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異なる文化や価値観の中で暮らす人々が、自分自身を取り戻すための心のよりどころに

在日華人の心情に寄り添い母国語で呼び掛ける心理カウンセラー

馬真真

馬さんデスク
馬さんPC

#chapter1

中国にルーツを持つ人の苦悩に寄り添い、母国語で語りあえる場を提供

 日本に長期滞在する在留外国人は2023年にはおよそ320万人以上と、コロナ禍以降増加傾向にあります。日本で生まれた在日2世や3世なども含めると、さらに多くの人が文化や言語、社会常識の違いを受け入れながら生活を営んでいます。 

 2022年に設立された「啓慧心理カウンセリング協会」では、在留外国人のうち4分の1を占めている、中国にルーツを持つ人々の苦悩に寄り添い、母国語で語りあえる場を提供しています。

 代表理事で心理カウンセラーの馬真真さん自身もまた、留学を機に来日し、就職、結婚を経て15年以上暮らす在日華人の一人です。

 「女性の社会進出がいまだ課題とされている日本で、より厳しい状況にあるのが海外出身の女性たちでしょう。活躍できる場は限られていますし、就労や結婚、子育てには乗り越えるべき困難がいくつもあります」

 中国人を親に持ち、日本で生まれた「華二代」といわれる世代に多く見られるのが、親子間で異なる価値観。時には自身の親とも考え方などが相違することに困惑し、生き方に迷う若者たちをサポートする一方、親世代の心理的ケアにも力を入れています。

 事務所内は、障子や畳でくつろぎの空間にしつらえ、真真さん同様10年以上の経験を持つ心理カウンセラーや、心理学の知見を持つスタッフが日本語と中国語で対応。面談やグループセッション、ワークショップのほか、動画サイト・YouTubeで情報発信も行います。

 都内の複数の中国語学校と連携、また企業内のメンタルヘルスケアに働きかけるなど、あらゆるコミュニティーへの協力も惜しみません。

#chapter2

異文化の中で子育てに悩み、心のバランスを崩した体験から相談に乗るように

 「1980年頃に導入された『一人っ子政策』下に生まれた世代は、親や祖父母から過剰な愛情を注がれて育ちました。過干渉・過保護な状態で社会に出て、現実に直面することになった若者たちの中には、自立心や逆境に対する忍耐力の乏しさから、返って自己肯定感が低い傾向にある人も少なくありません。かくいう私もそうでした」

 不安を感じながらも日本の大学院で教育心理学を修めた真真さん。都内の幼稚園で、発達特性がある子どもたちをフォローする職務に就いた後、結婚。20代半ばで1男1女をもうけますが、夫は仕事の帰りも遅く、ワンオペ育児に。子育てと人付き合いに悩み、ついに心のバランスを崩してしまいます。

 「気持ちに余裕が持てなくなったとき、手を差し伸べてくれたのが夫の母でした。率先して地域活動に参加するなどご近所の人からも頼りにされる存在で、家事や育児に力を貸してくれ、外に目を向けるよう背中を押してもらいました」

 少しずつ前向きになった真真さんは、アメリカの養育法の一つ「positive discipline(ポジティブデシプリン)」に興味をひかれ、学びを深めつつ自身の子育てでも実践。異文化の中で家庭教育に悩むママ友たちにも声をかけ、育児サークルを立ち上げるまでに自信を回復しました。
 
 「これまで蓄えた知見も踏まえ人々とつながりを持つことで、私自身もステップアップ。求めに応じて個別の相談に応えるうち、気づけば本来の自分を取り戻していたのです」

室内

#chapter3

「今日より明日、成長できる自分であるために」一歩踏み出すお手伝いを

 真真さんのもとでは、物事の見方や受け止め方にアプローチする認知行為療法をメインとした心理カウンセリング以外にも、講演や研修会などを展開。
 その一つとして以前から続けているのが読書会です。心理学や生き方をテーマにした書籍を取り上げ、それぞれの考えやその時感じたことを、母国語で分かち合う機会を設けています。
 「気づきを共有し、共感することで、頭の中を整理したりかっ達に発言したりと、思考の活性化や心理的デトックスを促す効果が期待できるでしょう」

 また、これまで教育の場や個人を対象に実践してきた取り組みを、ビジネスシーンにも活用。経営者やチームリーダーを含めたビジネスパーソンのメンタルケアに生かし、多様な価値観を持つ人で構成された組織内で生じる摩擦を和らげ、企業活動の円滑化をサポートしています。
 
 「人が生きていく上で大切なのは、自分とは何かを知ること。家族や社会の中で自分が自分らしくあるために、何が必要かを考え行動することで見えてくるのではないでしょうか」と真真さん。
 特別な事情を抱えた人々だけでなく、どの世代、どの地域に暮らす人にも等しく、自らに向き合う意義を伝えます。

 「文化的背景や教育観、言語の違いはあっても、親が子どもに対し、自身の存在価値を探し求め、アイデンティティーを確立して軸を持ってほしいと願う思いは変わりません。今日より明日、成長できる自分であるために、勇気をもって一緒に歩き出しませんか」

(取材年月:2023年1月)

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専門家プロフィール

馬真真

在日華人の心情に寄り添い母国語で呼び掛ける心理カウンセラー

馬真真プロ

心理カウンセラー

一般社団法人啓慧心理カウンセリング協会

心理学や家庭教育の知見と結婚による子育て経験を活用し、異文化や親子間での価値観の違いなどに戸惑い、生き方の確立に悩む在日華人や日本生まれの2世3世の人々を母国語によってケア、語りあえる場を提供。

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