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シルセスキオキサンの処理温度と分子構造と誘電率などの物性の関係についてのお話です。
Relationship between polysilsesquioxane
molecular structure and low dielectric properties
for high-frequency applications
Masashi Nakamura1,* , Masami Matsuyama1,2, Araki Masuyama2, Seisuke Inada3,Yasunari Kusaka3, Seiji Watase1
1 Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology, Morinomiya Center, 1-6-50 Morinomiya, Joto-ku, Osaka 536-8553, Japan
2 Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Osaka Institute of Technology, 5-16-1 Omiya, Asahi-ku, Osaka 535-8585, Japan
3 SEKISUI CHEMICAL Group, R&D Center, 2-1 Hyakuyama, Shimamoto-cho mishima-gun, Osaka 618-0021, Japan
*Corresponding author: Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology, Morinomiya Center, 1-6-50 Morinomiya, Joto-ku, Osaka 536-8553
シルセスキオキサンの処理温度と分子構造と誘電率などの物性の関係についてのお話です。
(本文)
下記より、『PDF』をクリックしてください。
https://academic.oup.com/chemlett/article/54/5/upaf097/8127628
(追加情報)
https://oup.silverchair-cdn.com/oup/backfile/Content_public/Journal/chemlett/54/5/10.1093_chemle_upaf097/2/upaf097_supplementary_data.docx?Expires=1752320495&Signature=4PeAaUPpaHK4MA2AQGuimWMz-aMrj26jUeqRxGFuFAEgkQj-FpIneI1EmLdfNZECc3RnaZARFn87fcfBRrFN57KOmtqd~97kdSo0acn1uxrcvsvZduj0i5xhDX9nF5ZIiAGdqh0dY9-syQ5sYJ3d0uABW24njToPmM0ZRZZIRSm0AAXQ-QhW-wAy~aiiCUkUSvwQgT1LGStdrcy07c75JNmX6a0ZPgjnDRvwRXgd3vCzp-p3umGMVoCwRrrSyeUjnFwoqgfwkTX5lkpmdbbxIXH3lECeWIkx0byiwesZG1m5NrHfM~iLiTGcfrmpgHf~MJYwpcV~sBAS8xZKcaxvOw__&Key-Pair-Id=APKAIE5G5CRDK6RD3PGA
まず、シルセスキオキサンについてです。
下記には『シルセスキオキサンとは、主鎖骨格がSi-O結合からなるシロキサン系の化合物で、[(RSiO1.5)n]の組成式で表されます。
単位組成式中に1.5個(1.5 = sesqui)の酸素を有するシロキサンという意味で、[Sil-sesqui-oxane]と称されます。』とあります。
(シルセスキオキサン)
https://ce-fuedayamada.com/945/
上記資料のFig 1を見ます。
黒い●の酸素が3つSiにくっ付いた構造がシルセスキオキサンになります。
『シルセスキオキサンは、通常のシリコーンと異なり、T単位のみで構成されていて組成式は[(RSiO1.5)n]で表されます。 このためシリコーン(D単位)とシリカ[SiO2]の中間的な物質として位置付けることができます。』とあります。
このシルセスキオキサンが重合すると、ポリシルセスキオキサンになりますが、他の構造も混在してポリマーとなることも多いようです。
続いて、今回の研究例で重要となる物性が誘電率(εr)(ここでは比誘電率も同じと考えて良い)と誘電正接(tanδ)についてです。
下記、いささか聞き取りにくい部分がありますが、結論として『高周波回路を作製するには比誘電率も誘電正接も小さい方が良好だということのようです。
(【基板設計の基礎知識】比誘電率と誘電正接)
https://www.youtube.com/watch?v=CYxg8_eBXDw
合成はScheme1に示されている経路で行ったようです。
最後に3hの処理温度が、100℃ or 200℃ or 300℃となっています。この温度の違いでサンプル名もPMSQ-100、PMSQ-200、PMSQ-300となったようです。
反応の進行はFT-IRのメトキシ基由来のピーク(2840cm-1)の減少で確認したようです。
物性の測定結果が表1、図2、図3に出ています。
処理温度が100℃⇒200℃⇒300℃と高くなるにつれ、誘電率も誘電正接も小さくなったようです。
もっとも、誘電率に関しては200℃が2.39、300℃では2.41と200℃の方が小さくなりましたが、誤差範囲と見て良さそうです。
続いて、個体NMRでSiの構造を調べています。
上記のように、Siに2つ酸素がくっ付いている場合をT2構造、3つの場合がT3構造です。
Si-NMRでこれらの構造の比率を見積もることができます。
(29 Si NMR法による含ケイ素材料の構造解析)
https://www.agc.com/innovation/library/pdf/66-07.pdf
結果が図4に出ています。
処理温度が高くなるほど、T2構造の割合が減ってT3構造の比率が多くなることがわかったようです。
図5は熱分解性を調べて結果です。
400℃までは、シラノール基が縮合するなど、脱水によるもので、400~600℃はメチル基の脱離、分解によるもののようです。言い換えれば、処理温度が300℃までに設定されたのも、このあたりの事情と考えられます。
350℃における重量ロスは処理温度が100℃=-6.5%、200℃=-3.6%、300℃=-0.3%と処理温度が300℃になれば、重量ロスも大きく下がったようです。
表2は処理温度と接触角と比重の関係が示されています。処理温度が上がると接触角は上がり、疎水性が促進されたようです。比重は処理温度が100℃から200℃に上げると、下がりましたが、200℃から300℃に上げても横ばいだったようです。これは誘電率の測定結果と同じような傾向だったようです。
そして、Scheme2に示されているように、ジアルコキシシランとトリアルコキシシランを組み合わせて共重合体を合成したようです。ジアルコキシシランとトリアルコキシシランの比率はモル比でジ/トリ=1 / 2.5 or 5 or 7.5 or 10 or 12.5 or 15 としたようです。
結果が表3、図6、図7に出ています。Xの値が大きくなるほど(T3構造の割合が大きくなるほど)誘電率も誘電正接も下がる傾向にあったようです。
最後に共重合体の仕込み組成と比重の関係について調べ、結果が表4に出ています。T3の比率が大きくなるほど、比重は下がる傾向にあったようです。これは3次元のボイドが発生したためではないか?と考察しています。
所感です。
シルセスキオキサンは随分前からかなり研究されています。にもかかわらず、今回の研究例では、よくある非常にマニアックな構造でもなく、かなり基本的なところで誘電率と誘電正接について調べていました。今頃になっても、まだわかっていないこともあったのか?と意外でした。
もう20年近く前ですが、シルセスキオキサンの研究も行ったことがあります。当時は欠損のない、きれいなカゴ型構造を作って、純度を上げることも流行っていました。そんな中、実は構造的にはシルセスキオキサンではシリカにはなるのですが、コリンシリケートから非常に簡単にかご型構造を作る方法を知りました。その方法を応用して、新たなカゴ型化合物を作ったりしました。ただ、このコリンシリケートを出発点とする方法、途中で急激な温度上昇があり、量産化するには危険を伴う部分もありましたが、それも克服できる手法も見つけておりました。しかしながら、今は全てお蔵入り、忘れ去られた存在となっております。しかし、時代も変わりました。発掘して再検討すれば、再び日の目を見る日が来るかもしれません。
(新規樹脂材料の合成と光学用途への応用)
https://smooooth9-site-one.ssl-link.jp/banyokagakukenkyusho230710/uploads/blog/9/64ed54847019d9.pdf



