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[広島企業の岐路]GXが変える取引構造|27年の実務経験が導く経営判断の視点

檜和田知之

檜和田知之

テーマ:GX

はじめに


2015年に採択されたパリ協定――世界の平均気温上昇を1.5度に抑えるこの国際的な約束が、いま広島の中小企業の経営環境を大きく変えようとしています。

なぜ地球温暖化対策が、一つの町工場や、地方の製造業の経営課題となるのか。

その答えは、ここ2-3年で急速に変化した企業間取引の仕組みにあります。大手メーカーは、自社製品のライフサイクル全体でのCO2排出量削減を求められています。その約8割は、部品製造や輸送など、取引先が排出する分です。そのため、サプライチェーン全体での削減が必須となり、取引先の選別基準として環境対応力が重視され始めています。

実際、広島県内でも「取引継続の条件として具体的な削減目標を求められている」「環境対応が遅れると新規案件から外される」といった声が増えています。

27年間の実務を経験しながら、多くの中小企業の経営改善に携わってきた私の目に映るのは、GXという言葉の向こうで、確実に進む取引構造の変化です。これは単なる環境対策ではなく、企業の存続と成長に関わる経営課題となっています。

1. GXがもたらす経営環境の変化


サプライチェーン全体での変革


2020年以降、特に自動車・電機業界を中心に、取引構造が大きく変化しています。従来の品質(Q)、コスト(C)、納期(D)に加え、環境対応力が重要な評価基準となってきました。

  • 取引先に対するCO2排出量の開示要請
  • 環境負荷低減に向けた数値目標の設定要求
  • 再生可能エネルギーの利用率向上といった要請が、取引継続の条件として示されるようになっています。


金融機関の融資姿勢の変化


さらに注目すべきは、金融機関の変化です。広島県内の地域金融機関でも、融資における環境問題の重点が始まっています。従来型の指標だけでなく、環境対応への課題も資金調達の重要性な判断材料となりつつあります。

はい、承知しました。環境対応が新たなビジネスチャンスとなる観点から続けます:

2. 環境対応が生む新たな事業機会


取引拡大のチャンス


広島県内の製造業で、すでに変化の兆しが見え始めています。例えば、呉市の自動車部品メーカー(従業員40名規模)では、環境対応を強化したことで次のような効果が表れています:

  • 既存取引先からの受注増加(前年比120%)
  • 新規取引先の開拓(2社から引き合い)
  • 海外取引の機会創出(欧州企業との商談進行中)


コスト削減との両立


「環境対応は負担増」という声もよく聞きます。しかし実際には、環境対応とコスト削減は両立可能です。

ある金属加工業(従業員25名規模)では、以下の取り組みで収益改善を実現しました:

  • 製造工程の見直しによる電力使用量の削減(年間約240万円の削減)
  • 材料ロスの低減による原価低減(年間約180万円の効果)
  • 工場内照明のLED化(投資回収期間1.5年)


はい、具体的な取り組み方とポイントを解説していきます:

3. 成功企業に見る具体的なアプローチ法


段階的な取り組みの重要性


環境対応を成功させている広島県内の企業に共通するのは、「急がば回れ」の考え方です。私が支援してきた企業の成功パターンは、次の3段階で進めています:

ステップ1:現状把握(2-3ヶ月)


エネルギー使用量の可視化
- CO2排出量の算定
- 環境対応における課題の洗い出し

具体例:広島市の製造業A社では、まず製造ラインごとの電力使用量を計測。「何時に」「どの工程で」「どれくらい」電力を使用しているかを把握し、削減余地を特定しました。

ステップ2:取り組みやすい施策の実施(3-6ヶ月)


  • 照明・空調の運用改善
  • 製造工程での無駄の削減
  • 社内の意識改革


実例:呉市の部品メーカーB社では、まず空調の温度設定の見直しや不要照明の消灯から着手。社員の意識が変わり始めたところで、製造工程の改善提案を募るようにしました。

ステップ3:本格的な投資と体制づくり(6ヶ月-1年)


