国内の主な展示会場
SDGsやESGがビジネスの新たな指標となる昨今、BtoB展示会の現場でも“持続可能性”を意識したブース設計や運営が注目を集めています。
本コラムでは、展示会ブースを通じて企業価値を高め、SDGsおよびESG視点での取り組みをどのように具体化できるのかを考えてみたいと思います。
SDGs/ESGを意識したブースが求められる背景
かつての展示会は「インパクト重視」が中心でした。大型の装飾物や派手なノベルティで来場者を惹きつけることが王道だったのです。しかし、世界的に環境問題や社会貢献への意識が高まり、企業としても「持続可能性」という尺度が無視できなくなっています。
さらに、投資家や取引先、顧客は企業がSDGsやESGにどの程度取り組んでいるかを厳しく評価するようになりました。展示会は企業活動を“目に見える形”で発信できる場ですので、こうした流れをブース設計に反映させることは、自社のメッセージ性を高める絶好のチャンスとも言えます。
ブース設計のポイント:環境配慮とメッセージ性
1. リサイクル素材や再利用可能な資材の活用
ブースの土台やパネルなど、従来は使い捨てが当たり前のように扱われていました。そこにリサイクル素材や再利用可能な部材を活用すると、「資源を無駄にしない」という明確なメッセージを発信できます。
・例:使い回しを想定したブース設計、段ボールを用いた什器、リサイクルプラスチックを利用した壁面パネル、ファブリックとレンタルフレームを活用した壁面、レンタルできるユニットブースの採用など。
2. エネルギー消費を抑えた照明・電子機器
LED照明や省エネ機器を積極的に採用し、エネルギー消費を最小化する工夫も重要です。展示会場は大量の電力を使用するため、少しの取り組みでも差別化につながります。
・例:照明を必要最低限に抑える。モニターを小型化する。
3. 廃棄物の削減を意識したブース運営
来場者向けに配布する資料やパンフレットが大量に余り、結局廃棄されるケースは多いもの。また木工ブースでは造作物は大量に廃棄を行います。
・例:ブースでの資料は必要最小限に留め、追加情報はWebダウンロードやオンラインカタログで提供。ブース自体を使い回しできる素材にする。パンフレットは次回も使用できる内容に書き換える(年度や特定のイベント名を記載しない)。
運営面での工夫:社会課題と連動した仕組みづくり
1. 従業員の意識改革と共通理解
SDGs/ESGをブース運営に取り入れるためには、担当者だけでなく、ブースに立つ社員全員の理解が必要です。自社がどういった社会課題を優先的に解決しようと取り組んでいるのかを共有し、ブースでの説明に織り込めるようにすることで、来場者とのコミュニケーションの質が大きく向上します。
2. サステナブルなノベルティやサービス
展示会では来場者にノベルティを配ることが一般的ですが、SDGs視点から「環境に優しい」「地域社会に還元する」アイテムを選ぶことで、好印象を与えることができます。
・例:フェアトレード商品をノベルティとして活用する、ブース内での試飲・試食も地産地消を取り入れるなど。
3. ブースでの取り組みを可視化するストーリーテリング
来場者が「この企業はどんなSDGs目標にコミットしているのか」「どんな成果を目指しているのか」を一目で分かるように可視化すると効果的です。
・例:ブース内に取り組みの進捗が分かるパネルやインフォグラフィックを設置、体験型コンテンツを通じて環境問題への意識を高める演出を取り入れるなど。
企業価値を高めるブース作りの効果
投資家や取引先の評価アップ
SDGs/ESGへの取り組み状況は、企業のリスク管理能力や長期的な成長可能性の指標として注目されます。展示会での具体的な工夫は、投資家やビジネスパートナーからの評価向上にもつながるでしょう。
顧客との信頼関係強化
SDGsやESGに積極的な企業は「誠実」「先進的」「社会に貢献している」といった印象を与えます。自社製品・サービスが環境・社会に与えるインパクトを真剣に考えている姿勢は、顧客との長期的な信頼構築の助けとなります。
社員のモチベーション向上
展示会に出展する際、社内のさまざまな部門が協力し合う場面が生じます。そこで「社会に貢献できるブースを作る」という明確な目標を共有できれば、社員一人ひとりのモチベーションや自社への誇りが高まります。
まとめ
SDGsやESGを考慮したブース設計・運営は、単なるイメージアップにとどまらず、企業がこれから持続的に成長していくための大きな一歩となります。
- ブースの構造自体を環境配慮型にする。
- 運営面でデジタル化やノベルティのサステナブル化を進める。
- 社会課題と企業の取り組みを可視化し、来場者と共有する。
これらの取り組みによって、来場者のみならず取引先・投資家・社員からの支持を得ることができ、企業のブランド価値向上に繋がっていきます。今後のBtoB展示会では、「どれだけインパクトがあるか」だけでなく「どれだけ社会や環境に配慮した提案ができているか」が、企業の信頼を左右する大きな要因になるでしょう。



