから、私どもも手間を惜しむわけにはいきません」

 小田垣さんは、多くの人の手により丁寧に仕上げられた「丹波篠山の黒豆」を、国内だけでなく世界に向けて発信。台湾や香港といったアジアの主要都市をはじめ、遠く離れたパリやドバイで開催される食の展示会に参加するほか、商品やレシピ開発に積極的に取り組んでいます。

 「黒豆は和のイメージがあると思いますが、丹波篠山市在住のパティシエと一緒に『丹波黒豆ドルチェシリーズ』として洋菓子の提案も行っています。サクサクと軽い食感の煎り豆やしっとりやわらかいしぼり豆を、チョコやシュガー、抹茶などで包み込んだもので、コーヒーや紅茶と一緒に軽くつまめると喜ばれています」

 また、地産地消の推進などを目的に兵庫県が委嘱する「ひょうご『食』担当参与」の経験がある料理研究家と黒豆の新たなクッキングレシピを考案。自社ホームページで紹介しています。
 「カレーやコロッケ、ロールキャベツなど食卓で主役になる一品のほか、シフォンケーキやくずもちといったデザートもあります。おせち料理だけでなく、1年を通じて黒豆を味わっていただくことが目標です」と話します。

140余年の歴史を誇る小田垣商店

#chapter3

老舗としての伝統を守りながら、時代の変化に柔軟に対応

 丹波篠山市で生まれ育った小田垣さんは、大学進学で地元を離れ横浜市へ。卒業後は食品を扱う商社に入社し、営業に従事しました。

 「大学は商学部だったので、学生時代、会社勤めを通して、商品やお金の動き、流れについて学ぶことができました。家を継ぐことを意識して学部や就職先を選んだわけではなく『自然とこういう流れになった』という感じです。でも、篠山に帰る前は父に留学をさせてほしいと頼み、アメリカでアントレプレナーシップ(起業家精神専攻)のビジネスプログラムを修了しました。当店が140余年前に商いを替えたように、屋号を継承していくためには時流に合わせて変化していく柔軟性も必要です。新しい企画などを立ち上げるのは起業に等しいので、その精神を追求できたのは良かったと思います」と笑顔を見せます。

 帰国後は家業に専念し、老舗としての風格と理念を大切にしながら未来に向けて新たな試みを行う小田垣さん。今後ますますの活躍が期待されます。

(取材年月:2017年6月)

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専門家プロフィール

小田垣昇

丹波黒豆のプロ

小田垣昇プロ

株式会社小田垣商店

明治元年から、小田垣商店では黒豆の栽培技術の指導から買取、選別、販売までを一貫して行っています。手作業(手選選別)により選りすぐった上質の豆を使った商品を、国内のみならず海外でも提案。

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