  • 設備の省エネ化投資
  • 再生可能エネルギーの導入検討
  • 環境マネジメントシステムの構築



実例:東広島市の機械部品メーカーC社では、まず工場の屋根を高反射塗料に塗り替え(投資額350万円)、空調負荷を15%削減。その効果を確認した後、太陽光発電の導入(投資額2,800万円)を決断しました。補助金活用で実質負担を抑えながら、年間の電力コストを40%削減することに成功しています。

投資判断のポイント


私の経験から、以下の3つが重要な判断基準となっています:

1. 投資回収期間の設定

※補助金活用を前提とした目安

2. 段階的な投資計画

  • 第1期:即効性のある施策(1年以内)
  • 第2期:設備改善(2-3年計画)
  • 第3期:大型投資(3-5年計画)


4. 活用できる支援制度と広島県内での活用事例


最新のサポート制度

令和7年1月10日に事業再構築補助金の新しい公募が開始され、特に環境対応やデジタル化への支援が強化されています。こういった支援制度を活用することで、企業の経営改善と環境対応の両立が可能となります。

広島県内での具体的な活用事例




1. 製造業での成功例(従業員20名規模)
- 経理のデジタル化による業務効率改善
- 月次決算期間を7日から2日に短縮
- エネルギーデータのリアルタイム把握で省エネ実現
- 原価管理の精度向上により収益性も改善

2. 水産加工業での活用例(従業員15名規模)
- クラウドシステムによる在庫・生産管理の効率化
- 省エネ型設備の導入で光熱費削減
- 各種支援制度を組み合わせてコスト負担を最小化

このように、広島県内の企業では、業務効率化と環境対応を組み合わせた取り組みが進んでいます。

3. 小売業での活用事例(従業員10名規模)
* POSシステムとの連携による在庫管理の自動化を実現
* 顧客データの分析により、商品構成の最適化を達成
* デジタルサイネージ導入で広告宣伝費を30%削減
* キャッシュレス決済の導入により会計処理時間を短縮

4. 運送業での導入例(従業員25名規模)
* 配送ルート最適化システムにより燃料費を20%削減
* 車両稼働状況のリアルタイム把握で配車効率を向上
* 点検・整備記録のデジタル化で車両管理工数を50%削減
* ドライバーの労務管理もデジタル化し、残業時間を削減

5. 建設業での実践例(従業員30名規模)
* 工事写真や施工記録のクラウド管理による書類作成の効率化
* 3次元測量技術の導入で測量時間を従来の1/3に短縮
* 建設機械の稼働データ分析による燃料費の削減
* 作業員の安全管理にIoTセンサーを活用し、事故リスクを低減

これらの事例に共通する特徴として以下が挙げられます:

1. デジタル化による業務効率化と環境対応を同時に実現
2. 補助金や支援制度を活用し、初期投資負担を軽減
3. 従業員の作業負担軽減と安全性向上も考慮
4. 段階的な導入により、円滑な移行を実現

広島県では、これらの成功事例を参考に、さらなるデジタル化と環境対応の推進を支援しています。特に、中小企業向けの相談窓口を設置し、個々の企業の状況に応じた最適な導入方法の提案を行っています。



5.今後の展望


私は、環境対応は、もはや企業にとってコストではなく、持続可能な成長に向けた重要な投資と考えています。GXへの取り組みは、省エネによるコスト削減だけでなく、取引拡大や新規事業創出など、様々なビジネスチャンスをもたらします。



特に中小企業間の連携により、個社では難しい取り組みも実現可能です。例えば、太陽光発電の余剰電力の融通や、環境配慮型の部材の共同調達など、地域企業の協業による新たな価値創造が期待されます。

私たちは今、次世代に向けた大きな産業構造の転換期にあります。この変革を、広島県の産業競争力を高める機会として捉え、官民一体となってGXを推進し、持続可能な社会の実現に向けて、共に歩みを進めていきましょう。

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専門家

檜和田知之(デジタル経営アドバイザー)

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税理士の数字言語と経営者の現場言語を翻訳し、IT苦手でも安心の伴走型サポート。経理業務を63%削減し本業集中の時間を創出。広島・呉の中小企業に特化した実践的な経営改善を実現します。

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