こんにゃくの新たな可能性を引き出す商品開発のスペシャリスト
中村寿和
Mybestpro Interview
こんにゃくの新たな可能性を引き出す商品開発のスペシャリスト
中村寿和
#chapter1
「飲むこんにゃくゼリー」や「こんにゃく麺ソース焼きそば」「こんにゃく麺カレーうどん」など、こんにゃくのイメージを覆す商品を次々と打ち出す「ナカキ食品」。1914年に創業し、百余年の歴史を刻む同社の代表・中村寿和さんは、長年にわたって研究開発に携わり、こんにゃくの特色を知り尽くすプロです。
「こんにゃくは低カロリーで低糖質、しかも食物繊維が豊富な食品として知られ、健康志向が高まる中で多くの需要が見込まれています。でも、従来のこんにゃくには、独特の臭いや水っぽさがありました。また、ダシなどが染みにくく『味がしない』、弾力があって『食感が苦手』などの声があり、特に若い人が敬遠する傾向がありました」
ヘルシーな食品として認知されながらも消費に結びつかないのは、こうした性質に原因があると考えた中村さんは、新たな企画に乗り出します。それは、おでんや筑前煮といったおかずの一品としてではなく、毎日食べても飽きない“主食になるこんにゃく”を実現することでした。
「2016年、試行錯誤の末に当方ではこんにゃくの欠点を克服する独自の製法を確立し、『プレミアムシリーズ』を完成させました。ラーメンやうどん、パスタやお米の代わりになるもので、お湯を注ぐだけで食べられるカップ麺や、お好みの料理に使える袋入りなどをそろえています。味もよく染みこみ、無味無臭のため、思い通りの味付けができるので、色んな調理法に合います」
当初から海外展開に力を入れていて、アメリカや台湾、香港、シンガポール、マレーシアでも好評だとか。
#chapter2
中村さんは、父である先代から事業を引き継いだときある決心をしました。「私は他の会社と同じようなことはやらない。うちでしかできないことを開発して世の中に提供していく。そういう会社を作ると父に言いました。やるのであれば、真髄を極めたいと思ったからです」
大学の工学部で化学を学んだ中村さんは、自らを「成し遂げるまであきらめず、真面目にコツコツやるタイプ」と分析。根っからのエンジニアだと話し、社長になってからも、新商品のアイデアを出しては製造機器を自分で手掛けるなど、現場の最前線に立ち組織を牽引してきました。
多くの人に自社製品を知ってほしいと、2018年には名古屋市中区で「キッチンナカキ+(プラス)」というレストランもオープン。同店で提供しているのはプレミアムシリーズを使ったメニューで、主食はカロリー、糖質ともに75%カットだと言います。
「店のコンセプトとして掲げているのは『Eat&Smile』です。ダイエットや病気の治療などで、口にするものに常に注意している人は、ストレスを感じていることがあります。食というのは私たちにとって欠かせない大切な営みですから、ここではしっかり食べて笑顔になって欲しいという気持ちを込めました」
パスタやリゾットにサラダが付いたセットメニューや、前菜からデザートまでのコース料理は、カロリーコントロールや糖質制限のために我慢を強いられる食事ではなく、おいしく楽しくいただける充実した内容となっています。
#chapter3
中村さんのもとでは、2022年3月に「スパイシーガーリック炒飯」「汁なし担々麺」をはじめとする新シリーズ「ZEROKON(ゼロコン)」を発売しています。このプロジェクトに着手するにあたっては、同社にとって初めての試みも取り入れました。
「SNSでアンバサダーを募集して座談会を開き、みなさんのご意見を聞きながら一緒に商品づくりを行いました。どんな味付けがいいのか、20種類ぐらい試作した中から絞り込んで、食べやすく改良をするほか、価格についてディスカッションするなど、多方面で知恵を貸してもらいました」
こんにゃくライスやこんにゃく麺に調味料が付いているので、炒めたり、絡めたりするだけで簡単に調理できるのが特徴。手間暇かけずとも、気軽に食卓に並べられる一品として新規顧客の獲得を目指しています。
「アンバサダーの方が本音で話してくださることはとても参考になりました。今後もこうした取り組みを進めていきたいですね」
今は、次世代への継承も視野に入れているという中村さんですが、まだ大きな目標もあります。アメリカやアジアの一部地域ではすでに販売している同社の商品ですが、さらに広いマーケットに送り出そうと準備をしています。
「海外でも“主食になるこんにゃく”を普及させて、世界中の方々に日常的に使っていただくことが私どもの夢です。カロリーや糖質を制限しなければならない人も食を通じて笑顔になってもらいたい、そういう願いを持っています」と語る中村さんの挑戦は、これからも続きます。
(取材年月:2022年2月)
リンクをコピーしました
Profile
こんにゃくの新たな可能性を引き出す商品開発のスペシャリスト
中村寿和プロ
食品開発製造及び販売
ナカキ食品株式会社
カロリーや糖質が気になる方もストレスなく食事が楽しめるよう、こんにゃく原料を使った麺類や米の代替商品を新たに技術開発。好みの味に調理できる商品のほか、手軽なカップ麺などオンリーワン商品を届けます。
\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /
プロの執筆コラム
掲載専門家について
マイベストプロ愛知に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または朝日新聞が取材しています。[→審査基準]