日本舞踊の楽しさを伝えるプロ
徳永玲子
Mybestpro Interview
日本舞踊の楽しさを伝えるプロ
徳永玲子
#chapter1
KBCテレビ朝の情報番組「アサデス」のメインパーソナリティーとして、長年に渡り人気の徳永玲子さん。実は彼女にはお茶の間でおなじみの顔の他、もう一つの顔があります。日本舞踊・花柳流(はなやぎりゅう)師範、花柳美女清(はなやぎみめきよ)しかも日舞歴は27年というベテランです。
徳永さんが日舞を始めたきっかけは「着物を美しく、かっこよく着こなしてみたい!」という小さな憧れから。中学生の時から在団していた劇団で、演技により深みを持たせるための練習の一つに日本舞踊がありました。劇団をやめてからも続け、そして師範まで取得するほど情熱を注いだのが日本舞踊。「きっかけは単純でしたが、いざこの世界に触れると…奥がとっても深かったんですよ! 日舞が持つ独特の間など、やるたびにどんどんハマっていきました。日本人ならではの和のDNAが染み込んでいるのかもしれません」。
花柳流は日本舞踊における流派のひとつで、門弟は全国に2万人を数えるといわれる日本舞踊最大級の流派。日本舞踊の中でも歴史は比較的新しく、二代目の家元が昭和初期に生み出した振り付けも多く残っているといいます。徳永さんの教室には30代を中心とした若手のお弟子さんが20人ほど通い、活気溢れる空間となっています。また「博多どんたく」などの大きな祭りや地域のイベントに参加するなど、積極的に日本舞踊の魅力を発信。「伝統芸能というと敷居が高いイメージがあって、興味だけで止まっている方も多いと思うんです。そのイメージを取り払って、日舞の楽しさ、面白さをいろいろな人に伝え続けていきたいんですよ」。
#chapter2
師範試験を3度受験して合格した徳永さん。日舞の世界ではまず資格を得て、稽古をつけてもらった親師匠に芸名を襲名してもらう「名取(なとり)」を目指します。「人にもよりますが、私は名取になるまで10年、そして師範になるまで10年かかりましたが、基本、楽しさが前提にあるので苦にはなりませんでした。日舞は振り付けが完璧にできても、表現ができないとただの型どおりの舞いに過ぎません。今、ある演目の稽古中なのですが、遊女と菩薩、正反対に見える2人の女を演じないといけないんです。すごく難しいですが、やりがいや達成感は言葉にできないほどです」と徳永さん。
教室では姉弟子に指導を仰ぎ、東京に行った時は師匠に稽古をつけてもらうことも。年齢や経験によって、演目も変化し、表現の幅が広がりゆく日舞は一生携わっていける世界だと語ります。個人で、また2人以上で舞う舞台もあれば、新春の踊り初め、博多どんたくなどの祭りではみんながそれぞれお気に入りの着物を着て、大勢で踊り、舞います。「”楽しく、かわいく、美しく”をモットーに参加しています」。
花柳流の振り付けは代々受け継がれてきたものですが、同じ振り付けでも人が違うと全く変わったものとなる、と徳永さん。姉弟子の吉楽斗(きちらくと)さんと一緒に、教室のお弟子さんたちには個人の魅力を引き出すため、それぞれに合った着物や演目、曲を選んでいるそう。教室には男性も数名通っています。日舞には女舞、男舞とあり、男舞の方が好きだという徳永さん。男舞を踊るとスカッとするのと同時に新しい自分を発見した気分になるといいます。
#chapter3
教室では歩き方や所作、扇子の使い方など基本から始めますが、お弟子さんたちが教室に通うたびにきれいになっていくのだとか。「“見られている”自分を意識するようになっていくんですね。普段、自分を注視することはないでしょう。自分自身に意識を集中することによって背筋がきっちり伸び、メイクの仕方も変わっていく。どんどんあか抜けて行くんです。教室では、お互いに声を掛け合い、褒め合うことで、自分の中に眠る美を呼びさませていくのだそう。男性も例外ではなく、より若々しく、老化防止にも良いと太鼓判を押します。
人に見られるのが本業の徳永さんですが、「日舞は目の前に観客がいますから、ライブ感が圧倒的なんです。このライブ感を一度味わったらやめられません!」。将来は日舞で海外との交流を視野に入れているとのこと。お隣の韓国や中国から来た観光客をもてなすイベントや和太鼓とコラボレーションをしたショーを開催したいと目を輝かせます。
日舞に携わることで、礼儀や所作、歩き方、立ち居振る舞いなど、普段の生活にも影響が現れるといいます。それはまさに、内面からあふれる美と輝き。「週1.2回ほど日常にスパイスを入れることで、生活や気持ちにもメリハリがついてきます。舞台出演やイベント参加などの目標を持つことでテンションも上がりますよ。ぜひ、私たちと一緒に踊りましょう!」とメッセージ。話を聞いているだけで従来のイメージは消え、心が弾みます。徳永さんのキラキラした笑顔が日舞の楽しさを存分に物語っていました。
(取材年月:2012年3月)
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