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【実例で解説】広島発!年末年始商戦で売上133%を達成した地域密着型店舗の戦略とは 〜物価高・消費者行動の変化に対応した、すぐに使える販促術〜

檜和田知之

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テーマ:小売業

1.2024年末商戦の特徴と環境変化



小売業_1

2024年の年末商戦は、物価高の影響を受けながらも新たな消費傾向が見え始めています。特に広島市では、デジタルとリアルの両面で消費者の購買行動が大きく変化しており、小売店にとって重要な転換期を迎えています。

消費者動向の変化


2024年の消費動向調査によると、消費者の購買行動に明確な変化が表れています。総購入金額は前年比101.0%と微増している一方で、一人あたりの購入数量は前年比97.9%に減少しました。この数字が示すように、消費者はより慎重に商品を選択し、価価値のあるものを厳選して購入する傾向が強まっています。

特筆すべきは、食料品や日用品における実店舗での購入比率が約9割を維持していることです。この結果は、消費者が価格だけでなく、商品の品質や鮮度を実際に確認したいというニーズを持っていることを示しています。

広島市特有の市場環境


広島市の小売業年間商品販売額は約1.4兆円に達し、県全体の約45%を占めています。この数字は、広島市が県内の商業の中心として重要な役割を果たしていることを表しています。

特に中区は買回品・最寄品ともに高い集客力を維持しており、地域の商業の中心地としての地位を確立しています。消費者の間では、オンラインとオフラインの使い分けが進んでおり、商品カテゴリーや価格帯によって購入チャネルを選択する傾向が顕著になってきています。

2. 地域密着型店舗が直面する課題


地域密着型の小売店は、大型商業施設との競争やデジタル化への対応など、複数の課題に直面しています。しかし、これらの課題は適切な戦略によって、むしろ差別化のチャンスとなり得ます。

大型商業施設との競争


広島パルコ、そごう広島店、アルパークなどの大型商業施設は、豊富な品揃えと大規模なプロモーションで集客を図っています。しかし、地域密着型店舗には、きめ細かなサービスや地域ニーズへの迅速な対応という強みがあります。
例えば、中区の老舗小売店では、商圏内の顧客の好みや購買パターンを詳細に把握し、それに応じた品揃えとサービスを提供することで、大型店にはない価値を創出しています。

消費者の購買行動変化


コストパフォーマンスを重視する傾向が強まる中、消費者はオンラインで価格比較を行いながら、商品の価値を慎重に見極めるようになっています。この変化に対応するため、地域密着型店舗には、価格以外の価値提供が求められています。

3. 成功事例①:デジタル技術を活用した顧客接点の強化



小売業_2

広島市内の地域密着型店舗の中で、デジタル技術を効果的に活用し、売上を大きく伸ばした事例を紹介します。

八丁堀の老舗衣料品店「ハナヤ」の取り組み


創業70年を誇るハナヤは、従来の丁寧な接客の良さを活かしながら、デジタル技術を効果的に取り入れることで、新規顧客の獲得に成功しました。特に、30-40代の働く女性をターゲットにした施策が功を奏し、年末商戦期の売上を前年比133%まで伸ばしています。

具体的な施策として、以下の取り組みを段階的に導入しました:

LINEミニアプリの活用(投資コスト:約50万円)

  • 商品在庫のリアルタイム確認機能
  • 来店予約システム
  • パーソナライズされたお買い得情報配信


成功のポイント


同店の取り組みが成功した最大の要因は、デジタル技術の導入が顧客の実際のニーズに基づいていたことです。来店前に在庫状況を確認したいという顧客の声に応え、LINEミニアプリを開発。さらに、接客予約機能を追加することで、限られたスタッフでも質の高いサービスを提供できる体制を整えました。

4. 成功事例②:地域資源を活用したオリジナル商品開発


横川商店街の食品専門店「ヤマサキ」の挑戦


創業100年を超えるヤマサキは、広島の特産品を活用した商品開発で差別化を図り、独自のポジションを確立しました。

5. デジタルとリアルの融合によるプロモーション戦略


具体的な施策
地元生産者との協力体制を構築し、以下の取り組みを実施

  • 広島レモンを使用したオリジナルスイーツの開発
  • 地元契約農家との連携による季節限定商品の展開
  • 商品開発ストーリーのSNS発信


データに基づく商品開発


POSデータと顧客アンケートを組み合わせた分析により、客層ごとの需要を把握。特に、年末年始の帰省客をターゲットにした商品展開が好評を博しました。

実績として:

  • オリジナル商品の売上:前年比156%増
  • SNSフォロワー数:2,000人から5,000人に増加
  • 平均客単価:2,800円から3,900円に上昇


5. デジタルとリアルの融合によるプロモーション戦略


紙屋町の和菓子店「川本家」では、140年続く伝統の技と最新のデジタル技術を組み合わせることで、新たな顧客層の開拓に成功しています。

SNSを活用した伝統の見える化


職人の技や商品ができるまでのプロセスを積極的にInstagramで発信することで、若い世代の興味を引くことに成功。「#川本家の職人技」というハッシュタグは1万件以上の投稿を集めています。

