子どもの“自分で育つ力”を信じてあげることの大切さ

荒川大輔

荒川大輔

テーマ:小児歯科・お子さんの健康全般について

こんにちわ、名古屋市港区にありますオリーブ歯科こども歯科クリニックです。

子育てにおいて、「守ってあげたい」「困らせたくない」という思いは、親として当然の愛情のかたちです。
けれども、私たちが日々診療の現場で感じているのは、その“優しさ”が、かえって子どもの発達を遠ざけてしまうこともあるという現実です。

たとえば、好き嫌いが激しい子どもに対して、食べやすいものだけを用意してしまったり。
食事中に姿勢が崩れていても注意せず、無理に口へ運んであげたり。
または、寒くない日でも厚着をさせてしまったり――。

こうした過保護の積み重ねが、子どもの「健康な発育」や「自分で考えて動く力」を少しずつ奪ってしまうことがあります。

食事については特に注意が必要です。噛む・飲み込む・話すという口腔機能は、日常の食事を通じて発達します。
“苦手だから食べさせない”という対応が続くと、噛む力や舌の動きが未熟なままになり、将来的に歯並びや発音、さらには学力にまで影響を及ぼすことがあるのです。

また、姿勢やマナーも、ただ“お行儀”の問題ではありません。食事中に足がぶらぶらしていたり、椅子に浅く座っていたりすると、嚥下が不安定になり、誤嚥や消化不良につながるリスクもあります。
「きちんと座って、しっかり噛む」という日常の積み重ねが、健康な体と脳の発達を支えているのです。

睡眠時の過剰な厚着や布団のかけすぎも、意外と見過ごされがちなポイントです。
子どもは体温調節機能が未熟な反面、活動代謝が高いため、過度に温めすぎることで寝苦しさを感じ、睡眠の質が下がることがあります。
実際、夜中に何度も目覚めたり、寝汗が多い、朝の目覚めが悪いといったケースの背景に、“暑さ”が隠れていることは珍しくありません。

また、最近の教育や育児では「個性を大切に」といった言葉を耳にする機会が増えました。もちろん、子ども一人ひとりの違いを認めることは大切です。
しかし、“苦手なことはやらせない”“不快なことは避ける”という姿勢が過剰になると、子ども自身が**“育つチャンス”を奪われてしまう**ことにもなりかねません。

私たちの医院理念は、「歯科医療は、患者さまの人生を幸せにするための手段であるべき」というものです。
それは、歯だけを見るのではなく、子どもたちの未来を育む視点を大切にするということでもあります。

「子どもの発達は、子ども自身の力で育つ」という自然の流れを信じながら、
ほんの少しの“手を添える”だけで、子どもは想像以上にたくましく成長していきます。

時には、できないことを見守り、
時には、子どもが「やってみる」姿を尊重してあげる――
そんな日常の小さな選択の積み重ねが、お口の健康にも、心と体の発達にもつながっていくと、私たちは信じています。

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荒川大輔
専門家

荒川大輔(歯科医師)

オリーブ歯科こども歯科クリニック

保険診療から先進的な自由診療まで幅広く対応、家族全員で通える地域のかかりつけ歯科医院です。全身の健康に悪影響を及ぼすお子さんの口腔機能発達不全症の治療に県内外から多くの患者様が通院しております。

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