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広島の中小企業が2025年までに生き残るための経営分析と3つの戦略的転換

檜和田知之

檜和田知之


広島の経営者の皆さん、こんにちは。長年にわたり地域経済を支え、技術や雇用を守ってこられた皆さんの日々の努力に、心から敬意を表します。

私は27年間、広島の企業の現場で経理・財務の実務を重ねてきました。その経験から、皆さんが日々直面している課題と可能性を共有し、2025年という転換期を乗り越えるための具体的な道筋をご提案したいと思います。

決して容易な道のりではありませんが、この記事を通じて一社でも多くの企業が未来に希望を見出し、次の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

広島県中小企業の現状と直面する三重苦


まずは現状を正確に把握することから始めましょう。課題を明確にすることで、具体的な解決策が見えてきます。

広島県中小企業の現状と直面する三重苦


まずは現状を正確に把握することから始めましょう。課題を明確にすることで、具体的な解決策が見えてきます。

データで見る広島の中小企業の経営環境

広島の製造業の皆さんの多くが「このままで大丈夫だろうか」と不安を感じておられることでしょう。その心配は決して杞憂ではありません。

最新の調査によると、広島県内製造業の70%が原材料費高騰を最大の経営課題と感じています。特に鉄鋼材料は前年比18.3%上昇、樹脂材料は22.1%上昇と、製造コストを大きく圧迫しています。

そして厳しい現実として、価格転嫁率はわずか42.3%に留まり、多くの企業が利益率の低下に悩んでいます。実際、製造業の平均営業利益率は2.8%と前年から0.7ポイント下落しました。

「うちだけではない」と思われるかもしれませんが、ここが踏ん張りどころです。この数字の裏には、価格転嫁に成功し、むしろ利益率を高めている企業も確かに存在しています。

人材面では、技術職を中心に深刻な人手不足が続いています。製造業の技術職の有効求人倍率は0.89倍と、人材確保が困難な状況です。さらに、55歳以上の従業員比率が34.7%に達し、ベテラン技術者の大量退職が目前に迫っています。

産業構造も大きく変わりつつあります。広島県の産業別GDP構成比を見ると、製造業が25.3%(前年比-1.2ポイント)と縮小する一方、情報通信業が7.1%(+0.8ポイント)と拡大。特に広島市では、デジタルヘルスケア市場が年間18.7%成長、IoTソリューション分野で23.4%成長するなど、新しい産業分野が急速に台頭しています。

中小企業が直面する3つの緊急課題

これらのデータから、広島の中小企業が直面する3つの緊急課題が見えてきます。

1. デジタル化の遅れによる競争力低下

県内中小企業のDX推進状況は「計画策定済み」が18%、「一部実施」が14%と全国平均を大きく下回っています。これは単なる数字の問題ではありません。

例えば、自動車部品メーカーB社では、20年以上使用してきた基幹システムの老朽化により、生産計画策定に要する時間が週15時間から22時間に増加。取引先からのEDI(電子データ交換)要求に対応できず、年間受注額を12%も減少させてしまいました。

皆さんの会社でも「うちはITに詳しい社員がいないから」と思われるかもしれません。しかし、この課題に早めに向き合った企業は着実に成果を上げています。金属加工業A社はクラウド型受発注システムを導入し、作業時間を40%削減、受注ミスを75%低減させました。

2. 収益構造の脆弱性
原材料費比率が製造業で58.7%(前年比+3.2ポイント)と上昇する中、価格転嫁交渉の成功率は42.3%に留まっています。これは、多くの企業がコスト増加分を販売価格に反映できていないことを意味します。

また、設備投資の停滞も懸念されます。減価償却費対有形固定資産比率が8.2%と過去10年で最低水準となり、生産性向上投資が先送りされています。この状況が続けば、競争力の低下は避けられません。

3. 事業承継と技術伝承の危機

2025年時点での後継者不在率は63.5%に達し、全国平均(58.2%)を5.3ポイント上回ります。製造業に限れば、この数値は71.2%まで跳ね上がります。10年以内に廃業リスクを抱える企業が県内に3,200社存在すると推計されています。

特に切削加工技術を有する企業では、技術承継が完了している割合が38%に留まり、長年培ってきた技術やノウハウの喪失が危惧されます。

この状況は厳しいものですが、悲観する必要はありません。次に、これらの課題を乗り越えるための具体的な戦略をご紹介します。

生き残りのための3つの戦略的転換

厳しい現状を乗り越え、2025年以降も成長を続けるためには、戦略的な転換が不可欠です。ここでは、広島の中小企業が実践すべき3つの戦略をご紹介します。どれも「うちには無理」と思われるかもしれませんが、同じ広島の中小企業が既に成果を上げている実例です。



