仏像のあるくらし 韋駄天

十二神将 ― 薬師如来を護る十二の守護神
仏教美術の中で力強い存在感を放つのが「十二神将(じゅうにしんしょう)」です。彼らは、病を癒す仏・薬師如来の眷属(けんぞく)として、衆生を守護する勇ましい神々です。
起源と役割
十二神将は『薬師経(薬師瑠璃光如来本願功徳経)』に説かれ、薬師如来が人々の病苦を救うことを誓われた際、その願いを実現するために護衛として従ったとされます。
彼らはそれぞれが七千の眷属を率いる守護神であり、合計八万四千の兵をもって仏法を守護すると伝えられます。
姿の特徴
十二神将は甲冑を身にまとい、武器を手にした武将の姿で表されます。怒りの表情を浮かべることが多く、これは悪を退け、人々を病や災いから守るための「忿怒の相」です。
干支とのつながり
日本では平安時代頃から、十二神将に**十二支(干支)**が結びつけられました。経典には明確な対応はありませんが、後世の信仰によって整理され、人々は自分の生まれ年に当たる神将を「守護神」として拝むようになりました。
干支神将読み方特徴
子宮毘羅大将くびら疫病退散の守護神
丑伐折羅大将ばさら金剛の力で堅固に守る
寅迷企羅大将めきら魔を惑わせ退散させる
卯安底羅大将あんてら慈悲深く命を守る
辰頞儞羅大将あにら怒りの力で悪を砕く
巳珊底羅大将さんてら蛇のように執念深く守護
午因達羅大将いんだら雷神の力を宿す
未波夷羅大将はいら豊穣と平和を護る
申摩虎羅大将まこら敏捷さで悪を制す
酉真達羅大将しんだら強い正義感で守護
戌招杜羅大将しょうとら忠義と防衛の神
亥毘羯羅大将びから無病息災を守護
このように干支と結びついたことで、十二神将は一人ひとりにとってより身近な守護神となり、各地の薬師如来信仰を支える存在となりました。
信仰と美術
特に奈良・新薬師寺の十二神将像(国宝)は、今にも動き出しそうな迫力と生命感を湛え、日本仏教美術の傑作として知られています。怒りの表情や躍動感のあるポーズには、古代の人々が込めた「病や災厄を退けたい」という祈りが生き生きと表れています。
現代における意味
十二神将は、薬師如来を守るだけでなく、私たち一人ひとりの健康・無病息災を護る守護神でもあります。干支との結びつきは、今も「自分の干支の神将に守られている」という安心感を与えてくれるのです。
まとめ
十二神将は、薬師如来の慈悲の力を現実に届けるための武神たちです。その力強い姿には、古代から現代に至るまで続く「病に打ち克ちたい」「健やかに生きたい」という人々の祈りが込められています。
薬師如来とともに、自分の干支の守護神に手を合わせることで、心身の平安を願う伝統は今も息づいています。



