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一次相続で安心しすぎると 起きてしまう落とし穴とは

渡邉一史

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配偶者が全財産を相続すると 二次相続の税負担はどうなる?
両親がいる場合、両親のどちらかが亡くなったときの相続が一次相続、そして残されたもう一人の親が亡くなったときの相続を二次相続と呼びます。一次相続では、配偶者に対する税額軽減の優遇措置が適用され、配偶者の相続した財産が、配偶者の法定相続分相当額または1億6,000万円のどちらか多い金額までは相続税はかかりません。
このため、一次相続で配偶者が全財産を相続しても「税額ゼロ」になる例も多くあります。
しかし、一次相続で配偶者が全財産を相続した場合、二次相続でその財産を子どもが相続する際に相続税の負担が重くなる可能性があります。理由は次のとおりです。
①一次相続時より法定相続人の数が減り、相続税の基礎控除額が少なくなる、
②配偶者自身の財産も相続財産に加算されるため、課税対象額が増加する、
③子どもが相続した場合は小規模宅地等の特例の適用要件が厳しいため、課税対象額を軽減することが困難となる、などの理由があります。
そこで、一次相続時に財産の一部を子どもに相続させることで、相続税の総額を抑えられる可能性があります。たとえば両親と子どもの3人家族で、父の死後に遺産1億円を母がすべて相続すると一次相続の相続税はゼロですが、母の死後に子どもがその全額を相続したときには、二次相続で1,220万円の相続税が課されます。一方、一次相続時に遺産のうち1,000万円を子どもに相続させていれば、一次相続では77万円の相続税が課されますが、二次相続での遺産9,000万円に対する相続税は920万円となり、一次・二次相続の相続税の総額を223万円抑えることができます。

一次・二次をセットで考える 今からできる対策のすすめ
相続税対策では、二次相続まで考慮することが重要です。一次相続で、相続税がかからない「安心」に留まらず、相続人を「分散」させることも検討しましょう。子どもにも財産の一部を相続させることで、税負担軽減の効果が期待できます。
特に、値上がりが予測される財産は、子どもに相続させる方が有利です。
また、生命保険、暦年贈与や相続時精算課税制度の非課税枠を活用して、相続税の課税対象となる財産を減らす方法も有効です。一次相続と二次相続が10年以内に開始したときは相次相続控除を適用できる場合があります。その場合、一次相続で納めた相続税のうち一定額が二次相続の納税額から控除されます。
相続税対策を行う際には、いくつか注意点があります。まず、一次相続で「相続税ゼロ」を実現した場合でも、二次相続の負担まで含めて判断する必要があります。
また、配偶者が全財産を相続すると、管理・処分の負担も大きくなり、将来の認知症リスクや判断力の低下の際に問題が生じる可能性があります。
早めにできる準備としては、親世代の財産構成と名義を見直して生前贈与を活用する方法、一次・二次相続の試算をもとに専門家と財産の配分設計を検討することがあげられます。相続は一度で終わるものではなく、2回にわたる税務イベントと考えて対策する必要があります。
一次相続の「無税」に安心せず、二次相続まで見据えた財産の配分設計が重要です。今のうちから、家族の将来を見越した準備と相談を進めておきましょう。

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渡邉一史
専門家

渡邉一史(司法書士)

司法書士法人渡邉事務所

相続の生前対策として遺言作成の提案、相続登記、財産や自社株などの遺産承継まで担当できる司法書士。税理士や弁護士と連携して依頼者の悩みをワンストップで解決。他の親族の気持ちにも配慮した提案を得意とする。

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