仏像の修復や販売の専門家成田光俊

仏像の修復や販売の専門家

成田光俊

専門知識と技術を持った仏師と職人が丁寧に修復

　先祖や故人を供養する仏像の汚れ、傷みが気になっていませんか？仏像修復と製造販売のメーカー「旭物産株式会社」(愛知県名古屋市)は、古くなった仏像を、専門知識と技術を持った仏師が丁寧に修復し、美しくよみがえらせます。
　“仏像のプロフェッショナル”である同社に近年、数多く寄せられているのが、一般家庭からの「古い仏像が出てきたがどうすればよいか」という声。例えば、高齢で施設に移るなどのライフスタイルの変化に伴い、仏壇を整理していたら仏像の傷みに気付いた、といったケースです。汚れや経年劣化による色落ち、破損が気になるものの仏具という特殊性や、作りが繊細である点などから素人には扱いが難しく、どこに相談したらよいか分からないのが実情です。
　「お仏像は実にたくさんの部品から成り立っています」。代表取締役の成田光俊さんは仏像を扱う難しさの1つに、その部品の多さを挙げます。仏像本体はもちろんのこと、台座1つとっても、いくつもの部品や装飾が複雑に組み合わさってできています。預かった仏像は、解体前にまず完全な姿を再現できるようにあらゆる角度から写真撮影。それから仏師が1つ1つの部品を丁寧に外していき、それぞれの部品を洗って自然乾燥させます。その後は台座内部の構造を強化し、元通りに組み直します。仏像には胎内文書が奉納されていることがあります。その場合は元の文書はそのままで、今回修復した当主が新たな文書を奉納することもできます。
　下地を塗り、彩色や金箔押しで仕上げると、まるで新品のような輝きを取り戻します。仕上げを行った後は、木の表面がどのように彫られていたかを見ることができなくなるため、仕上げ前の貴重な“素”の状態を顧客に確認してもらうオプションサービスも行っています。

涙を流し仏像に手を合わせる檀家に心洗われ

　会社は1960年、父親が総合商社として創業。70年代に当時ニーズが急増していた仏像の販売に事業を集約しました。成田さんは大学卒業後に入社し、2004年に代表取締役就任。現在は寺院用仏像の製造販売と修復、在家(家庭)用仏像の製造販売と修復を手掛けています。
「特に修復事業は大変喜んでいただき、いい仕事だと感じるとともに、お仏像という存在の重みやありがたみを学ばせてもらっています。ある寺院から修復を引き受けた際は、きれいになったお仏像に涙を流しながら手を合わせる檀家さんの姿を目にし、心が洗われる思いでした」
　ある農家が代々所有する仏像を修復した際は、丁寧な仕事が喜ばれ、帰りがけに一俵分の新米を贈られたこともあるそうです。飾らない笑顔で、自身の性格を「手抜きができない。ばか正直」と表現する成田さん。真面目で誠実な仕事ぶりが顧客との信頼関係を生んできました。
　「代々受け継いできたお仏像は、どんなに古くなっても直して後世に伝えていってほしいです。よく『立派なお仏像やお仏壇がある家は栄える』と言われていますが、これは迷信というよりも、先祖や故人を敬い、大切にする人はそれだけ周りの人のことも大切にできるからだと思うのです」。仏像を通じて子孫繁栄を願った先祖に感謝し、今ある幸せを再認識しながら、さらに次の世代に思いをつなぐ―。成田さんは仏像の意義をこのように考えています。

セミナーやレイアウト提案など、業界にノウハウを還元

　同社は寺院用仏像の販売と、寺院用と同品質の家庭用仏像の製作も手掛けています。「寺院用仏像は高さ約2メートルと大きく、クオリティーも大変良いものを取り扱っているのがうちの強み。それと同じ品質のお仏像を、台座を含め20-30センチほどの家庭用サイズでも製作し、好評をいただいています」。
　修復、販売のほかに、仏像の卸業者や小売業者向けの販売促進支援として、販売促進のノウハウを伝授するセミナーや、店舗レイアウトの提案にも取り組んでいます。「今までこの業界で食べさせてもらってきたので、これからは業界に貢献する番。お仏像メーカーとして今後も品質の良いお仏像をお届けするとともに、これまで培ったノウハウを還元し、業界全体で成長していけたらうれしいです」。
　同社の基本理念は「お仏像は未来への贈りもの」。このキャッチコピーには、「お仏像は先祖が私たち子孫に贈ってくれた未来へのギフトである」との意味が込められています。30年ほど前は、修復の必要性をなかなか理解してもらえないこともあったそうですが、地道に実績を積み重ね、最近では「成田さんが言うなら安心してお任せします」と言ってもらえることが増えた、と言います。「私たちはお仏像を通じて未来へ思いをつなげるお手伝いができます。もし、自宅にお仏像がある方はちょっと目を向けてみて、気になることや興味があれば、ぜひ声を掛けてください」。気さくな笑顔で取材を締めくくりました。

(取材年月：2021年7月)

大切な仏像を未来につなげるお手伝い

専門知識と技術を持った仏師と職人が丁寧に修復

涙を流し仏像に手を合わせる檀家に心洗われ

セミナーやレイアウト提案など、業界にノウハウを還元

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