デジタル・フィジカル融合によるビジネス変革

デジタル化は「大企業のもの」と思われがちですが、実は中小企業こそ、早期に取り組むメリットが大きいのです。

まず、無理なく進めるための段階的なDX推進ロードマップをご提案します:

フェーズ1(2025年3-8月):デジタル基盤構築
まずは日々の業務効率化から始めましょう。紙の書類や手作業による二重入力をなくすだけでも、大きな効果があります。

- 電子帳簿保存法対応のクラウド会計導入
- 基幹業務(生産管理・在庫管理)のクラウド移行
- 社内コミュニケーションツールの標準化

「でも費用がかかるのでは?」と心配される方も多いでしょう。そこで活用したいのが各種補助金です。

2025年度は「ものづくり補助金」(最大2,000万円)や「IT導入補助金」(上限450万円)など、デジタル化を支援する制度が充実しています。

成功事例として、精密機械メーカーC社の例をご紹介します。C社は500万円の補助金を活用してAI外観検査機を導入。不良品率を0.8%から0.2%に低減しました。導入当初は社員からの抵抗もありましたが、「検査作業の精神的負担が減った」「より創造的な業務に時間を使えるようになった」と、今では前向きな声が多く聞かれるようになりました。

フェーズ2(2025年9-2026年3月):データ活用深化
基盤が整ったら、次はデータを活用した経営判断の高度化です。

- IoTセンサーによる生産工程の可視化
- AI需要予測モデルの導入(在庫回転率20%改善を目指す)
- デジタルマーケティングによる顧客理解の深化

「うちにはITの専門家がいない」という声もよく聞きます。しかし、現在のクラウドサービスは専門知識がなくても使いやすく設計されています。また、広島県IT人材育成センターでは、実務に即したトレーニングプログラムも提供されています。

人的資本の再定義と次世代人材育成

デジタル技術だけでは企業は成長しません。最も重要な資産は「人」です。しかし、その育成方法は大きく変わりつつあります。

デジタルスキル評価制度の導入

まずは社員のデジタルスキルを「見える化」しましょう。食品加工業E社では、従業員のデジタルスキルマップを作成し、不足スキルを対象に年間40時間の研修を実施しました。その結果、システム操作エラーが65%減少し、業務効率が大幅に向上しています。

E社の社長は「最初は『またムダな勉強か』と反発もありましたが、実際に業務が楽になると社員から『次は何を学べばいいですか』と前向きな質問が増えました」と語っています。

技術伝承の新手法

ベテラン技術者の退職が迫る中、効果的な技術伝承は喫緊の課題です。

造船関連企業D社では、3Dスキャン技術を活用した技術伝承システムを構築しました。熟練工の動作をデジタル記録し、AIで分析することで、若手従業員の習得期間を従来の3年から1.8年に短縮。生産効率を15%向上させただけでなく、「最新技術を取り入れる先進的な会社」という評判が広がり、人材確保の競争力強化にもつながっています。

収益構造の多角化とレジリエンス強化

不確実性の高い時代には、一本足の経営ではリスクが高すぎます。収益構造の多角化で経営のレジリエンス(回復力)を高めましょう。

コスト構造改革の具体策
原材料費高騰に対抗するために、広島県西部の金属加工企業20社は共同購買コンソーシアムを組成。鋼材の一括購入により単価を12%削減することに成功しました。

また、プラスチック成型工場F社は廃材を3Dプリントフィラメントに転用し、廃棄物処理コストの削減と新規収益源の創出を同時に実現しています。F社の担当者は「最初は『そんなことできるの?』と半信半疑だったが、試してみたら意外とうまくいった。環境にも良いし、お客様からの評価も高い」と語っています。

付加価値向上戦略
価格競争から抜け出すために、付加価値の向上も重要です。ある金属加工企業は独自開発の耐腐食コーティング技術で単価を15%アップさせました。また、機械メーカーではメンテナンス契約収入比率を32%に拡大し、安定収入源を確保しています。

「我々のような小さな会社に何ができるのか」と思われるかもしれませんが、地域に密着した強みを活かした取り組みが成功のカギです。小さな一歩から始めてみましょう。

即実践可能な行動計画と期待される効果


理論はわかったけれど、「具体的に何から始めればいいのか」という声が聞こえてきそうです。そこで、今日から90日以内に着手できる具体的なアクションプランをご提案します。



