人の心に響き、感動を与える「声」の指導者
堀野温代
Mybestpro Interview
人の心に響き、感動を与える「声」の指導者
堀野温代
#chapter1
風・声のデザインルームに取材に伺うと、代表の堀野温代さんと、声楽のコンクールを控え、課題のオペラ曲のレッスンに打ち込む生徒さんの姿がありました。
堀野さんはピアノを奏で、生徒さんの歌声を聴き、イタリア語の歌詞を流ちょうに読みながら場面情景や登場人物の心理を説明、自ら歌い聴かせます。そこにあるのは、音楽を愛する者同士で語り合い、歌い合い、一音一音に命を吹き込む濃密な時間です。
「堀野先生の声の豊かさには、いつも驚かされます。聴いていると、まるで魔法がかかっているかのような不思議な感覚になることがあるんです」とは生徒さんの言葉です。
日本人がオペラを歌う際には言語の壁があります。歌詞の発音と意味を覚えても、微妙な心の動きを音に乗せて歌うのは困難なこと。「音楽は心理学です」と語る堀野さんは、声、呼吸と歌詞の情感、音型をマッチさせるための指導を追求。自分の歌に伸び悩みを感じている志を持った方々に「気づき」を与える教えで、厚い信頼を得ています。
「音楽は、一生向上を目指すもので『結果』などありません」と語る堀野さんですが、生徒からは、音大合格者、コンクール入賞者、オペラ団体の入団者などを多数輩出。指導法の確かさが、実績となって表れています。
#chapter2
堀野さんもまた、日本人がオペラを歌う壁を常に意識してきました。国立音大卒業後、舞台に立ちながら講師として活動していた1980年、イタリア・ミラノへ留学し3年を過ごしたことにも、思いが表れています。
「イタリアでは、尊敬する先生に指導を仰ぎ、舞台に数々出演しましたが、音楽のみならず、イタリアの文化にどっぷりつかり『私たちと何が違うのか』を、すべて見てみたいという気持ちで生活していました」
とくに目を見張ったのが、人々の「身体」の使い方だったといいます。
「舞台に立つ人だけではなく、一般の方の歩き方、何気ない所作一つ一つも発見の連続。当時は、街で立ち姿、歩く姿が美しい人を見かけると、思わず後をつけて観察していました。そして、体の使い方が発声にも深く関わっていると確信を持つようになりました」
帰国後は、日本の前衛舞踏家たちとも交流しながら、身体訓練を歌唱に生かす方法を模索します。その時期、多くのインスピレーションを得たのが、西洋音楽の源流の一つであるギリシャの神話や思想でした。
「哲学や芸術、数学、医学などが共通の真理や美を追求していたギリシャ時代の英知は、すべてが自分の歌に役立つように思え、夢中で吸収しました。とくに、彫刻で表現される人体の美しい『角度』は、発声法に大きく活かされています」
身体表現とともに重視したのが「呼吸」です。
「声楽における呼吸法の指導の多くは『鼻から吸って口から吐く』といった表面的な方法論。そして、ひたすら『大きな声』を出させる。一方、私が重視するのは、へその下の『丹田』を使い体全体で呼吸すること。この呼吸法により『大きな声』ではない、豊かに響く、今まで自分が出したことのない声が出る体験ができるはずです」
#chapter3
風・声のデザインルームには、オペラに限らず、ジャズやポップスを歌うためのボイストレーニングを行う方、演歌や童謡、詩吟等の上達を目指す方等、「豊かな声」を求めるさまざまな人が訪れます。正しい身体の使い方と呼吸により生まれる声は、ジャンルに関係なく、人と人の心が響きあう感動を生む、それが堀野さんの考えです。
そして現在、堀野さんは、声が生み出す感動を広めていく上で、活動の場は舞台や自身の教室だけではないと考えています。
「呼吸法や適切な身体の使い方を身に着け、心を込めて歌を歌い、人に聴いてもらうことは、老若男女が心豊かに生きるための、生涯の学びになるはず。カルチャーセンターなどでも、私が今まで培ったことを教える講座を持ってみたいと思っています」
また、今堀野さんが強い関心を持つのが、幼児教育の分野。
「歌は幼稚園や保育園の教育で重要な要素です。にもかかわらず、保育科では十分な音楽教育が行われていません。相手が幼児であっても、先生が子どものような声で歌うことには疑問です。しっかりした歌唱と演奏を聴かせることは、子どもの心身の健やかな成長のために大切なこと。保育士を志す方への音楽教育等に、何らかの形で携わりたいと思っています」
音楽について、また人間の「声」について、その根源に遡るように思考してきた堀野さん。「歌えば歌うほど、考えれば考えるほど、音楽には終わりはないと感じます。だからこそ楽しいんです」と目を輝かせます。
(取材年月:2019年5月)
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Profile
人の心に響き、感動を与える「声」の指導者
堀野温代プロ
「声」の指導者
風・声のデザインルーム
イタリア留学と長年の研鑽、多数の舞台経験から、身体の使い方、呼吸法などを総合する「堀野式発声法」を確立。音大入試やオペラ団体への入団、声楽コンクール等で高い結果を出す生徒を多数輩出している。
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