伝統に新しい風を吹き込む「屋根瓦」のプロ
原田誠
Mybestpro Interview
伝統に新しい風を吹き込む「屋根瓦」のプロ
原田誠
#chapter1
1894(明治27)年創業から120年余の歴史をもつ「原田瓦工業」。その5代目として、社長とともに経営を任されているのが、社長の息子である原田誠さんです。
日本海に面して潮風が吹く酒田市では、古くから屋根瓦が重宝されてきました。
幼いころから工場にある瓦を見続けてきた原田さんは、建築の知識を深めるため大学に進学し、卒業すると同時に社長の後継者として入社しました。
「まずは現場のことを知るために、屋根工事に関わること全般に従事しました。屋根の施工や瓦をはがす作業はかなりの肉体労働でしたが、まずはその大変さを知って、それから徐々に経営の分野を担うようになりました」
それから10年。原田さんは、「瓦」の持つ伝統と歴史を堅固に守りつつ、現代のスタイリッシュな家に合う屋根瓦の提案や、エコロジーの面から廃瓦のリサイクル活用など、新たな瓦の活用法を見いだし、頭角を現し始めています。
「純和風だけでなく、モダンなデザインで一見すると瓦だと気付かないような、おしゃれな外観の瓦もあります。『瓦』を取り入れることが、個性の表現の一つになればと思っています。酒田市は古くから瓦屋根が根付いている地域ですが、もっとたくさんの人に瓦の良さや温かみを知ってもらい、瓦屋根が似合う港町として有名になるのが夢です」
#chapter2
海から吹く潮風、冬の降雪と強風。そんな過酷な環境の中でも崩れない屋根瓦の施工は、古来より受け継がれてきた伝統の技です。
屋根の上で、瓦を一枚一枚つなぎ合わせ、固定させていく過程は、手を掛けただけ丈夫になり、多少の災害でも崩れることがありません。その確かな技術に関する評判は人から人へと伝わり、大手メーカーをはじめ県内外から屋根工事の依頼が絶えません。
「神社やお寺、歴史的建造物はずっと扱っていますが、東日本大震災のとき、当社が施工した宮城県岩沼市のお寺の瓦屋根は崩れなかったんです。県外では、有名ホテルから依頼が来たこともあります。趣のある瓦の屋根が再び評価されてきていると思います」
屋根瓦を施工する社員は、現在12人。そのうち、かわらぶき技能士1級取得者が8人、2級取得者が2人など、個々が技術を磨いています。
「昔は、屋根瓦職人は季節労働者で、雪が降る季節には一度解雇する形がほとんどでした。しかしそれでは生活が大変ですから、社長は皆を完全雇用し、安心して技術向上に打ち込める職場環境をつくったのです。それが熟練の技を若い世代に伝えることにもなり、今の信頼につながっています」
建築業の中でも過酷といわれる「屋根工事」。その現場を担う職人を大切にしているからこそ、「丈夫で長持ち」と信頼される「屋根瓦の匠(たくみ)」の技術が継承されています。
#chapter3
1年ほど前から、新しい取り組みとして始めているのが、廃瓦を活用したリサイクル商品です。
「瓦は、捨てると産業廃棄物になってしまいますが、土だけでできているため、環境に優しく、さまざまなものにリサイクルできます。周囲に協力してくれる人もいて、商品化を実現できました」と、原田さん。
瓦を細かく砕いた瓦チップ「Plant Chamot-プラントシャモット-」は、砂利の代わりに庭に敷くもよし、プランターに利用するもよしの逸材です。水はけが良く長持ちするのが特徴で、何より「軽い」ので女性でもラクに扱えます。ガーデニングやエクステリアに最適な素材として、これから注目が集まりそうです。
また、瓦を粉砕して固めた外構用のブロックも、数種類のタイプがあり、中には積み木のように組み立てられるものも。アイデアを生かした庭づくりを楽しめそうです。
ほかにも、一輪挿しやコースターなど、従来の「瓦」のイメージを払拭(ふっしょく)するような、おしゃれなリサイクル商品があります。
もう一つの事業の柱である「太陽光発電」も、ソーラーパネル販売の正規代理店として登録し、販売から設置までをオールインワンでできる体制を整えました。
「屋根工事」と「瓦」を軸に、斬新な視点から〝温故知新”を実践する原田さん。環境に配慮した屋根づくりを、時代の流れとともに探究しています。
(取材年月:2016年12月)
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Profile
伝統に新しい風を吹き込む「屋根瓦」のプロ
原田誠プロ
職人
株式会社 原田瓦工業
屋根瓦工事は「丈夫で長持ち」との定評あり。神社仏閣の屋根瓦施工はもちろん、おしゃれな家にピッタリの個性豊かな屋根瓦、ガーデニングに最適な廃瓦リサイクル商品まで、身近な空間に新しい瓦の活用をご提案します
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