【コラム第6回】結果よりも“過程”を大切にする理由
「速くなりたい」という言葉を、毎日のように聞きます。
それは、コーチとして本当に嬉しい言葉です。でも、10年以上この仕事を続けてきて、最近あらためて気づいていることがあります。
陸上競技が子どもたちに与えてくれるのは、タイムや順位だけではないということを。
走る理由は、人それぞれでいい
「あいつに勝ちたい」「全国大会に行く」「何秒で走りたい」——自分の目標に向かって走る選手がいます。
一方で、「コーチへの恩返しがしたい」「家族を喜ばせたい」という気持ちを原動力に走る選手もいます。
どちらが正解、ということはありません。どちらも本物の動機だと思っています。
大切なのは、「なぜ走るのか」という理由が、その選手の中にあるということです。走る理由があるからこそ、調子が悪い日も、足が痛い日も、それでも練習に来られます。その積み重ねが、タイムにも、人間性にも、じわじわと出てきます。
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指導者として一番最高な瞬間
先日、怪我で気持ちも少し沈んでいた選手がいました。
思うように走れない、みんなと同じことができない——そういう時期は、選手にとって精神的にも辛い時間です。
ところが練習の中で、その選手が仲間と並んで競い合いながら走る場面がありました。
その時の表情が、本当に良かったです。
「楽しんでいるな」と感じられたその瞬間が、指導者として一番最高だと思いました。タイムでも順位でもなく、その表情ひとつで、「この仕事をしていてよかった」と感じます。
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速さより先に、陸上が教えてくれること
タイムは、努力すれば必ずついてきます。でも、陸上競技が本当に子どもたちに教えてくれるのは、もっと別のことだと思っています。
仲間と競い合う楽しさ。思い通りにならない悔しさ。それでも続ける粘り強さ。そして——走ることが、純粋に楽しいという感覚。
この「楽しさ」は、記録が出た日だけに訪れるわけではありません。怪我で思い通りに走れない日に仲間と笑いながら走った瞬間にも、訪れることがあります。
そういう経験の積み重ねが、競技を引退した後も、その子の人生にずっと残っていきます。
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保護者の皆さんへ
お子さんが陸上を始めた理由は、何でしたか?
そして今、お子さんはどんな顔で走っていますか?
記録が伸びない時期は、親としても歯がゆいものだと思います。でも、その時期にこそ、陸上は大切なことを教えてくれています。
「速さ」だけを見るのではなく、走る姿の中にある表情や変化を、ぜひ見てほしいです。そこに、記録には表れない成長があります。
私は指導者として、選手の「速くなりたい」という気持ちに全力で応えていきます。と同時に、走ることが楽しいと感じられる瞬間を、ひとつでも多く作っていきたいと思っています。
その先に、本当に速い選手が育つと信じているから。
次回更新日は、2026年4月19日となります。
お楽しみに、また次回見にきてください。



