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肝心なのは「楽しめる空間」かどうか 相続対策も含めた資金計画も行う建築家

「シンプルにつくりこむ」が信条の一級建築士

中尾英己

中尾英己 なかおひでみ
中尾英己 なかおひでみ

#chapter1

相続対策も含めて資金計画等コンサルティング業務も行う建築家

 「中尾英己建築設計事務所の強みはなんですか?」との問いに、「相続対策や建物の資金計画までしっかりとケアすることです」と答える、「中尾英己建築設計事務所」代表の中尾英己さん。

 同事務所のホームページをのぞくと、飛び込んでくるのはモダンな建物の数々。無駄をそぎ落としたシンプルなデザインに高級感が漂いますが、中尾さんの信条は「理想も予算もひっくるめて面倒をみること」。設計だけにとどまらず、建築費や手数料・雑費がいくらぐらいか、また完成後にかかる税金がいくらかまでも施主に提示して、トータルで建物づくりに取り組みます。

 「収支計画まで手がける建築事務所は決して多くありません。お客さまを第一優先に考えれば、しかるべきことだと思います。つくり手と施主の間に別の業者が入れば、余計な思惑が生まれる。それはフェアではありません」

 設計料以外も計算し、顧客と数字のやりとりをする姿勢は事務所の開設当初から。「『こんな建物をつくりたい』というお客さまの思いと私たちの持つ引き出しとを展開して、二人三脚で進めていくのが私たちのやり方です」と中尾さん。

 建てるエリアや立地条件など環境が違うにも関わらず、画一的な提案をすることに違和感を覚えるという中尾さん。「合理的ではありますが、敷地などの条件により建物の形も変わるし、素材も変わる。住宅なら5人家族なのか、ご夫婦だけなのかでも違う。パターンは千差万別。建物をつくるというのは、特殊なことなんです」

#chapter2

常識を取り払って 目指すは「シンプルで楽しめる空間」

 設計で大切にしているのは、そこが楽しめる空間かどうか。廊下は通り過ぎる場所、部屋はしっかり区切るもの。そんな様式と常識を取り払い、自由な発想で顧客にとっての最善を選んでいきます。

 過去につくった東京・世田谷区の家は、2階のリビングへ続く中央の廊下をあえて大きくとりました。通路としての用途だけでなく、マルチルームとしての活用を提案したのです。「廊下」に座って本を読んだり花を生けたり、ときには趣味の作業に没頭したり。誰もが通る空間だから、ふれあいの場に。中尾さんのそんな願いが込められています。

 東京・上目黒の家にも、既成概念にとらわれない中尾さんの発想がきらりと光ります。27坪ほどの敷地で、暮らすのは家族5人。子ども部屋を3つ、リビング、客間も欲しいという盛りだくさんの要望で「難易度はとても高かった」とのこと。そこで考えたのは「仕切り」の常識を取り払うことでした。

 子ども部屋の壁を可動式にしたのです。子どもたちの成長にあわせて可動する折れ戸を子どもたちが独立したあとは折り、大部屋に戻すアイデアに、施主もひざを打ったといいます。

 「ここはリビング、ここは子ども部屋など、既成概念で家のつくりを決めてしまいがち。でも生活ってそうじゃない。段階に合わせて必要な空間は変わっていくし、人生を楽しむ場所をあらかじめ決めてしまうのはもったいないと思います」

中尾英己 なかおひでみ

#chapter3

住宅も施設も「建物は一つの大きな建築技術という枠組みですべてつながっています」

 施主との付き合いは、引き渡し後も続くことが少なくないそうです。今回の取材の数日前には、15年前に引き渡しをした施主から連絡がありましたと中尾さん。また、建築士らが住宅リフォームを手がけるテレビ番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」(朝日放送)に匠(たくみ)として出演したときは、番組を見たかつての顧客からたくさんの連絡があったといいます。

 「メールで『あれって、うちのあの部分に似ているね』とか。いまでもこうして連絡しあえるのがうれしいですね」と中尾さんは笑顔を見せます。

 これまで住宅から店舗、教育施設、オフィスビル、クリニックまで約150件、生活を営む場や学びやなどをつくってきました。次は終末医療施設の設計を手がけたいと話します。“ゆりかごから墓場まで”の精神でさまざまな建築を手がけるのは「建築設計はすべてがつながっているから」。保育園や飲食店の建築にあえて住宅用の建材を使う発想は、多種多様な建物に関わってきたからこそ出てきました。

 「保育園を『ただの施設』だと考えると、利益優先の話になる。でも子どもたちにとって長い時間生活する場所じゃないですか。そこで家で楽しく過ごすための設計の経験が生きてくる。一方、自宅のリビングで親しい友人と語り合うような居酒屋があってもいい。建築はすべてつながっているんです」

 手がけた建築物が街を変えるきっかけになれば。中尾さんはそうも話します。「暗く見通しの悪い場所を明るく照らすトリガーのような存在になればうれしい。明るく住みやすい街づくりを意識するのも建築家の大切な役割ではないかと」。変化する社会情勢にも考慮した建物づくりを今後とも力を入れていきたいと熱弁しました。

(取材年月:2021年3月)

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専門家プロフィール

中尾英己

「シンプルにつくりこむ」が信条の一級建築士

中尾英己プロ

一級建築士

有限会社中尾英己建築設計事務所

シンプルな佇まいの中にいくつもの「楽しめる空間」がある建物、造形美や機能美のみにとどまらない、顧客にとって最善の建築設計を提案。相続税対策を含め、事業収支計画も合わせて行います。

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