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フランス発のオートクチュールの技術で仕立て、「自分らしく輝く装い」を提案

パリで学び老舗メゾンで技術を磨いたオートクチュール職人

三宅矢寿子

三宅矢寿子 みやけやすこ
三宅矢寿子 みやけやすこ

#chapter1

一人一人の体形や個性に合わせ、着心地が良く、洗練美を備えた一着を制作

 「オートクチュールは、王女や女優など特別な人だけのものではありません。『オート(高い)』『クチュール(縫製)』を語源とし、高い縫製技術を持つ職人が、お客さまの体形や個性、雰囲気、生活習慣までくみ取って仕立てる、世界に一つだけの服のこと。誰でもお召しいただけます」

 そう語るのは、「アトリエヤスコ」のデザイナー・三宅矢寿子さん。パリでオートクチュールを学び、一人一人に合わせた衣服を制作し、「自分らしく輝く装い」を提案しています。

 「お客さまの要望を伺ってデザイン画を描き、採寸に基づいてボディ(人体模型)に服の型紙となる布を当てて立体裁断。平面の製図とは異なり、ドレープのひだといった複雑な質感やシルエットを確認していただき、生地や糸、ボタンなども選定します」

 試作品を試着し、仮縫いを繰り返してフィッティング。本縫いでは手縫いと足踏みミシンでひと針ひと針丁寧に縫い進め、体のラインをきれいに見せながらも、着心地のよい一着をかなえます。

 身長などから既製服が合わない人や、事故や病気で体に左右差がある人も、洗練された着こなしで、コンプレックスを感じることがないようバランスなどに配慮。縫い代も2㎝ほど設け、体形が変わってもお直しで長く愛用できます。

 「服を大切にすることは、自分を大切にすること。落ち込んだ時に心を支え、うれしい時には気持ちを高め、経営者や学者のお客さまは、勝負服としてあつらえることもあります。また流行を追うのではなく、世代を超えて受け継がれる普遍性を備え、いつの時代も色あせない美を宿しているのも魅力です」

#chapter2

本場パリのオートクチュール組合洋裁学校で学び、老舗メゾンの職人に

 学生時代に最愛の兄を事故で亡くした三宅さん。深い喪失感の中で過ごし、夜間の職業訓練学校で洋裁を習い始めてから、再び前を向けるように。

 「学ぶなら本場で」と両親に勧められ、パリのオートクチュール組合洋裁学校へ渾身の一着を送ると、2年次への編入が認められて渡仏。有名メゾンの職人が講師を務める恵まれた環境でしたが、授業では苦戦。単位を落とせば退学となるため、寝る間も惜しんで勉学にいそしみ、3年次へ進級しました。

 「成績は振るわなかったものの、高名なマルコー先生に師事したいと手紙で熱意を伝えたところ、先生の隣の席で学べるようになりました。コンクールに出品する際は休日を返上して指導してくださり、完成した帰り道、思わず涙があふれたコンコルド広場の夕焼けは一生忘れません」

 卒業制作では、腕や肩の可動域を出すため、人の体に合わせて立体的に仕上げるラグラン袖の作品を提出し、最高点を獲得。研修先の高級プレタポルテ「レオナール」で学んだ布地設計のテキスタイル、日本の職業訓練学校から培ってきた縫製でも最高点を収め、首席で卒業しました。

 「就職は、マルコー先生のご縁でフランスの老舗ブランド『NINA RICCI』へ。昼夜を問わず働く日々でしたが、お客さまに喜んでもらえる服作りが好きで苦に感じたことはありません。パリで16年間暮らす過程で、洋裁学校の校長がM.O.F.(フランス国家最優秀職人章)の会長になり、秘書兼日本語通訳としても経験を積みました」

三宅矢寿子 みやけやすこ

#chapter3

羽織ったり、巻いたり、おしゃれを楽しめる「ストールベスト」を展開

 「あなたの技術力なら、いつでもパリに戻れる」と背中を押され、母の介護のため帰国した三宅さん。母と父をみとった後、コロナ禍もあり日本で活動を続けています。一時期は渋谷でショップを構えていましたが、現在は仕立てに専念するため、口コミを中心にオーダーを受けています。

 「母におしゃれを楽しんでほしいという思いから、オートクチュールの技術を生かし誕生したのが『ストールベスト』です。ボタンなどはなく、腕を通す穴を二つ開けたシンプルな仕様ですが、立体裁断による美しいドレープが特徴です。上下・前後・裏表を問わず着用でき、羽織もの以外に、ひざ掛けや胸元・腰に巻くパレオとしても使えます」

 生地は通気性に優れ、肌ざわりが良い日本の伝統織物「播州織」を採用。考案した独自の意匠と構造で2016年に特許を取得し、2019年には東京都大田区などが手掛ける「大田のお土産100選」にも入選しました。

 三宅さんは蓄えた知見を還元すべく裁縫教室も開催。テーマを設けず子どもたちが描いたデザイン画を本人が形にしたり、付き添いの母親も希望により参加したり、作品づくりや実技の披露などを通して創作を後押ししています。

 「時代の象徴となるのは、自らの生き方を確立し、自分の人生をしっかり歩んでいる人だと思います。生まれ持った自分だけの魅力を引き出すオートクチュールの価値を正しく伝え、自己表現の一つであるファッションコーディネートについてもアドバイスしていきたいですね」

(取材年月:2026年7月)

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専門家プロフィール

三宅矢寿子

パリで学び老舗メゾンで技術を磨いたオートクチュール職人

三宅矢寿子プロ

モデリスト(立体裁断師)、スティリスト(デザイナー)、クチュリエール(洋裁師)

アトリエヤスコ

パリのオートクチュール組合洋裁学校を首席で卒業し、「NINA RICCI」で10年以上勤務。立体裁断と縫製の技術で、顧客一人一人に寄り添い、その人らしい魅力を引き出す世界に一着だけの服を仕立てます。

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