一次相続で安心しすぎると 起きてしまう落とし穴とは
柔軟で安心できる資産管理 民事信託の基礎知識
民事信託は、本人の判断能力が十分なうちに、信頼できる家族や親族に財産の管理や運用、処分する責任を任せる制度です。この仕組みは、信託財産となる財産を提供する「委託者」、非営利目的でその財産を管理・運用・処分する「受託者」、その財産から生じた利益を受け取る「受益者」の三者で構成され、形式的には、信託財産の所有名
義を受託者に移すことが特徴です。
たとえば、親が所有する不動産の管理を子どもに任せて、賃料収入を親が受け取るという契約も可能です。民事信託の特徴は、生前には効力が生じない「遺言」や、財産管理に制約がある「成年後見制度」とは異なり、契約によって生前に柔軟な設計が可能なことです。一方、商事信託は、信託銀行などが受託者となり、営利目的で行われま
す。身近に頼れる家族がいない場合など、収益性のある不動産の管理や運用を信託銀行などに任せることで、面倒な資産管理の負担を軽減できます。
相続・認知症対策に有効 民事信託を活用するポイント
民事信託には、次のようなメリットがあります。
①本人の判断力が低下しても家族などが財産管理できるため、認知症対策として有効、②障がいにより財産管理が困難な子どもを支援する仕組みとして利用できる、③受託者が亡くなった後の財産の承継先を指定できるため、二次相続対策として有効、④事業承継において、経営者が自社株を信託することで、財産権と経営権を分離し、円滑な承継を可能にする、などです。
ただし、信託財産の種類や、受託者と受益者の設定を誤ると、思わぬ課税やトラブルが発生する可能性もあるため、慎重な設計が必要です。
民事信託は、「元気なうちにできる相続・財産管理対策」として非常に有効な方法です。家族の将来を見据えて、早めに準備を進めておくことが
重要です。民事信託を行う際は、制度の仕組みや注意点を十分に理解したうえで、信頼できる家族や専門家と協力して最適な設計を行いましょう。



