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緑と育む暮らし 世界で注目されている新しい剪定方法

自然を利用して景観の美しさと生活の質を高める庭師

島田英泰

自然を利用して景観の美しさと生活の質を高める庭師 島田英泰さん
緑生環の島田英泰さん、剪定例

#chapter1

樹木の樹体構造や成長特性を考えた剪定方法で、美しさ、安全性、健全性が向上する樹木へ育てる

 毎年のように庭木を剪定しているのにどんどん大きくなる、樹木の形が歪になった、剪定をしてもらったら枯れてしまったなど、庭木の管理は思うようにいかないことがあります。実はその大きな原因は、盆栽をイメージした管理方法から来ているようです。

「日本では樹木全体を小さくさせる縮小剪定が一般的です。縮小剪定の良さは、落葉の減少、日照阻害の改善、折損・倒木事故が起きた時の被害軽減、などがあります。縮小剪定は日本の伝統技術である盆栽のように頻繁に剪定すれば、よい樹形や健康を保つことができますが、手間や予算を考えると実用的ではありません。現実的には年に1回や数年に1回程度の剪定頻度が多く、剪定の度にバッサリと枝葉を切り落とすことになります。そうすることによって樹木へは、枝の成長速度が促進されること、または逆に強く切り過ぎて衰退させてしまうこと、大きな切口が腐朽し始め全体へ拡がること、などの影響がでます。その結果、枝葉の越境や通路阻害が目立ち、樹木の健康が損なわれて、病虫害の発生、倒木や急な枯損を引き起こすことがあります。剪定してもそれ以上伸びる枝葉を見て、管理費用を負担に感じるようになるかもしれません。このような問題を解決したのが、アメリカで研究された剪定方法『Structural Pruning(ストラクチュアル プルーニング)』です」
 と、話すのは「緑生環」代表の島田英泰さんです。

 島田さんは、昨年アメリカ・フロリダ州で開かれたワークショップに参加するなど、積極的にStructural Pruningを取り入れ、日本ではめずらしい樹体構造と成長特性を意識した剪定が行える庭師です。自分が今まで研究していた剪定方法に似ているところがあることから、関心を持ちStructural Pruningを取り入れたそうです。

「Structural Pruningとは、樹幹(芯)の優勢性を保持して枝葉の成長をコントロールする剪定方法です。この剪定を行うと、木もれ日の入る美しい自然樹形が永く楽しめ、花は良く咲きます。樹体が安定して、台風でも枝折れや倒木はなく安全です。また、樹木が健康になって、病虫害の発生を抑えられ、樹木の寿命は長くなります」

 お客さまからは、「島田さんに剪定してもらうと葉のつやがよくなり庭木が若返ったようです」と喜びの声が多くあがっています。留意点である落葉の多さは、作業的に簡易な清掃を依頼すればよく、個人住宅では雨どいを年に1回掃除すれば問題になりません。日照阻害は、落葉樹を植えれば夏は涼しい木陰で冬は暖かい日差しが入ります。

#chapter2

アパートやマンションの緑地の質や量を高めると資産価値が向上する

 近隣への影響から、ただ小さくしてしまうことが当たり前になっている剪定。その慣習にメスをいれ、樹体構造や成長特性に注目した剪定は、マンションやアパートなどの緑地に最適だと島田さんは話しています。

「マンションなどの集合住宅では、空間が広いため、さらに樹体構造や成長特性を意識した剪定が効果を表します。集合住宅で懸念されるのが安全対策ですが、私が行っている方法では枝や幹が折れにくく、根の張りは良いため、丈夫で安全になります」

 美しくて豊かな緑のあるマンションは資産価値が向上しています。異常気象の多い現代、コンクリートジャングルと化した都市部で、豊富な緑は人を惹きつけるようです。

「豊富な緑は管理費用が負担になります。成長特性を意識した方法は、枝の成長速度が縮小剪定に比べて遅く、剪定の量や回数が減るので、将来的に管理費用が抑えられます。狭小面積の個人住宅では、樹種によってStructural Pruningか縮小剪定かを選ぶ方がよいと思います。よくある庭木は育てやすさを重視するため、成長が早く、大きくなり過ぎる樹種が多いからです」

自然を利用して景観の美しさと生活の質を高める庭師 島田英泰さん

#chapter3

剪定の他に、植栽や提携するガーデンデザイン事務所とともに庭園設計も

 島田さんは、剪定だけでなく庭園設計や植栽も行っています。

「大きくなり過ぎて困るような樹木は、伐採して程よい大きさへ成長する樹種へ植え替える事をお勧めしています。そもそも、樹木には潜在的な大きさというものがあり、そこまで大きくなろうとするので剪定が必要になるわけです」

 島田さんは樹木本来の大きさを考えて、お客さまのご要望に沿った植栽デザインを行っています。育てるのが難しい雑木には土壌改良をしています。

「将来的には、Structural Pruningを広めて、新築マンションや公園、公共施設の緑地も携わり、ヒートアイランドの緩和に貢献したいと考えています。今は個人住宅や既存マンションでStructural Pruningの良さを実感していただけたらと思います」

 人も樹木も喜ぶ、緑生環の剪定と植栽の技術。今後、島田さんの技術が広がり、東京近郊の緑の景色が変わっていくかもしれません。

(取材年月:2019年6月)

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専門家プロフィール

島田英泰

自然を利用して景観の美しさと生活の質を高める庭師

島田英泰プロ

造園業

緑生環

アメリカ発祥の剪定方法と自身の研究成果から、植物が持っている心理的安らぎを与える効果や猛暑を緩和する効果などの生態系サービスを高めて、植物が私たちの生活の質を高める存在になることを目指しています。

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