波を待つ時間が教えてくれる、無理のないつくり方

雨が降り、
山に落ちた水は谷へ集まり、
いくつもの流れが合わさって川になります。
川は、山と山のあいだを縫うように流れ、
やがて海へとたどり着く。
とても当たり前のことですが、
山、川、海はそれぞれが独立して存在しているのではなく、
ひとつの大きな循環の中でつながっています。
このコラムは、
登山、フライフィッシング、サーフィンと、
ここ数回書いてきた体験を振り返りながらまとめたものです。
登山をし、
渓流で釣りをし、
海に入る。
それぞれ別の場所に身を置いているようでいて、
感じているものは、実は同じなのかもしれません。
天気や水の量、風向き、季節の移ろい。
こちらの都合ではどうにもならないものを前にすると、
人は自然と、受け入れる姿勢になります。
無理に抗わず、
流れを読み、
いまの状態をそのまま受け取る。
そうした感覚は、
日々の暮らしや、家づくりにも重なっている気がします。
住まいもまた、
土地の条件や気候、周囲の環境の中に置かれ、
そのすべてと関係を持ちながら存在しています。
自然をねじ伏せるのではなく、
うまく受け止め、無理なくなじませる。
山や川や海に身を置く時間は、
そんな住まいのあり方を、
言葉ではなく感覚として教えてくれます。
地球のリズムを、
少しでも素直に感じ取れる家をつくりたい。
この数回のコラムは、
その原点を改めて確かめる時間でもありました。



