盆入り前日に寄せて
彼岸と此岸をつなぐ日 ― お彼岸と彼岸花
春と秋、年に二度訪れる「お彼岸」。春分・秋分の日を中日として、前後3日を合わせた7日間をいいます。太陽が真東から昇り、真西に沈むこの時期は、古来より「此岸(迷いの世界)」と「彼岸(悟りの世界)」が最も近づくと考えられてきました。
お彼岸の頃、田んぼのあぜ道やお墓のまわりを彩るように咲く赤い花――それが「彼岸花」です。真っ赤な花は炎のように鮮やかで、古来より“ご先祖さまを導く灯火”とも、“迷いや煩悩を焼き尽くす火”とも例えられてきました。また、彼岸花の球根には毒があるため、田畑や墓地を守る役割を果たしたとも言われています。人々の暮らしと信仰の中で、彼岸花は特別な存在だったのです。
お彼岸には、お墓を清め、仏壇におはぎや季節の花をお供えし、ご先祖さまに感謝を伝えます。同時に、六波羅蜜(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)の教えを心に留め、自らの心を見つめ直す期間でもあります。
忙しい日々の中で、お彼岸は“こころを立ち止める”大切な時間です。彼岸花の鮮やかな赤を目にしたとき、ご先祖さまへの想いとともに、私たち自身の心も清らかに照らされていくのではないでしょうか。



