人生や作品に込めた思いを未来へつなぐ創作支援のプロ
鍋島岳
Mybestpro Interview
人生や作品に込めた思いを未来へつなぐ創作支援のプロ
鍋島岳
#chapter1
北海道札幌市で「蒔喜出版」を営む鍋島岳さんは、自叙伝や家族史、趣味の作品などを一冊の本にする自費出版サービス「結録(ゆいろく)」を展開。写真や手紙、自作の絵や短歌、詩などをまとめ、「生きた証し」として残すことができます。
「きっかけは、祖父が残した文章との出会いでした。生まれる前に亡くなった祖父について祖母や父に尋ねても、『酒好きだった』『商売をしていた』と断片的な情報ばかり。祖父を一人の人間として想像することはできませんでしたが、実家の片付けで見つけた日記やエッセーを読んだことで、日々の出来事や折々の心情が手に取るように分かりました」
鍋島さんは、血が通った生身の姿を感じ取った体験を通して、文章には物事の捉え方や考え方、喜怒哀楽など書き手の人となりが映し出されることを実感。読み手は心の機微や等身大の生き方に触れることで共感を覚え、失敗談や苦労話から教訓を得ることもできます。
「思い出のシーンをアルバムに収めることもできますが、それぞれにまつわるエピソードや抱いた気持ちなどは、時間とともに薄れていくこともあります。コメントを添えれば当時が鮮明によみがえり、色あせない記憶として未来へつなぐことができます」
一人一人の歴史を書き留め、子や孫へと読み継いでいける物語を描けば、存在を示すことができると確信。人生の軌跡を本に昇華する事業を立ち上げました。
「自分自身の生涯を振り返り、その時々の感情や思考などを描写したり、愛する人への感謝をつづったり。あなただけのストーリーは、ご家族にとってかけがえのない財産になります」
#chapter2
出版にあたり、鍋島さんは面談を実施。心掛けているのは、依頼者が「何を残したいのか」「読んだ人に、どう伝わってほしいのか」をひも解くことです。
「雑談する中で、歩んできた道のりや家族への思いを丁寧にくみ取ります。お客さまにとってはありふれた事柄や何気ない日常も、第三者の視点で価値を見いだせることがあります」
印象に残っているのが、「子育てをした20年間を本に記したい」という相談でした。当初は備忘録のような趣旨でしたが、何度も対話を重ねるうちに「何を伝えたいのか」が少しずつ輪郭を帯びてきました。
「お客さまの価値観や人生観を共有した上で、わが子を育てる過程で生じた葛藤、成長の喜びなど内面を掘り下げるため、小説仕立てにすることを提案しました。自叙伝が向いている人もいれば、エッセー、対談録が合う人もいます。その人の思いや目的に応じた表現を見つけることを大事にしています」
また、創作に励む人に向け「編集コンシェルジュ」も用意。企画や原稿の構成、校閲・校正、装丁などをサポートし「読まれる本」へ仕上げています。札幌の老舗文芸サークル「河の会」の同人誌では、印刷会社との調整や、誌面全体の品質管理も担当。細部まで妥協しない仕事ぶりが評価され、信頼を集めています。
鍋島さん自身も2021年からライター・小説家として活動。2023年に「蒔喜出版」を創業し、2024年に法人化。商業出版や作家として培った制作のノウハウを、自費出版や創作支援に生かしています。
#chapter3
「結録」では、ヒアリングからページ構成、編集、デザイン、製本まで一貫。必要な工程だけを依頼することができ、「書くのは苦手」という場合は口述した内容を代筆しています。
「経営者さまであれば、会社の周年パーティーに社史を間に合わせたい、個人さまであれば還暦のお祝いの席で親族に自分史を披露したいなど、スケジュールや部数について柔軟にご要望を伺います。従来の自費出版は高額になるケースもあり、二の足を踏んでいる方もいらっしゃるでしょう。当方は、予算の範囲内で希望をかなえる方法を一緒に考えるのが特徴です」
費用を理由に、人生の記録や作品を残すことを諦めてほしくないと、鍋島さんは依頼者に寄り添い、細やかにプランニング。自由に書き進める随筆や詩歌集、手描きのイラスト、デッサン、水彩画や油絵、撮りためたスナップなどを集約した画集や写真集も手掛けています。
また、高齢者の利用が多いことから、札幌市を中心に対面による打ち合わせを基本とし、状況に応じて出張やオンラインにも対応。個々のペースに伴走してじっくり話を聞き取っています。近年は、生前整理や終活、実家じまいの一環として取り組む人もいるそう。
「『何を手放すか』を考えるとともに、『何を未来へ引き継ぐか』を考える時間にもなり得ます。大切にしている信念や、伝えたいメッセージを言葉に表し、手から手へ世代を超えて受け渡せる形にして残すことも選択肢に加えていただき、ご自身の足跡を刻んでほしいですね」
(取材年月:2026年6月)
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Profile
人生や作品に込めた思いを未来へつなぐ創作支援のプロ
鍋島岳プロ
出版社、編集者
株式会社蒔喜出版
自叙伝や家族史、小説、作品集など幅広い出版に対応。対話を重ねながら「何を残したいのか」「誰に届けたいのか」を整理し、一人一人の思いや目的に合った一冊づくりを編集者の視点で支えます。
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