仏像のあるくらし 毘沙門天
毘沙門天 ― 福徳と武勇を備えた守護神
仏教の守護神として広く信仰される毘沙門天は、サンスクリット語で「ヴァイシュラヴァナ」と呼ばれる神格に由来します。もともとはインドの財宝の神であり、後に仏教に取り入れられて「四天王」の一尊、多聞天として北方を守護する役割を担うようになりました。
毘沙門天の特徴は、甲冑をまとい、片手に宝塔を捧げ、もう一方の手に武器を持つ勇壮なお姿です。宝塔は無尽の福徳を表し、武器は悪を退け人々を守護する力を象徴します。その表情は忿怒相でありながらも、信じる人々には福をもたらす慈悲の力を秘めています。
日本においては、平安時代以降、武家や庶民に広く信仰され、戦勝祈願・家内安全・商売繁盛の守護神として厚く崇められました。その中でも特に有名なのが、戦国武将・上杉謙信です。謙信は自らを「毘沙門天の化身」と信じ、出陣の際には必ず毘沙門天を祀り、軍旗に「毘」の一字を掲げました。その信仰は家臣や敵将からも「軍神」と称されるほどで、毘沙門天の勇猛さと正義を体現する存在として広く知られることとなりました。
また、毘沙門天は七福神の一尊として「財宝神」としての信仰も厚く、福を授け、悪を除き、家を護る存在として、現代においても人々に寄り添い続けています。
福徳と武勇を兼ね備えた守護神――毘沙門天は、今もなお「強さ」と「やすらぎ」を授ける仏さまといえるでしょう。
木彫の勇壮な甲冑姿で立つ毘沙門天像です。力強さの中に木の温もりがあり、とても凛々しいお姿です。
片手の宝塔は福徳を授け、手にする槍は悪を退ける力の象徴です。
ご家庭の安寧や厄除けのお守りとしておすすめいたします。



