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不妊の漢方相談に特化した薬局

不妊で悩む女性の思いに応える漢方薬の薬剤師

鈴木寛彦

中央区銀座にあるむつみ薬局の薬剤師・鈴木寛彦さん
不妊に特化して漢方相談に乗る

#chapter1

気・血・水のめぐりを改善して妊娠しやすい体に

 「むつみ薬局」は、不妊相談専門の漢方薬局。銀座・松屋デパートからほど近いビルの2階にあり、扉をあけると、心地よい薬草の香りが出迎えてくれます。薬剤師の鈴木寛彦さんは、不妊に悩む女性の心情に寄り添いながら漢方薬の相談にあたっています。

 鈴木さんがむつみ薬局を不妊相談に特化したのは、『赤ちゃんが欲しい』(主婦の友社)という雑誌に顧客が妊娠体験談を投稿したことがきっかけでした。まだ妊活という言葉もなかった1994年こと。毎年、多数の懐妊のニュースが届きます。

「特殊なケースでは、卵管閉塞の方が2~3カ月で自然妊娠に至ったことがあります。また、子宮外妊娠で左の卵管を取ってしまった方が、左の卵巣から排卵した卵で妊娠した例もありました。たまたまかもしれませんが、同じような症例が続いたことで、漢方薬の素晴らしさを再認識しました」

 漢方薬では、『気・血・水』という3つの要素を重視し、体内でこれらのめぐりが滞ったり、偏ったりすることで不調があらわれると考えます。「気・血・水のめぐりを良くして、老廃物や悪いものを便や尿、月経、汗、涙などで体外に排出して、体全体の働きを活性化するのが漢方薬です。特殊なケースも、気・血・水を整えることで体が持つ本来の力が引き出された例といえるかもしれません」

 特に不妊の場合は、「古い血が滞った状態の“瘀血”(おけつ)や気の滞りが深く関係している」と言います。「瘀血には、体質によって、体が冷え切って血をめぐらせる力がない『陰性』、ドロドロした血でめぐりが悪くなる『陽性』があります。不妊につながる月経周期の乱れなども瘀血が影響しています。また、漢方では、排卵障害の多嚢胞性卵巣症候群は気が滞っているイメージです。現代はストレスによって気が滞りがち。『病は気から』というように、気は生きる力に関連します。気のめぐりをよくすると血管が開いて血行が良くなり、泣いたり笑ったりと抑えていた感情も表に出るように。感情を出すことも解毒。それによって妊娠しやすくなる傾向があります」

#chapter2

パートナーの男性も一緒に漢方を飲むと結果が出やすい

 不妊に使われる漢方薬には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などがありますが、個々人で処方する漢方薬は異なります。体質や体力など『証』に合わせて処方するのが漢方薬の特徴だからです。「体の状態を総合的に診ることが重要です。また、体調の変化に合わせて薬も変えていきます。例えば、同じ瘀血でも、陰性の人には力をつけ、陽性の人は解毒作用を高めて、血をめぐらせるような処方をします。漢方薬を飲み始めて半年~1年で妊娠する方が多いですが、『証』と漢方薬の相性が合うと妊娠が早いというのが実感です」

 “冷え”があると、漢方薬の効果が現れるまでに時間がかかることから、鈴木さんは冷え対策も指導しています。
「体を中から温めるには食べ物が大切。根菜類や寒い地方で育つものなどを積極的に取りたいですね。生野菜サラダ、ヨーグルト、パン、コーヒーなどは体を冷やすのでNG。また、みそなどの発酵食品で腸の働きを活性化させ、子宮や卵巣の近い腸を温めるのも効果的です。また、運動はなわとび1日5000回を勧めています。跳びはねて内臓を動かすことで、血のめぐりがアップして、体が温まります」
 
 相談に来るのは女性が多いそうですが、「パートナーの男性も一緒に漢方薬を飲むと、良い結果が出やすい」と言います。
「仕事が忙しくストレスフルで、胃腸が悪い男性も多い。胃系が弱くなると生殖機能に関わる腎系も弱くなります。男性も証に合わせて、腎の働きを強める漢方薬を処方しています」

むつみ薬局では安全と品質にこだわった生薬を使用

#chapter3

大学時代から漢方の道へ

 むつみ薬局は、日本の漢方医学の一つ「古方派漢方」を受け継ぎます。「生薬もできるだけ無農薬を使いたい」と、当帰と芍薬は自社で育てています。妊娠を考える女性の心配を少しでも減らしたいという思いからです。「それ以外の生薬も、質と安全には気を使っています」

 鈴木さんは大学の薬学部在学中に、患者との対話を重視して病棟などで薬剤師が調剤、服薬指導、薬物治療のモニタリングを行う“クリニカルファーマシー”に興味を持ったことから、漢方の道へ進みました。
「漢方薬からは、人間も自然の一部であるとか、人生観も教わりますね。西洋医学では難治といわれる病気が治ることもある。不妊で悩んでいたお客様から、『妊娠の陽性反応が出た』という知らせを聞くと、本当にうれしくなります。特に長年頑張ってこられた方ですと、喜びもひとしおです」

 スタッフの控室には、顧客から届いた赤ちゃんの写真入りの年賀状が壁一面に。幸せそうな家族の写真を眺める鈴木さんの目にも、優しさがあふれていました。

(取材年月:2018年4月)

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鈴木寛彦

不妊で悩む女性の思いに応える漢方薬の薬剤師

鈴木寛彦プロ

薬剤師

不妊専門 むつみ薬局

不妊相談に特化。個人個人の体質や体の状態に合わせて、ベストな漢方薬を処方する。卵管閉塞や多嚢胞性卵巣症候群と診断された人が妊娠した例もある。半年から1年で妊娠する人も多い。

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