90日以内に着手すべき具体的アクション


1. デジタル成熟度診断の実施
まず自社の現状を客観的に把握することから始めましょう。「何がわかっていないのかがわからない」という状態では、効果的な対策を講じることはできません。

広島県中小企業支援センターでは無料のデジタル成熟度診断を提供しています。わずか30分程度の質問に答えるだけで、自社のデジタル化レベルが明確になり、優先して取り組むべき課題が見えてきます。

「診断を受けたけれど、その後どうすればいいのかわからない」というお悩みにも対応できるよう、診断後のフォローアップ相談も無料で受け付けています。まずは診断を受けることから始めてみませんか?

2. 補助金申請の準備
「補助金は難しそう」「書類作成が面倒」と二の足を踏んでおられる方も多いでしょう。しかし、例えばIT導入補助金の申請書は数年前に比べてかなり簡素化されています。

成功のポイントは早めの準備です。公募開始後に慌てて書類を作成するのではなく、今のうちから必要書類の洗い出しや、自社の課題・目標の整理を始めておきましょう。

広島県よろず支援拠点では、補助金申請書のブラッシュアップも無料で実施しています。「書き方がわからない」という方も、まずは相談してみることをお勧めします。相談者の中には「思ったより簡単だった」という声も多く聞かれます。

3. 人材育成計画の立案
「研修に出す余裕がない」「研修してもすぐ辞めてしまうのでは」といった不安の声をよく耳にします。しかし、人材育成は待ったなしの課題です。

まずは小さな一歩から。社内で「デジタル化推進リーダー」を1名選出し、外部研修に参加してもらいましょう。その後、その社員が社内の「伝道師」となって、徐々に知識を広げていく方法が効果的です。

広島県IT人材育成センターでは、1日単位の短期研修から、3ヶ月間の実践的プログラムまで、様々なコースを提供しています。まずは情報収集から始めてみましょう。

H3: 1年後の達成目標と数値化された効果


具体的な目標を設定することで、取り組みの効果を測定できます。以下に、業種別の参考目標値を示します。これらは広島県内の実際の企業が達成した数値を基にしています。

製造業の場合:
- 生産計画策定時間:30%削減
- 受注から納品までのリードタイム:20%短縮
- 資材在庫回転率:25%向上
- 経理業務工数:40%削減

小売・サービス業の場合:
- 顧客データ分析による既存客リピート率:15%向上
- 在庫切れによる機会損失:60%削減
- モバイル決済導入による会計時間:75%短縮
- SNSマーケティングによる新規顧客獲得:月間10件増

「うちの会社には無理だ」と思われるかもしれませんが、これらの数字は同じ広島の、同じような規模の企業が実際に達成した成果です。可能性を信じて一歩を踏み出してみませんか。

広島県の支援制度を最大限活用するための戦略

広島県には、中小企業支援のための制度が数多く用意されています。しかし、「どの制度を使えばいいのかわからない」という声も多く聞かれます。

経営革新計画の活用と成功要因
経営革新計画は、新たな取り組みを行う中小企業を支援する制度です。この計画が承認されると、補助金や融資の優遇措置を受けられるだけでなく、計画策定のプロセス自体が自社の強みや課題を整理する良い機会となります。

令和3年2月に承認された12件の革新計画の追跡調査では、売上高成長率が平均18.7%(県平均3.2%)、雇用創出数が計画比123%と高い成果が出ています。

成功の秘訣は、「明確なKPI設定」「大学・研究機関との連携」「複数の支援制度の組み合わせ活用」の3点です。特に、広島大学や県立総合技術研究所などの専門機関との連携は、技術的課題の解決に大きな効果をもたらしています。

地域金融機関との効果的な連携
資金調達も重要な課題です。広島県内の地域金融機関は、単なる融資だけでなく、経営支援も積極的に行っています。

広島県信用保証協会のデータによれば、デジタル化関連保証枠は前年比35%増と拡大しています。また、経営改善計画策定支援として、無料コンサルティングを200時間提供するなどの取り組みも行われています。

金融機関との関係構築のポイントは、「困った時だけ相談する」のではなく、定期的なコミュニケーションを取ることです。四半期に一度は、自社の状況や今後の計画について情報共有することをお勧めします。

