東方をまもる静かな武神 ― 持国天の教え

東方をまもる静かな武神 ― 持国天の教え

持国天は四天王の一尊として東方を守護し、国土を保ち、人々を育む使命をもつ武神です。サンスクリット名「ドゥリタラーシュトラ」には「国を守り、正しい成長を導く者」という意味が込められています。古来より寺院の門を守り、外から迫る災いだけでなく、私たちの心に生まれる迷いや不安を断ち切る存在として信仰されてきました。
そのお姿は、凛々しい甲冑に身を固め、足元の邪鬼を踏みしめ、手にした剣や鉾で邪を退ける勇ましい形相が特徴です。踏みつけられている邪鬼は、決して他者ではなく、私たち自身の内に潜む煩悩や心の揺らぎの象徴ともいわれます。持国天の姿は、自らの弱さに打ち勝つことの大切さを静かに教えてくれます。
また「持国」とは、単なる力による支配ではなく、秩序を保ち、心豊かな社会を育む“守りの精神”を表しています。怒りを鎮め、心を整え、日々の暮らしを安定へと導く働きは、現代の私たちにも深い安心を与えてくれます。
家庭に持国天像を安置することは、東の方角から差し込む朝日のように、毎日の始まりを整える祈りでもあります。力強さのなかにある静けさ、凛とした守りの存在。それこそが持国天が届けてくれる「心の平穏」です。