『熨斗、いる?いらない?』令和の贈答マナーを考える本音座談会

星野貴郎

星野貴郎

テーマ:マナー



「お年賀に熨斗、つけますか?」

年末年始、この質問を投げかけると、意外にも意見が割れます。
「当然つけるでしょう」という人もいれば、「今どき熨斗なんて...」という人も。

今回は、福岡の名入れギフト専門店JORIOプロと、架空の登場人物による座談会形式で、「熨斗、本当に必要?」という問いに向き合います。

座談会メンバー


  • 田中さん(52歳・総務部長)「マナーは大事。熨斗をつけないなんて考えられない」
  • 佐藤さん(28歳・営業担当)「正直、熨斗って意味あるんですか?」
  • JORIOプロ(中立派)「現場のリアルをお伝えします」

「熨斗、いらない派」の主張


佐藤さん:
「正直に言います。僕、もらった熨斗、すぐ捨ててます。ゴミになるだけだし、シンプルなラッピングの方がオシャレ。若い世代は熨斗なんて気にしてないですよ」

JORIO:
「確かに、若い方から熨斗のご依頼をいただくことは、ほぼないですね。20代〜30代前半のお客様は、シンプルなラッピングを選ばれます」

「熨斗、必要派」の主張


田中さん:
「熨斗は日本の伝統文化です。目上の方や取引先に贈るとき、熨斗がないなんて失礼。『この会社、常識ないな』と思われますよ」

JORIO:
「40代以上の世代の方からは『熨斗をつけてください』というご依頼を、たまにいただきます。世代による違いは確かにあるかもしれませんね」

実は「誰から?」を示すツール


JORIO:
「ここで現場のリアルをお伝えしたいのですが、熨斗のご依頼、実は複数人で記念品を贈る場合に多いんです」

佐藤さん:
「え、どういうことですか?」

JORIO:
「例えば、社員一同から社長へ、部署全員から退職する先輩へ。熨斗に『○○部一同』と書くことで、誰からの贈り物なのかが一目でわかります。これ、すごく実用的なんです」

田中さん:
「年末は取引先から大量のギフトが届くんです。熨斗がないと『これ、どこの会社から?』ってわからなくなる。特に商品自体に社名が入っていない場合、熨斗がないと困ります」

佐藤さん:
「なるほど...。『誰から』を明示するツールとしては理にかなってるのか」

熨斗の本当の意味、知ってる?


JORIO:
「実は、熨斗って単なる飾りじゃないんです」

のしあわび=長寿と繁栄への祈り


熨斗の中央に黄色い細長いものが入っているのを見たことがありますか?あれは「のしあわび」といって、あわびを薄く切って伸ばして干したものを表しています。
「伸ばす」という行為から、伸びる=永続の象徴。贈り先の発展を祈るという祝意が込められています。
『あなた様の末永い繁栄と健康を祈って』という想いが、熨斗には込められているのです。

水引=「結ぶ」ことで吉を閉じ込める


水引は、ただのひもではありません。

  • 「吉」を「糸」でしっかりつなぐ
  • 袋に「吉」を入れて口を「糸」で結ぶことで、中に閉じ込められた「吉」の霊力が守られる
  • 「結ぶ」という行為には魂が宿る


白い紙=清浄な状態で贈るという誠意

白い和紙は、何度も水に晒して作られます。
この水に晒す行為は「禊(みそぎ)」と同じ。
つまり、白い紙は穢れが洗い流された、清浄な紙なのです。

「あなたのためだけに、清浄な状態で用意しました」という気持ちの表現。
相手を思いやる行為が含まれているのが、日本の贈答文化なんです。

田中さん:
「へえ...そんな深い意味があったんですね。知りませんでした」

JORIOプロの本音


佐藤さん:
「JORIOさんは、正直どう思います?熨斗、必要ですか?」

JORIO:
「正直に言うと、なくてもいいけど、あると印象が変わると思います。熨斗がついていると、『きちんとした方なんだな』という印象を受けます。こちらの気も整えられるというか、少し気が引き締まる感じ。贈る側の誠意が伝わってくるんですよね」

令和の熨斗の使い方


座談会を通して見えてきた、令和時代の熨斗の使い方をまとめます。

熨斗をつけるべき場面


  1. 目上の方・年配の方への贈り物(50代以上の方には無難)
  2. 複数人からの贈り物(誰からかを明示するために)
  3. フォーマルな場面(結婚祝い、お歳暮、お年賀など)
  4. 取引先への贈り物(年末年始)(大量のギフトが届く時期)


熨斗をつけなくてもいい場面

  1. 若い世代同士のカジュアルなギフト
  2. デザイン性を重視する場合
  3. 相手が熨斗を重視しないとわかっている場合


「控えめ熨斗」という選択肢

「短冊熨斗」という、通常より小さくて控えめなタイプもあります。フルサイズの熨斗は大げさに感じるけど、何もつけないのも不安...という場合におすすめです。

まとめ:意味を知ると、見え方が変わる


佐藤さん:
「熨斗の意味、知らなかったです。『あわびの霊力』とか『結ぶことに魂が宿る』とか、背景を知ると、ただの飾りじゃないんだなって思いました」

JORIO:
「ただ、無理につける必要もありません。大事なのは、相手のことを考えて選ぶこと。相手が年配の方なら熨斗をつける、若い世代ならシンプルなラッピングにする。それが、本当の『相手への配慮』だと思います」

熨斗に込められた意味:

  • のしあわび=長寿・繁栄への祈り
  • 水引=「結ぶ」ことで吉を閉じ込める
  • 白い紙=清浄な状態で贈るという誠意


結論:形式より大切なのは、相手を思う気持ち


熨斗は「つけるべき」でも「つけなくてもいい」でもなく、相手に合わせて選ぶもの。
意味を知った上で、柔軟に使い分けることが、令和の贈答マナーです。

『のしと水引について』興味がわいた方へ。深堀り。

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星野貴郎
専門家

星野貴郎(名入れギフトの加工販売業)

株式会社ジョリオ JORIO Co., Ltd.

贈る喜び、受け取る喜び、お返しする喜びを繋げ、人と社会の関係構築に貢献する。赤ちゃんと同寸の神社仏閣御用材で作る「お身丈命名書」の販売。7月10日「名入れギフトの日」制定など文化活動に尽力。

星野貴郎プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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