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阿蘇の麓で中世より伝わる銘木「南郷檜」のまな板「南阿蘇の薫り」を展開

阿蘇のヒノキ・南郷檜(なんごうひ)の魅力を発信する銘木のプロ

佐々木丘

佐々木丘 ささきたかし
佐々木丘 ささきたかし

#chapter1

100年以上かけてゆっくりまっすぐ育つ南郷檜は「通直完満(つうちょくかんまん)」が特徴

 火の国熊本のシンボル・阿蘇山。その麓で独自の育成方法で育てられるヒノキ「南郷檜(なんごうひ)」は、中世より高森阿蘇神社の神木として植えられるなど、古い歴史を持つ銘木です。保水性と通気性に優れた火山性の土壌と清らかな水を活かし、枝を地面に挿して育てる「挿し木」の手法によりDNAを連綿と伝えています。

 この“神々の木”の魅力を発信し、普及に取り組んでいるのが「Green’s Label」代表の佐々木丘さんです。

 「約50年で出荷される一般的なヒノキと比べ、南郷檜は100年以上かけてゆっくりまっすぐ育つため年輪の間隔が均等で、製材すると細かな美しい木目が現れます。天に向かって大きくまっすぐ伸びるさまは『通直完満』と表現され、均一の太さを保つ樹形は寺社仏閣の建材に重宝されています。最近では名古屋城の修復の際に高値で取引されたほか、火災からの再建が進む首里城にも採用されています」

 森林資源を保全するため、南郷檜が木材市場で競りに掛けられるのは年に1回。佐々木さんは買い付けた貴重な木を1年かけて乾燥させ、製作した神々が宿るまな板「煌神―koujin―」をインターネットで販売しています。

 「食材にこだわる料理人や、オーガニックや健康に関心の高い主婦など、食や素材にしっかり向き合う方たちに愛用されています。厚みがあるため耐久性があり長持ちするので、環境への意識が高い方にもおススメですね」

 メールマガジンを通じ、南郷檜の特徴やまな板の購入者の感想などを配信。「高価な物なだけに、私どもの活動や理念に共感していただき、木の良さを理解した上でお取り寄せいただければ」と思いを語ります。

#chapter2

まな板のほか、ヒノキのすがすがしい香りが楽しめる蒸留水スプレーも販売

 「煌神―koujin―」は和食店を中心に九州各地の飲食店で用いられ、中には各国の優良店を紹介する「ミシュランガイド」に掲載された店もあると言います。
 「佐賀牛専門の焼き肉店では生肉を載せるプレート代わりに活用され、肉汁が付きにくく食材のうま味を引き立てると好評です。すし店のカウンターなど、まな板以外のオーダーメード品も承っています」

 抗菌作用があるヒノキは衛生的で、乾燥も簡単。包丁との相性も抜群で、プラスチックに比べて柔らかいことから、刃こぼれを起こしにくい利点があります。
 「使い始めると、軽快な包丁のコンコンという音に子どもたちが台所に集まり料理へ興味を持つようになった、というお母さんの声も寄せられています」

 店内などに掲示してもらえるよう、希望に応じて南郷檜の産地証明書も発行。経年による傷みに対応するため、まな板の表面を削るサービスも有料で行っています。

 まな板の加工で発生する端材にも着目し、佐々木さんは南郷檜のチップから不純物を取り除いた蒸留水スプレーも製造しています。
 「ヒノキのすがすがしい香りは気持ちをリセットしたいときにぴったり。お部屋や寝室の枕にワンプッシュするだけで森林浴気分が味わえます。靴箱や車などの消臭剤のほか、アルコールが入っていないのでペットの臭い消しや赤ちゃんのお尻ふきに使う方もいらっしゃいます」

 今後は神社仏閣に向けた木材も取り扱いたいと言う佐々木さん。「木材市場で長年鍛えてきた目利きで、さまざまな顧客の信頼を得ていきたい」と意欲を見せます。

佐々木丘 ささきたかし

#chapter3

聖なる木を後世に残すため、保全活動のプロジェクトやSNSの情報発信を展開

 佐々木さんは大学を卒業後、雑誌の編集者に。観光情報誌「じゃらん」やおでかけ雑誌「九州ウォーカー」などの有名媒体で約12年にわたり制作を手掛けました。
 九州各地を巡る中、自然素材である木の香りに魅了され住宅用木材を扱う会社に転職。フォークリフトのオペレーターから再スタートし、木材の基本的な知識を身に付けました。

 「その後、総合商社の木材部門に10年間勤務し、市場の競りを仕切っていました。年間7億円ほど売り上げていましたが、数字に追われず自分の好きな木を扱いたいと考え、木材バイヤーとして独立しました」

 南郷檜と出会ったのは、コロナ禍で経営を模索しているときでした。
 「クライアントからその存在を聞くやいなや、産地の熊本県高森町に飛び込み訪問。山を見学し、林業家の人たちの話を聞き、地域で大切に育てられている木を多くの人に知ってもらい、未来につないでいきたいと志を新たにしました」

 阿蘇の地を見守る聖なる木を100年先まで残すため、資金を募るクラウドファンディングで保全プロジェクトを展開。約3週間で105人もの賛同者を集めました。また雑誌編集者として培った発信力を生かし、メールマガジンの発行のほか、毎朝X(旧Twitter)でのポストなどSNSを使った広報活動にも力を入れています。

 「今後は、南郷檜の愛用者を集めてオンラインサロンのようなコミュニティーを作り、交流できればと考えています。国内にとどまらず、ヒノキの伐採が禁止されている台湾を中心に世界中のシェフにも広めていきたいですね」

(取材年月:2024年3月)

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佐々木丘

阿蘇のヒノキ・南郷檜(なんごうひ)の魅力を発信する銘木のプロ

佐々木丘プロ

木材バイヤー

合同会社Green’s Label

熊本・阿蘇山麓で伝わる南郷檜を普及するべく、まな板に加工してインターネットで販売。細やかで美しい木目が特徴で、手入れも簡単な上包丁との相性も抜群です。聖なる木の魅力をSNSなどで発信しています。

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