なぜ人は"もらったもの"を捨てられないのか?ノベルティの心理効果

星野貴郎

星野貴郎

テーマ:ノベルティ

捨てられない


あなたの引き出しの奥に、使っていないノベルティ、眠っていませんか?

企業ロゴ入りのボールペン、もらったタオル、展示会でもらったクリアファイル...。
「いつか使うかも」と思いながら、何年も取ってある。そんな経験、誰にでもあるはずです。

でも不思議ですよね。
お店で買うなら絶対に選ばないのに、もらったものは捨てられない。

今回は、この「もらったものを捨てられない」心理のメカニズムを、心理学の視点から解き明かします。

鍵を握るのは「保有効果」

保有効果とは?


この現象を説明する鍵が、「保有効果(授かり効果)」という心理だそうです。
保有効果とは、いったん自分のものになったものに、実際以上の価値を感じてしまう心理現象のこと。
1970年代に経済学者リチャード・H・セイラー氏によって提唱され、後にノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマン氏らによって実証されました。

有名なマグカップ実験


カーネマン氏が行った実験が、この心理をよく表しています。
大学生をランダムに2つのグループに分けました。


AグループBグループ
6ドル相当のマグカップをプレゼント何ももらわない

そして、Aグループには「いくらなら売るか?」、Bグループには「いくらなら買うか?」と聞きました。

結果はどうだったと思いますか?

Aグループ(持っている人)の答えBグループ(持っていない人)の答え
平均7.12ドル平均2.87ドル

たった今もらったばかりのマグカップなのに、持っている人は持っていない人の2倍以上の価値を感じたのです。

なぜ保有効果が起きるのか?

理由1:「失う恐怖」が強すぎる


人間には、得る喜びよりも、失う痛みの方を強く感じるという性質があります。
これを「損失回避」と言います。
何かを手放すとき、私たちの脳は「失うこと」に強い抵抗を感じます。
その結果、「これは価値があるものだ」と自分に言い聞かせて、手放さない理由を作り出すのです。

理由2:「自分のもの」という特別感

一度でも自分のものになると、それだけで特別に感じられます。
他の人が同じものを持っていても気にならないのに、自分が持つと愛着が湧く。これが保有効果です。

理由3:「もったいない」という感覚

日本人は特に「もったいない」という感覚が強い文化を持っています。
まだ使えるものを捨てることへの罪悪感。
この感情が、保有効果をさらに強めているのです。

ノベルティが捨てられない特別な理由

では、ノベルティはなぜ特に捨てにくいのでしょうか?

「無料でもらった」という心理

お金を払っていないからこそ、捨てにくいという逆説があります。
購入したものなら「使わないから処分しよう」と割り切れます。
でも、無料でもらったものは「せっかくもらったのに...」という気持ちが働くのです。

「誰かがくれた」という記憶

ノベルティは、誰かから受け取ったものです。
展示会のスタッフから、取引先から、イベントで...。
その「もらった」という行為自体が、記憶と結びついています。
人からもらったものを捨てることは、その人との関係を断つような罪悪感を感じさせるのです。

「いつか使うかも」という幻想

ノベルティは実用品が多いです。
ボールペン、タオル、カレンダー。
「いつか使うかもしれない」という可能性が、捨てる決断を先延ばしにさせます。
でも、正直に言えば「いつか」は永遠に来ないことがほとんどです。

企業にとってのチャンス:保有効果を活かす

この保有効果、実は企業にとって大きなチャンスです。

一度手にしたら手放さない


良いノベルティを配れば、受け取った人は長く持ち続けます。
保有効果が働くからです。
引き出しに入っていても、目に触れるたびに企業名を思い出してもらえます。

使ってもらえるノベルティなら、効果は倍増

ただ持っているだけでなく、実際に使ってもらえたら?
毎日使うボールペン、毎朝見るカレンダー。
使うたびに企業を思い出し、保有効果はさらに強まります。

「愛着」が「ブランド愛着」に変わる

質の良いノベルティに愛着を持ってもらえれば、それは企業への好感度にもつながります。
「あの会社、いいノベルティをくれたな」という記憶が、企業イメージを形作るのです。

「捨てられないノベルティ」を作るには?


では、どんなノベルティが捨てられないのでしょうか?

1. 品質が良いもの


安っぽいものは、保有効果が働く前に捨てられてしまいます。
少し予算をかけてでも、「これ、いいな」と思ってもらえる品質を選びましょう。

2. 実用性があるもの


「使えない」ものは、いくら保有効果があっても意味がありません。
日常で本当に役立つアイテムを選ぶことが大切です。

3. デザインがシンプルなもの


企業ロゴが目立ちすぎるものは、使いにくいと感じられます。
さりげなく、でも確実に企業名がわかるデザインが理想です。

4. 長く使えるもの


消耗品よりも、長期間使えるアイテムの方が保有効果は持続します。
タンブラー、エコバッグ、カレンダーなど、1年以上使えるものがおすすめです。

一方で、注意も必要

保有効果には、配る側も気をつけるべき点があります。

「捨てられない」がストレスになることも


受け取った人にとって、本当は不要なのに捨てられない...というストレスを与えてしまうこともあります。
だからこそ、相手が本当に喜ぶものを選ぶことが大切です。

「配ればいい」ではない

保有効果があるからといって、何でもかんでも配れば良いわけではありません。
相手のニーズを考えず、大量にバラまくだけでは、逆に「迷惑なもの」になってしまいます。

まとめ:心理を理解して、価値あるノベルティを

人は、もらったものを捨てられない。
それは「保有効果」という心理が働くからです。
一度手にしたものには、実際以上の価値を感じ、失うことを恐れる。
この人間の本能的な心理です。

企業がノベルティを配るとき、この心理を理解しているかどうかで、効果は大きく変わります。
「捨てられない」=「長く持ってもらえる」=「宣伝効果が続く」
でも同時に、相手の立場に立つことも忘れずに。
本当に喜ばれるものを選び、心を込めて渡す。
その姿勢が、ノベルティを通じた良い関係を生み出します。

名入れギフトJORIOは、ノベルティ選びをサポートしています。
保有効果が働く、質の良いアイテム。
長く使ってもらえる、実用的なデザイン。
相手に喜ばれ、企業イメージを高めるノベルティを、一緒に選びましょう。
捨てられないノベルティは、きっと心に残るノベルティです。

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星野貴郎
専門家

星野貴郎(名入れギフトの加工販売業)

株式会社ジョリオ JORIO Co., Ltd.

贈る喜び、受け取る喜び、お返しする喜びを繋げ、人と社会の関係構築に貢献する。赤ちゃんと同寸の神社仏閣御用材で作る「お身丈命名書」の販売。7月10日「名入れギフトの日」制定など文化活動に尽力。

星野貴郎プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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