歯科から見た“食べる力”の育て方 〜離乳食編〜

荒川大輔

荒川大輔

テーマ:小児歯科・お子さんの健康全般について

こんにちは。
名古屋市港区にあります、オリーブ歯科こども歯科クリニックです。

この記事をご覧の皆さんは離乳食に悩まれた経験がおありだと思います。

離乳食は、赤ちゃんにとって「初めての食事体験」であると同時に、ご家族にとっても「育児の大きな節目」のひとつです。
母乳やミルクだけで満たされていた日々から、口にスプーンを入れて「食べる」という行為へと移行するこの時期は、まさに“食育の原点”でもあります。
私たち橄欖会では、歯科医療の視点からもこの「離乳のステップ」をとても大切にしています。
なぜなら、離乳食の進み方そのものが、お子さまの「お口の機能の育ち」に直結しているからです。


離乳のスタートは一般的に生後5か月から6か月ごろと言われていますが、重要なのは“月齢”よりも“発達のサイン”です。
首がしっかりすわり、抱っこで安定して座れる、スプーンを口に入れても押し出さずに飲み込めるといった反応が見られたら、少しずつ始めてみましょう。
この時期は「ゴックン期」とも呼ばれ、歯はまだ生えていないことがほとんどですが、赤ちゃんは舌を前後に動かすことで、液状やペースト状のものを飲み込む練習をしています。
最初は一日一回、ひとさじから。にこにこと嬉しそうに食べる子もいれば、口に入れた瞬間にべーっと出してしまう子もいます。
それぞれの個性を受けとめ、無理に進めることなく、「食べるって楽しいね」という気持ちを育てることが、この時期の一番の目標です。


次に訪れるのが「モグモグ期」、およそ生後7〜8か月ごろです。
赤ちゃん自身で座れるようになり、舌の動きが前後だけでなく上下にも広がっていきます。
この時期になると、下の前歯が見えてくる子も多く、歯ぐきと舌を使ってやわらかいものを押しつぶす動きが出てきます。
豆腐くらいのやわらかさの食材を選び、なめらかにすりつぶした状態から、少しずつ形のあるものへ移行していきます。
ここで急いで“かたいもの”を与えてしまうと、無理に丸飲みするクセがついてしまうこともあるため、食材のやわらかさには特に注意が必要です。


さらに進んでいくと「カミカミ期」、およそ9〜11か月ごろを迎えます。この頃になると、上下の前歯が数本ずつ生え、手づかみ食べに挑戦する子も増えてきます。赤ちゃんにとって「自分で食べる」という行為は、単なる栄養摂取ではなく、自立への第一歩。食べこぼしも成長の証と捉えて、できるだけ自由にチャレンジさせてあげてください。この時期の食材は、歯ぐきでつぶせるやわらかさ、たとえばバナナ程度のかたさが目安です。


そして、1歳〜1歳半ごろの「パクパク期」に入ると、いよいよ大人の食事に少しずつ近づいていきます。奥歯(第一乳臼歯)が顔を出し始め、かむ力もだいぶ育ってきます。小さく刻んで、やわらかく調理すれば、家族と同じメニューを一緒に囲むことも可能になります。ただし、塩分や味付けはまだまだ控えめに。うす味で、素材の味を楽しむ経験を積ませてあげることで、将来の「味覚の育ち」にもよい影響を与えます。


ここまでご紹介した通り、離乳食は単に「食べる練習」ではなく、「かむ」「飲み込む」「味わう」など、口のさまざまな機能を育む大切なプロセスです。順調に進まないことがあっても、それは決して親のせいではありません。赤ちゃん一人ひとりに発達のペースがあることを、どうか忘れないでください。


私たちオリーブ歯科こども歯科クリニックでは、離乳食を通じた口腔機能の発達を重視し、お子さまの「食べる力」と「育つ力」を支える診療を行っています。歯科医院は「歯が痛くなってから来る場所」ではなく、「生まれたばかりの頃から寄り添える子育てのパートナー」であるべきだと考えています。

口から始まるお子さまの健康づくり、私たちと一緒に歩んでいきませんか。

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荒川大輔
専門家

荒川大輔(歯科医師)

オリーブ歯科こども歯科クリニック

保険診療から先進的な自由診療まで幅広く対応、家族全員で通える地域のかかりつけ歯科医院です。全身の健康に悪影響を及ぼすお子さんの口腔機能発達不全症の治療に県内外から多くの患者様が通院しております。

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