コンサルタントとは何が違う?社長の隣で汗をかく「もう一人の経理部長」という新しい選択
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「また最低賃金の引上げか…」
ニュース速報を見ながら、深くため息をついた社長も少なくないでしょう。「ただでさえ原材料費が高騰しているのに、これ以上どうすれば…」夜、静まり返った事務所で一人、資金繰りを案じ、眠れない夜を過ごす。その孤独な戦いに、私は心からの敬意を表します。
はじめまして。広島で中小企業の経営改善を支援しております、ワイズビズサポートナビ代表の檜和田知之と申します。27年間、様々な企業の経理部長として会社の数字と格闘してきた私には、社長のその孤独が痛いほどわかります。
しかし、この「賃上げ」という逆風は、見方を変えれば、会社の経営体質を根本から見直す絶好の機会、いわば「会社の健康診断」です。
ここでは、私が現場で培ってきた経験に基づき、会社の「現金」を守り、この難局を乗り越えるための具体的な「5つの処方箋」を、守りと攻めの両面からお話しします。
処方箋①【守り】:自社の「お金の健康状態」を正確に把握する
全ての基本は、自社の「本当の姿」を数字で知ることから始まります。いわゆる「どんぶり勘定」では、どこから手をつければ良いかすら分かりません。
まず見ていただきたいのは、会社の「健康診断書」である月次試算表と、「未来の天気図」である資金繰り表です。これらを読み解くことで、「先月は本当に儲かったのか?」「3ヶ月後、会社の現金はいくら残っているのか?」といった、経営の根幹が見えてきます。
現状を正確に把握できて初めて、聖域なきコスト削減に着手できます。通信費や保険料の見直しはもちろんですが、私が社長に問いかけたいのは「その会議、そのお付き合い、本当に会社の未来に繋がっていますか?」という領域です。会社の「血」である現金を、一滴でも多く守り抜く。まずはその決意から始めましょう。
処方箋②【守り】:国の支援制度を「賢く」活用する
国も、頑張る中小企業の味方です。その代表格が「業務改善助成金」です [cite: 165][cite_start]。これは、生産性を上げるための設備投資などを行い、従業員の賃金を引き上げた場合に、その費用の一部を国が助成してくれる制度です 。
ただし、申請すれば誰でも通るわけではありません。私の見解ですが、採択の鍵は「この投資によって我が社がどう成長し、利益を生み出し、従業員に還元していくのか」という一貫した成長ストーリーを、具体的な数字で示せるかどうかです。熱意を具体的な計画に翻訳する。そのお手伝いをするのが、我々専門家の役目です 。
処方箋③【攻め】:IT化で「社長の時間」を取り戻す
人手不足の時代、今いる人員でより多くを稼ぐ「生産性向上」は避けて通れません。特に、請求書作成や記帳といったバックオフィス業務は、IT化の宝庫です。
「パソコンは苦手で…」というお気持ちは分かります。しかし、クラウド会計ソフトなどを導入すれば、経理担当者を一人雇う数十分の一のコストで、24時間働く優秀なパートナーを手に入れるようなものです 。
社長の最も貴重な資源は「時間」です。ITに任せられる仕事は任せてしまい、そこで生まれた貴重な時間を、社長にしかできない「会社の未来を創る仕事」に使っていただきたいのです。
処方箋④【攻め】:「勇気ある価格交渉」の準備をする
「良いものを作っていれば、いつか分かってもらえる」
技術に誠実な社長ほど、価格交渉に苦手意識を持っています。しかし、その“価値”は、言葉にして伝えなければ伝わりません。
価格交渉の成功は、交渉の場に立つ前の「準備」で9割決まります。
1. 自社の提供価値を言語化する(他社にはない強みは何か?)
2. 客観的なデータを揃える(原材料費や最低賃金の上昇を示す資料)
3. 顧客への貢献度を数字で示す(例:「当社の部品で、御社の不良品率を〇%下げています」)
これは「お願い」ではなく、対等なパートナーとしての「交渉」です。自信を持って、自社の価値を正当に評価してもらうための第一歩を踏み出しましょう。
処方箋⑤【未来への投資】:「人」を育て、強い組織を創る
最後の処方箋は、会社の未来そのものである「人」への投資です。賃上げはもちろん重要ですが、それ以上に社員が見ているのは「この会社は、自分の頑張りを正当に評価してくれるか?」という点です。
頑張りが報われる「見える化された評価制度」は、社員のモチベーションを高め、離職率を下げます。そして、資格取得支援などの「人材育成」は、どんな最新設備にも勝る最高の投資です。社員のスキルアップは、会社の生産性向上に直接繋がります。賃上げを、未来への成長投資と捉え直す視点が不可欠です。
まとめ:社長、その戦いは一人ではありません
最低賃金の引上げは、厳しい経営課題です。しかし、これまでお話しした5つの処方箋、
1. 現状把握とコスト削減
2. 助成金の賢い活用
3. IT化による時間創出
4. 準備に基づいた価格交渉
5. 未来を見据えた人への投資
これらを一つでも実行に移せば、必ず道は拓けます。全てを一度に行う必要はありません。「これならできそうだ」と思うものから、ぜひ着手してみてください。
社長は孤独です。しかし、一人で戦う必要はありません。会社の数字と現場を深く理解し、社長の決断に寄り添い、時には「壁」となり、時には「通訳者」となるパートナーがいます。
会社の未来を本気で考えるその想いに、27年間の経験全てを懸けて伴走すること。それが、私、檜和田知之の使命です。



