サイバーセキュリティを研究開発するプログラマー
岡田晃市郎
Mybestpro Interview
サイバーセキュリティを研究開発するプログラマー
岡田晃市郎
#chapter1
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、自社のIT資産や顧客情報を守るための施策は、より一層重要性を増しています。
「日本企業の備えは海外製品に大きく依存しており、脅威に対するデータは国外の事業者に渡っているのが現状です。当方では、コンピューターへの不正アクセスやウイルス感染のサンプルを国内で蓄積・分析することで、自国で対処能力を高めることを目指しています」
そう話すのは、「RainForest(レインフォレスト)」代表取締役の岡田晃市郎さん。30年以上プログラマーとして活躍し、サイバーセキュリティ専門企業にも勤務しました。
国主導のプロジェクトに参画するほか、国内の銀行でトップシェアを誇る不正送金対策ソフトや、約6000社で導入実績があるWEBサイト改ざん検知システムの開発を指揮した経験を持ちます。
課題解決に向けてITソリューションを提供してきた知見をもとに、2018年に創業。総務省が所管する国立研究開発法人・情報通信研究機構(NICT)や横浜国立大学との産官学共同で、日本のサイバーセキュリティ戦略をリードしています。
岡田さんが中心となって開発し2022年にリリースしたのが、クレジットカードなどの情報を盗むオンラインスキミングを防御するソフトウエア「GOOSEC(グーセック)」と、IPアドレスのリスクを検証するIPレピュテーションサービス「kr:ns(クロノス)」です。
「いずれも、インターネット技術の展示会『Interop Tokyo』に出品しました。約70社の方にご来場いただき、多くの反響がありました」
#chapter2
「GOOSEC」は、ユーザーが入力した個人情報を外部に転送する通信を遮断し、流出を阻止します。
「WEB上でのキャッシュレス決済が普及する中でスキミングが増加し、手口もダイナミックになっています。被害を防止するためにも、ネットのショッピングモールやECサイトなどでぜひ採用していただきたいですね」と岡田さん。
「kr:ns」は、インターネット上にわなを仕掛け、利用者のIPアドレスが悪性と疑われるものかどうかをチェックし、判定を通知するもの。企業のIPアドレスがマルウェアに感染し、不正利用されることを防ぐ目的があります。
既に大手電機メーカーが取り入れていますが、今後は中小企業向けにも展開していきたいと言います。
「これまで海外製の高価な製品しかなく、資金面の負担から中小企業では二の足を踏んでいるケースも多いんです。当方の『kr:ns』は、導入しやすいようにIPアドレスの数に応じた料金プランを用意しています」
価格面だけでなく「お客さまの意見を取り込んで、機能をカスタマイズしていきたい」と意気込みます。
「展示会でも、『国産だと要望に応じてもらいやすい』という声を耳にしました。私どもが手掛けているのは、パッシブセンサーという、わなで待ち受けてネット上を観測するメカニズムですが、アクティブセンサー、つまり攻撃に対する監視も必要です。日本にはこうした製品がないので、アメリカの企業と連携して、さらに検知力を高められるよう企画を進めています」
#chapter3
昨今、企業や公共機関のサーバーやシステムがアタックされるケースは後を絶ちません。ネットワークを通じて、製造から流通、販売と、商品などを消費者に届けるサプライチェーン全体にダメージを与え、経済活動に大きな影響を及ぼすこともあります。
岡田さんは、「サイバー攻撃を受けると、システムの復旧に労力がかかるだけでなく、企業のイメージや信頼も低下します。セキュリティ対策を『コスト』ではなく『投資』と捉え、前向きに取り組んでいただきたい」と力を込めます。
また、自社の「GOOSEC」や「kr:ns」などを通じてさまざまなインシデント(事案)を収集し、国産のセキュリティサービスを供給していきたいと考えています。
「今はまだネームバリューがある海外製品が選ばれがちですが、自給率を上げていきたいと思っています。国内できちんとデータを検証し、ノウハウを蓄えていくことで日本の技術が育つ土壌を作っていく。これが目下の目標です」
数多くの実績を持ちながら「まだまだこれから。スタート地点に立ったところ」と岡田さん。製品についても、「市場に出したら完成ではなく、ニーズに合わせてアップデートしていくことが大切。期待に応えていくことに喜びがある」と、プログラマーとしてのやりがいを語ります。
「日本の強みはものづくりです。その原点を見つめ、私自身も一人の技術者として知恵を生かし、人材育成も含めて産業の発展に貢献していきたいですね」と気概を見せます。
(取材年月:2023年8月)
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Profile
サイバーセキュリティを研究開発するプログラマー
岡田晃市郎プロ
プログラマー
RainForest
国のサイバーセキュリティ関連の研究プロジェクトにも参画。セキュリティソフトウエアを開発し、これまで海外企業に流出していたサイバーセキュリティ情報を国内で蓄積・分析・提供していくための事業を展開。
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