【コラム第6回】結果よりも“過程”を大切にする理由
陸上クラブUACAには、年齢も体力も目標も異なるたくさんの選手が集まります。
小学生から社会人まで、「走るのが楽しい!」という子もいれば、「大会で記録を伸ばしたい」という選手もいる。
だからこそ、私が大切にしているのは、一人ひとりの現状に合わせる指導です。
同じ練習でも“見ているポイント”は違う
例えば「100mを走る」というシンプルな練習でも、声かけの内容は年齢や段階で変わります。
ある小学生には「腕を大きく振って走ろう」と伝えます。まだ体の動かし方を覚える段階だからです。
一方で中学生には「スタートからの姿勢とリズムを意識して、加速につなげよう」と伝えます。
高校生や大人には「ピッチとストライドのバランスを整え、後半で失速しないように」と、より専門的な指導をします。
同じ100mでも、選手の現状を理解して焦点を変えることが大事なのです。
できないことを“叱らない”
私が大切にしているのは、「できないことを叱らない」こと。
ある日のスタート練習で、小学3年生の子が転んでしまいました。泣きそうな顔をしていましたが、私は「転んだ原因は何だと思う?」と尋ねました。
すると本人は「下を見ていた、見すぎてしまった」と自分で気づき、「次は前を見てやる!」と本人の言葉で力強く言いました。
できないことを責めるのではなく、なぜできなかったのかを指導者が一緒に考える。
また、答えばかり教えすぎてもその動きを指導者が行っているわけではないためあくまでも本人の気づきを大切にしています。
最終的にその経験が、次の成長へのステップになります。
個性を伸ばすということ
クラブには、それぞれに光るものを持つ選手がいます。
ある小学生はスピードは普通ですが、リズム感が抜群でリレー練習ではバトンパスの名人です。
別の中学生は短距離で苦戦しますが、長距離(短距離種目と言われる400mなど)では誰よりも粘り強く走れる強さがあります。
また、スピードが飛び抜けていなくても、仲間を励ます力に長けた子もいます。チームの雰囲気を変える大事な存在です。
「誰かと比べて足りない」ではなく、「その子の強みをどう生かすか」。
そこに焦点を当てるのが、私の考える現状に合わせた指導です。
最後に
指導者の役割は、答えを一方的に押しつけることではありません。
選手が「自分で気づき」「自分で選び」「自分で成長していく」ためのサポートをすることです。
一人ひとりの現状を理解し、その可能性を信じて並走・伴走する。
これが、私がこれからも大切にしていきたい指導の姿勢です。
次回は10月12日(日)「走ることで得られる“自信”とは?」をテーマにお届けします。
どうぞお楽しみに。



