アフターフォローが成否を分ける

萩原貴

萩原貴

テーマ:ブース運営

BtoBの展示会は、自社の製品やサービスを効果的にアピールし、新たな顧客との接点を獲得できる絶好の機会です。しかし、そこで獲得した見込み客を“本当の顧客”へと育て上げるためには、展示会でのやりとりに続くアフターフォローが欠かせません。展示会の終了後は、社内的にも「無事終了してひと段落」となりがちですが、むしろここからが商談のスタートラインです。今回は、BtoB展示会におけるアフターフォローのポイントと注意すべき点を整理してみます。

1. スピードが命。迅速な連絡で“熱”を冷まさない

展示会で接点を持った相手は、複数の企業やブースを回っていることがほとんどです。展示会後は、他社からもアプローチが殺到している可能性があります。そこで重要なのが「スピード感のあるフォロー」です。

即時お礼メール: 展示会終了後、24時間以内に「ご来場のお礼」「展示会当日の簡単な振り返り」をメールで伝えると好印象です。

電話やSNSも有効: 担当者とSNSで繋がっている場合は、コメントやメッセージで改めてお礼を伝えるのも手段の一つです。

これを実現するには展示会中に受け取ったメールを電子化(データ化)する必要があります。どこでどのように行うかあらかじめ決めておきましょう。展示会によっては主催者のサービスで、読み取ったバーコードを後日データで送ってもらえるシステムがあります。これは有料となる上、データの納品までに会期後数週間かかるので、素早いお礼メールには向かない点に注意が必要です。

2. 相手が求める情報を再提示する

BtoB商材の場合、導入までに検討期間が長くなるケースが多く、また決裁者や導入担当者など複数の関係者が関わることも少なくありません。展示会での簡単な説明だけでは意思決定に至らず、詳細な資料や事例が必要になることが多いです。展示会で紹介した製品(サービス)を掲載したウェブサイトをあらかじめ制作しておくことで会期前から会期後まで活用することもできます。またgoogleアナリティクスなどの分析ツールを使えば顧客の興味関心がどこにあるのかを分析することができるのでおすすめです。

具体的な資料提供: 展示会で話したキーポイントに合わせて、カタログや導入事例、活用ガイドなどを改めて共有する。

動画コンテンツ: 製品説明動画やデモ映像は、関係者内での情報共有にも役立ちます。URLを添えるだけでも、相手が社内でプレゼンしやすくなります。

質問の入口をつくる: 「ご不明点やご興味がありましたらご連絡をお待ちしております」ではなく、具体的な質問例や“次のステップ”を提示すると、相手から動きやすくなります。

3. 見込み度に応じたアプローチを

展示会では、大量のリード(名刺や来場者リスト)を獲得できます。しかし、そのすべてが“今すぐ検討”というわけではありません。見込み客の温度感は「すぐに導入を検討するホット層」から「将来的に検討はしたいがまだ先」というコールド層まで様々です。そこで重要になるのが、見込み度に応じたアプローチ方法の使い分けです。

ホット層: 具体的な案件情報を聞き出し、導入タイムラインや予算、意思決定フローを確認。必要に応じてすぐに商談化。

ウォーム・コールド層: 定期的なメールマガジンや、製品の導入事例、業界トレンド情報などを提供して関心を高める。無理に商談に持ち込もうとするのではなく、相手の検討段階に合わせて距離を縮める。

4. 社内共有と追客体制の整備

展示会のアフターフォローでありがちなのが、「あの担当者は誰が追客しているのか分からない」「担当者が忙しくてうまくフォローできていない」といった社内連携不足による機会損失です。展示会後のフォローにおいては、社内でどのリードを誰がフォローするのか、またその進捗をどう管理するのか、といった体制づくりが欠かせません。

顧客データベースの整備: 名刺情報をCRMシステムに登録し、ステータスや担当者を可視化する。

定期的なフォロー会議: 商談化がスムーズに進んでいるか、相手の関心が低下していないかをチェック。必要に応じてフォロー担当の変更や追加の施策を検討する。

5. 展示会で得たフィードバックを次に活かす

展示会の来場者とやり取りをする中で、自社製品やサービスに対するフィードバックを数多く得たはずです。展示会が終わってからも、その声を活かすことで今後の営業やマーケティングを強化できます。

よくある質問の整理: 展示会中に多く寄せられた質問をFAQ化し、次の営業資料やウェブサイトへ落とし込む。

自社製品の弱点を補強: 相手の課題や要望に対して「まだ対応が難しい」と感じた部分は、社内で改善施策を検討し、次回の展示会や商談で再度アピールするチャンスにする。

成功・失敗事例の振り返り: どのような企業とのやり取りで商談成立に至ったか、またうまくいかなかったかを振り返り、次回以降の戦略に活かす。

まとめ

BtoB展示会は、商談機会を獲得するための貴重な場ですが、「出展して終わり」では成果に直結しません。むしろ、終了後のアフターフォローこそが、新規顧客の開拓や売上拡大の要となるのです。
展示会で得た熱量を持続させるためには、迅速かつ的確なフォローが必要不可欠です。そして、見込み度に応じたアプローチや、社内共有体制の整備により、獲得したリードを最大限に活用しましょう。得られた顧客の声を次の一手に繋げ続けることで、展示会の出展価値を高め、企業としても継続的に成長していく基盤を築くことができます。

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Mybestpro Members

萩原貴
専門家

萩原貴(展示会ブースの企画・デザイン・施工)

株式会社クレイン

BtoB展示会ブースの企画・戦略から施工まで一気通貫対応。現場経験を生かした実践的な提案力と、顧客ファーストな姿勢で成果を追求。近年はコンサルティングにも注力し、展示会選びのアドバイスから伴走する。

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