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伝統技術を用いた新築住宅、古民家・町家再生、中古住宅リノベーションのプロ

古民家・町家再生、中古住宅リノベーションのプロ

肥塚光義

肥塚光義 ひづかみつよし
肥塚光義 ひづかみつよし

#chapter1

熟練の大工仕事を現代のデザインに融合。 長く住み続けられる家を提供。

 魚津市郊外、三方を森に囲まれた谷間にある工房の入り口には様々な種類の材木が立ち並び、その奥からは職人が使う金槌やカンナの音が聞こえてきます。工房の主は肥塚建築の代表、肥塚光義さん。肥塚建築では大工職人の木組みの技術にこだわり、精度の高い建築技術と現代デザインを融合させた住宅の新築や増改築、古民家再生、古民家移築などを行っています。

 肥塚さんは15歳で宮大工の棟梁に弟子入りし、約5年半の修業で建築の基本を体得します。その後、いくつかの工務店で多様な住宅建築を経験した後、30歳で独立。以来、40年にわたって地元魚津に根付いた大工の棟梁として活躍しています。

 近年、住宅建築に使う建材はコンピュータ制御されたプレカットが主流になっています。プレカットは加工が早く、人件費の抑制や建築工程の迅速化が図れます。しかしその一方で規格以上の太さ・長さがとれないため、構造材としての強度が保てない、大空間がつくれない、また、古民家を解体した時に出る再生木材が使えないといった難点もあります。

 「プレカットの普及で、本来地震や雪の重みにしっかりと耐える伝統的な木組技術の代わりに、木組個所を金物で補強する工法が主流になってきました。効率を追求するあまり、素晴らしい技術が廃れてきたことは残念です。耐震・加重強度が高く、リフォームもしやすく、古民家や町家再生にも不可欠なこの技術が継承されなくなることに大変危機感を持っています。だから私は伝統的な木組みの技術にこだわり、継承していきたいと思っています」。

 肥塚さんは木材加工の際、じっくりと木を眺めながらその特性を見極めます。たとえば年輪が詰まっているところは硬く、広いところは軟らかい、産地や山の斜面・方角などによっても木の成長が違うなど、1本1本に個性や表情があります。10年後にどんな反りが出るかまで想定し、重心を出し、組み上げていく技術は熟練の大工にしかないものです。事実、肥塚さんが手掛けた枠の内(わくのうち)の大空間や、格天井(ごうてんじょう)の和室は、目を見張るほど上質かつ精巧なものばかり…。その手仕事は、築数百年の五重塔や寺社建築を支えてきた宮大工の技術なのです。

#chapter2

歳月を経た木が放つ色艶、思い出が刻まれた建材を活かす古民家再生に尽力。

 高度経済成長期の住宅建築は供給量に重点を置くあまり、粗悪な住宅が氾濫しました。しかしそれ以前に建てられた住宅、いわゆる古民家には良質な住宅がたくさん残っています。たとえば山あいにある古い農家など、良いものを使い、手入れをしながら住み続けてきた古民家には、新築にはない色艶があり、「用の美」が輝いています。肥塚建築ではこうした良質な古民家を再生・移築し、次代に合った住環境に整備するリノベーションに取り組んでいます。

 「昔からある柱や梁、扉、欄間などを調整して新しい住空間に再生させるのは、リサイクルやリユースなど循環型社会を目指す今の風潮に見合った住まい方ですよね。また、家族が代々受け継いできたものを再利用するのは、ご先祖様にも感謝して暮らすことになると思います」と肥塚さん。

肥塚光義 ひづかみつよし

#chapter3

街なかにある古い空き家を再生。手直しして住み続ける文化を醸成していきたい。

 近年、中心市街地の空き家が増えています。親と暮らした家を手放して、郊外に新居を建てる若い家族が多く、また使い勝手が悪くなった家を手放してマンションや建売分譲住宅に移り住む高齢の夫婦も多いからです。しかし肥塚さんは、先代から受け継いだ家は、できるだけ再生して住み続けてほしいと思っています。古い家は断熱材を施し、開口部の窓を入れ替えるだけでも快適な住まいに生まれ変わります。あとは自分のライフスタイルに合わせて間取や内装をリフォームすれば、新築よりも安く、数十年先まで住み続けられる家になります。こうした再生リフォームは、工事費や材料費に詳しいスタッフが社内にいるので、資金計画からしっかりサポートすることができるそうです。

 「再生リフォームでは、家族の思い出が染み込んだ古材や建具を大切にしています。古いものを活かすのは苦労もありますが、古い家には今はもう入手困難な良材が使われていることも多く、大工としてやりがいを感じます。これからも天然木に敬意を払い、宮大工の技術と心意気を発揮して仕事をしていきたいと思っています」

 休日は地元の野山を歩いて木を眺めたり、山菜を採ったりして過ごすという肥塚さん。一方で、文化財の補修作業が公開されるという話を聞くと、どんな遠方でも出かけ、自分の眼で先人の技術を確かめるそう…。そんな真摯で温かい人柄も肥塚さんの魅力です。こんな大工さんにお願いすれば、きっと価値ある家をつくってもらえることでしょう。

(取材日 2015年10月)

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肥塚光義

古民家・町家再生、中古住宅リノベーションのプロ

肥塚光義プロ

大工

肥塚建築

木の癖、反りを見極め、1本1本の特性を最大限に活かす「木組みの技」は、宮大工に学び、50年近い経験に裏打ちされた熟練技術。その卓越した技は古民家再生や移築において遺憾なく発揮されています。

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