このような取り組みを通じて、広島の中小企業が2025年の変革期を乗り越え、さらなる成長を実現できることを願っています。

まとめ:変革に成功した企業の共通点と今後の展望

厳しい経営環境の中でも、着実に成長を続ける広島の中小企業があります。そうした企業に共通する特徴を、最後にご紹介します。

成功企業に共通する3つの取り組み


1. 「小さく始めて大きく育てる」アプローチ
変革に成功している企業に共通するのは、一足飛びに大規模な改革を目指すのではなく、小さな一歩から始めている点です。

例えば、呉市の金属加工業G社では、まず受発注管理だけをデジタル化し、効果を実感した後に、在庫管理、生産管理へと段階的に範囲を広げていきました。社長は「最初から全部やろうとすると、社員の反発も大きいし、失敗したときのリスクも高い。小さく始めて成功体験を積み重ねることで、変化への抵抗感が薄れていきました」と語っています。

皆さんも、まずは自社の業務の中で、「最も面倒」「最も時間がかかる」部分から着手してみることをお勧めします。小さな成功が次の一歩を踏み出す勇気につながります。

2. 「社員を巻き込む」文化づくり

どんなに優れたシステムでも、現場の社員が使いこなせなければ宝の持ち腐れです。成功企業では、社員を単なる「使い手」ではなく「共創者」として位置づけています。

広島市の食品製造業H社では、システム導入前に現場社員を交えた「改善ワークショップ」を開催。「どんな機能があったら仕事が楽になるか」を徹底的に議論しました。これにより、実際の業務に即したシステム設計が可能になり、導入後の定着率も大幅に向上しました。

「うちはITに詳しい社員がいない」と思われるかもしれませんが、ITの知識よりも大切なのは現場の業務知識です。ベテラン社員の経験を活かした改善提案が、実は最も効果的なデジタル化につながることも少なくありません。

3. 「継続的な学習」を組織文化に
成功企業の経営者は口を揃えて「学び続けることの重要性」を語ります。広島県中小企業家同友会の調査によれば、業績が向上している企業の86%が「経営者自身が定期的に勉強会や研修に参加している」と回答しています。

東広島市の製造業I社では、月に一度の「学びの日」を設定。業務時間中に全社員が新しい知識やスキルを学ぶ時間を確保しています。「短期的には生産性が落ちるようにも見えるが、長期的にはこの投資が会社の競争力を高めている」と社長は確信しています。

学びの機会は社内だけではありません。広島県内には経営者同士が学び合うコミュニティも数多く存在します。同業種の悩みを共有することで、自社だけでは気づかなかった解決策が見つかることも少なくありません。

2030年に向けた長期的視点

私たちの分析によれば、これらの取り組みを着実に実行する企業は、2030年までに営業利益率5%以上、自己資本比率40%超の健全経営を実現できると予測しています。

特に、2025年から2030年にかけては「デジタルとフィジカルの融合」が進み、工場の生産性向上だけでなく、新たなビジネスモデルの創出も可能になるでしょう。例えば、製品販売だけでなく、センサーデータを活用したメンテナンスサービスの提供など、ストック型ビジネスへの転換が進むと考えられます。

ただし、このような変革は一朝一夕に実現するものではありません。今から準備を始め、着実に一歩ずつ前進していくことが重要です。

中小企業経営者へのメッセージ


最後に、皆さんへのメッセージをお伝えします。

広島の中小企業は、常に困難に直面しながらも、それを乗り越えてきた歴史があります。戦後の復興期、バブル崩壊後の不況期、リーマンショック、そして新型コロナウイルスの影響…。その度に、創意工夫と不屈の精神で困難を乗り越えてきました。

2025年の変革期も、決して例外ではありません。むしろ、新たな成長のチャンスと捉えることができるのではないでしょうか。

デジタル化は目的ではなく手段です。大切なのは、皆さんがこれまで大切にしてきた「お客様への価値提供」「従業員との信頼関係」「地域社会への貢献」といった理念を、新しい時代にふさわしい形で実現していくことです。

私も一人の広島県民として、皆さんの挑戦を心から応援しています。ぜひ一緒に、広島の未来を明るく照らしていきましょう。

明日からの一歩が、皆さんの会社の未来を変えます。今日お伝えした内容が、その一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

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檜和田知之(デジタル経営アドバイザー)

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税理士の数字言語と経営者の現場言語を翻訳し、IT苦手でも安心の伴走型サポート。経理業務を63%削減し本業集中の時間を創出。広島・呉の中小企業に特化した実践的な経営改善を実現します。

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