化学物質のリスクアセスメントをサポートするプロ
中家隆博
Mybestpro Interview
化学物質のリスクアセスメントをサポートするプロ
中家隆博
#chapter1
「作業環境の空気中に、化学物質や粉じんなどの有害物質が存在すると、働く人々の健康に悪い影響を及ぼすことがあります。この有害物質を科学的に評価し、作業環境の良否を確認するのが作業環境測定です」と話すのは、作業環境測定、簡易専用水道検査、局所排気装置の設計などを主な事業とする「関西環境科学株式会社」代表の中家隆博さんです。
労働衛生検査機関で約20年間、作業環境測定と特殊健康診断(代謝産物の分析)業務に携わった後に独立。「中小企業の職場環境を守りたい」という思いから、2012年に「関西環境科学株式会社」を設立。以来、新技術の開発に取り組み続け、着実に発展を遂げてきました。
日本産業衛生学会、日本労働衛生工学会などで、ほぼ毎年、研究成果を発表している中家さん。2018年には、関西環境科学と昭和電機が共同して、活性炭を使って有機溶剤を浄化し、室内に戻す装置を開発しました。
また2019年には、産学連携の研究グループ(関西環境科学、ウシオ電機、昭和電機、産業医科大学)により、エキシマランプから照射されるVUV光を利用してホルムアルデヒドを分解除去する技術を開発、日本産業衛生学会で発表しました。「一般的には、有害な化学物質を取り扱う作業場には、局所排気装置が設置されています。しかし、これでは、装置が吸い込んだ室内の空気を全て屋外に排出する仕組みになっているので、冷暖房の消費電力が大きくなることが課題になっていました。今回の研究開発では、ウシオ電機が作ったエキシマランプにより、ホルムアルデヒドを分解することに成功。クリーン化した空気を室内に戻すことで、冷暖房にかかる消費電力を抑えられる技術を発表しました」
今は、ホルムアルデヒドをターゲットにしていますが、それ以外に数種類の化学物質も分解できるとのこと。「姫路の企業が先端技術を生み出しました。将来的には、この技術が世界中で活用されるかもしれませんね」と笑顔を見せます。
#chapter2
中小企業を中心に化学物質のリスクアセスメントの重要性を訴えている中家さん。「2012年に印刷会社で発生した胆管がんの発症災害をきっかけに、労働衛生サポート事業に取り組むようになりました」
作業者がサンプラーを胸に付けるだけで、ばく露濃度を測定できる「個人ばく露測定」の結果をもとにリスク評価を実施。「環境が悪い場合は、作業方法の見直しや排気装置の設計・施工に対応します」。また、職業性の騒音性難聴を予防するために実施する騒音の個人ばく露測定にも取り組んでいるそうです。
有機溶剤の安全な使い方などをアドバイスする安全衛生教育にも力を注いでいます。豊富な経験と知識に基づき、「臭いの原因を知りたい」「空気中にオイルミストがどの程度含まれているのか知りたい」といった質問に回答。「リスクを低減するための対策」から「安全データシート(SDS)の読み方」「耳栓やマスク等の保護具の選定方法」まで丁寧に説明することが特徴です。「安全衛生活動に関する悩みを聞き、現場と管理層の橋渡し役を務めます」
企業の労働衛生部門の窓口として「安全衛生システムを見直し、従業員が安全に働ける職場環境に関わってほしい」という相談にも対応。衛生管理の専門家の立場から筋道を立てて管理・実施すべき事項を決めることもあるそうです。
#chapter3
「事業場の空気を採取するときは、お仕事の妨げにならないように注意しています」。スタッフ教育に力を注ぎ、作業中は周囲に気を配ることや、通路に機材を置かないことなどを徹底しているといいます。また、中小企業で働く人々の安全を守りたいという思いから、環境測定の価格も可能なかぎり抑えていることも特徴の一つです。
創業当初から、海外での安全衛生支援を目指していた中家さん。「大気汚染が問題となっている発展途上国の作業環境を改善したいです。2019年11月に開発した技術をバンコクで発表することが決まりましたので、やっと海外進出への第一歩を踏み出せそうですね」とうれしそうに話してくれました。
「お客さまからいただいた質問が一番の勉強材料です。今後も産業医科大学などと連携をとり合い、最新情報の吸収や技術能力の維持に努め、『職場の安全は、関西環境科学に任せておけば安心』と信頼してもらえる存在になりたいですね。これまで弊社を支えてくださった方々に恩返しをするためにも、さらにお客さまのニーズに寄り添い、どのようなご依頼にも応えられる体制を整えたいと考えています」
(取材年月:2019年6月)
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Profile
化学物質のリスクアセスメントをサポートするプロ
中家隆博プロ
作業環境測定士
関西環境科学株式会社
学会での研究発表実績が豊富。作業環境測定を活用した環境改善や化学物質のリスクアセスメントのサポートに取り組んでいます。また、安全衛生教育にも力を入れています。
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