もしも!お口のケガ百科④「お口のケガの後遺症」

荒川大輔

荒川大輔

テーマ:小児歯科・お子さんの健康全般について

こんにちは。
名古屋市港区にあります、オリーブ歯科こども歯科クリニックです。

転んだときにぶつけた歯や、幼い頃に強く打った口。
時間が経つにつれて痛みも消え、
見た目も元に戻ったように見えると、
「もう大丈夫」と思ってしまいがちです。
しかし、歯の外傷は受傷直後だけでなく、
数ヶ月〜数年後に後遺症として現れることがあるのです。
今回は、気づきにくい“時間差で起こる外傷の影響”についてご紹介します。

【よくある「遅れて出る症状」】
歯の外傷後に注意しておきたい、よくある後遺症は以下の通りです。

・歯の色が暗く変色してくる(神経の壊死や血液沈着)
・根の先に膿がたまる(根尖病変)
・歯の根が吸収されて短くなる(歯根吸収)
・乳歯の外傷が、後から生えてくる永久歯に影響を及ぼす

受傷から半年〜数年経って現れることもあり、
「昔のケガと関係がある」と気づかれないまま悪化してしまうケースもあります。

【歯根吸収とは?】
「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」とは、
歯の根っこ(歯根)が体に吸収されて徐々に短くなってしまう状態です。

・強い打撲や脱臼によって、歯根膜や骨に炎症が起こる
・炎症反応が続くと、根が溶けてしまうことがある
・痛みを伴わず進行し、気づいた時には抜歯が必要なことも

特に成長期の子どもに多く、レントゲンで定期的に確認することが大切です。

【乳歯のケガが永久歯に与える影響】
乳歯をぶつけた経験がある子どもは、
将来生えてくる永久歯に以下のような影響が出る場合があります。

・変色した状態で生えてくる
・歯の形が一部欠けている
・エナメル質がうまく形成されない(エナメル質形成不全)
・まっすぐに生えてこない

乳歯の外傷を「そのうち抜けるから」と軽視せず、
永久歯への影響を念頭に入れて経過観察することが大切です。

【こんなときはすぐに受診を】
以下のような症状が見られた場合は、
外傷による後遺症が疑われます。

・ぶつけた歯の色が時間とともに暗くなってきた
・歯ぐきの上に小さな膿のふくらみができた
・歯が揺れ始めた/位置がずれてきた
・レントゲンで根が短くなっていると言われた
・永久歯の色・形に異常があると指摘された

一見すると虫歯や歯周病のような症状に見えることもあるため、
「昔ケガをした歯かどうか」を思い出して伝えることが診断のヒントになります。

【まとめ】
歯の外傷は、目に見えるケガが治ったあとも、
数年後に静かに悪影響を及ぼすことがあります。
とくに成長期の子どもは、骨や歯の成長に影響が出るため、
長期的な視点で見守ることが必要です。

1.受傷後も定期的なレントゲンチェックを
2.変色や違和感は「昔のケガ」を思い出して伝える
3.症状がなくても、年に一度は歯科で経過観察を

次回は、「歯ブラシの喉つき事故」について。
日常生活でできる工夫をお届けします。
シリーズで学びながら、お口の健康を長く守っていきましょう。

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荒川大輔
専門家

荒川大輔(歯科医師)

オリーブ歯科こども歯科クリニック

保険診療から先進的な自由診療まで幅広く対応、家族全員で通える地域のかかりつけ歯科医院です。全身の健康に悪影響を及ぼすお子さんの口腔機能発達不全症の治療に県内外から多くの患者様が通院しております。

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