オンラインコミュニティの形成


具体的な実績:

Instagram フォロワー数:2,000人→8,500人(6ヶ月で増加)
20-30代の顧客比率:15%→35%に上昇
商品の写真映えを意識した新商品の売上:前年比180%

オンラインコミュニティの形成


LINEの公式アカウントを活用し、以下の取り組みを実施:

  • 新商品の開発過程の動画配信
  • 季節の和菓子づくりのライブ配信
  • お客様との双方向コミュニケーション


6. 年末年始特有の販促戦略


広島市中心部の「エスポア」では、年末年始の商戦期に特化した独自の販促戦略を展開し、大きな成果を上げています。

広島限定の福袋戦略


・地元の人気店とのコラボレーション福袋

実績データ

 

  • オタフクソース×エスポア特製調味料セット
  •  宮島土産×エスポアオリジナル雑貨[/箇条書き
  • ・予約制度の改革
  •  [箇条書き]LINEでの事前予約システム導入
  •  予約特典として限定商品の先行販売権付与


実績データ

  • 福袋の事前予約率:前年比156%
  • 平均客単価:4,200円→5,800円に上昇
  • 新規会員登録数:前年の3倍


7. コスト管理と投資効果

これらの施策を実施するにあたり、各店舗の投資額と回収期間を具体的に見ていきましょう。

デジタル投資の内訳(川本家の例)

  • LINEミニアプリ開発:45万円
  • SNS運用支援ツール:月額2.5万円
  • 写真撮影機材:15万円
  • デジタルサイネージ:28万円


投資回収の実績

  • 売上増加額:月平均85万円
  • 経費削減効果:月約12万円(チラシ印刷費等の削減)
  • 投資回収期間:約4ヶ月


8. 今後の展望と提言


2025年に向けた消費トレンドの変化



小売業_3

広島市の小売業界は、さらなる変革期を迎えようとしています。広島商工会議所の調査によると、以下のような傾向が予測されています。

  • キャッシュレス決済比率:現在の65%から80%以上へ
  • EC利用率:実店舗との併用が全体の75%に
  • 環境配慮型商品への関心:特に20-40代で高まる傾向


成功店舗から学ぶ重要ポイント


これまでの成功事例から、以下の3つが重要なポイントとして浮かび上がってきます。

1.デジタル投資は段階的に:広島三越のデジタル化担当・山田氏は「投資は必ず効果測定可能な形で、段階的に行うことが重要」と指摘します。同店では、まずLINE公式アカウントの整備から始め、徐々にシステムを拡充していった結果、投資効率を最大化することに成功しています。

2.地域特性の活用:八丁堀商店街振興組合の田中理事長は、「広島の特性を活かした商品開発が、大手にはない強みになる」と語ります。実際、地域に根差した商品開発を行った店舗の多くが、高い成果を上げています。

3.人材育成の重要性:福屋の人材開発部長・佐藤氏は「デジタルツールの導入以上に、それを使いこなす人材の育成が重要」と強調します。同社では年間予算の15%を人材育成に充てています。

具体的なアクションプラン


短期的な取り組み(3カ月以内)
スタッフのデジタルリテラシー研修[/箇条書き]
短期的な取り組み(3ヶ月以内)

  • デジタル活用度の診断実施
  • SNS運用ガイドラインの整備
  • スタッフのデジタルリテラシー研修


中期的な取り組み(6ヶ月〜1年)

  • 顧客データベースの整備
  • オムニチャネル体制の構築
  • 地域企業とのコラボレーション強化


9. まとめ:成功への道筋


広島市の小売業における成功の鍵は、「デジタル技術の活用」と「地域に根差した独自性」の両立にあります。前出の各店舗の成功事例が示すように、必要な投資を適切に行いながら、地域特性を活かした展開を進めることで、大手との差別化が可能となります。

ヤマサキの新井社長は、次のように締めくくっています:
「デジタル化は目的ではなく手段です。大切なのは、お客様との関係をより深めること。その手段としてデジタルを活用する。この視点を忘れなければ、必ず成功への道は開けると確信しています」

この言葉は、まさに広島の小売業が目指すべき方向性を示していると言えるでしょう。

【参考文献・資料】

  • 令和5年度 広島市商業統計調査報告
  • 広島商工会議所「2024年度 地域小売業実態調査」
  • 広島市商店街振興組合連合会「商店街実態調査報告書」
  • 中国経済産業局「地域小売業のデジタル化実態調査」
  • 広島県商工労働局「県内小売業経営動向調査」


【統計データ出典】

  • 経済産業省「商業動態統計調査」
  • 総務省「家計調査(広島市)」
  • 日本銀行広島支店「地域経済報告」

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檜和田知之
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檜和田知之(デジタル経営アドバイザー)

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27年間の経理・財務の実務経験で、経営者の視点に立って業務効率化を支援。クラウド会計やAIツールの導入支援で、コスト削減から収益改善までワンストップでサポートします。

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