【コラム第6回】結果よりも“過程”を大切にする理由
「速く走れるようになった」「自己ベストを更新した」──
陸上競技に取り組む中で得られる“自信”は、数字や結果だけでは語りきれません。
走るというシンプルな行為には、努力が形になる喜びと、挑戦を続ける勇気が詰まっています。
「できた!」という瞬間が、自信の始まり
ある小学生が、最初は50mを途中で止まってしまうほど走るのが苦手でした。
でも、練習を重ねるうちに少しずつフォームが安定し、ある日「最後まで止まらず走れた!」と笑顔を見せてくれました。
タイムは速くなかったかもしれません。
けれど、その「できた!」という小さな成功体験が、その子にとっては大きな“自信”の種になりました。
自信とは、特別な才能や結果から生まれるものではなく、小さな達成を積み重ねた先に芽生えるものです。
不安を乗り越えた先に見えたもの
ある小学生の選手は、試合が近づくと毎回「緊張してお腹が痛くなる」と言っていました。
本番になるとスタートで動きが固まり、思うように走れないこともありました。
ある日、練習後にその子と少しだけ話しました。
「どうして緊張すると思う?」と聞くと、少し考えてから
「失敗したらどうしようって思っちゃう」と答えてくれました。
私は「失敗しても、走りきったらもう勝ちだよ」と伝えました。
またこの手の選手は「経験」をチカラに変えることができたらきっと急成長するという確信もありました。
すると次の大会、緊張しながらもスタートラインに立ち、最後までしっかり走り切りました。
結果よりも、走り終えた後の“ホッとした笑顔”が何よりも印象的でした。
最終的にその選手は青森県で2位となる力走。
「やり切った自分を認められた瞬間」こそが、自信の芽生えなのだと改めて感じました。
仲間と走ることで得られる自信
リレーやチーム練習では、仲間との信頼が自信を育てます。
普段は控えめで声を出すのが苦手だった子が、バトン練習で自分から「お願い!」と声を出した瞬間。
その小さな勇気がチームの空気を変え、他の選手も自然と声をかけ合うようになりました。
チームの中で「任せられる」「頼られる」経験は、速さ以上に心を強くします。
自信は、仲間との関わりからも育まれていくのです。
保護者が気づく“子どもの変化”
保護者の方から「最近、家でも前向きになった」「負けてもすぐ切り替えられるようになった」と声をかけていただくことがあります。
クラブでの練習を通じて、子どもたちは“結果ではなく過程”を大切にする姿勢を身につけていきます。
家庭の中でも、「どうだった?」「楽しかった?」という会話の中で、子どもが自分の言葉で成長を語るようになる。
それがまさに“自信が育っている証拠”だと感じます。
スポーツを通じて得られる自信は、競技の中だけでは完結しません。
家庭や学校、日常のふとした場面でも表れ、子ども自身の“生きる力”へとつながっていきます。
挑戦の先にある“本当の自信”
私自身も、消防士を退職し、指導に専念してから8年ぶりに競技へ復帰しました。
久しぶりにスパイクを履いた時、正直なところ「もう昔のようには走れないかもしれない」という不安がありました。
でも、スタートラインに立った瞬間、「挑戦している自分」を誇りに思えたのです。
結果がどうであれ、挑戦することそのものが自信へと変わっていく。
自信は“うまくいった時”よりも、“やり抜いた時”に育つものだと、身をもって感じています。
最後に
走ることは、ただの競技ではありません。
それは、「自分を信じる力を育てる時間」です。
速くても遅くても関係ありません。
昨日の自分よりも一歩でも前に進めたなら、それだけで立派な成長です。
これからもUACAでは、子どもたち一人ひとりが“自信を持って走る姿”を応援し、
その背中を押し続けていきたいと思います。
次回10月19日(日)のテーマ(4回目)は「クラブに通う意味 — 記録以上の価値」をテーマにお届けします。
どうぞお楽しみに。
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